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アーティストとサイエンティストが出会い化学反応を起こす
私の著書『「アート思考」の技術』では、「アート思考」を「自らの興味・関心を起点に、これまでの常識にこだわらない斬新なコンセプトを創出する思考」と定義しています。これは、現代アートのアーティストたちが、作品を制作する際に発揮する思考と共通しています。
東京工業大学の理事の先生がこの本を読んでくださり、「研究者も自らの興味・関心を起点に研究しています。アーティストと研究者とで対談をしてもらったら、自らの興味・関心で新しいことを創る人たちの共通点が浮かび上がるのではないだろうか」というコメントをいただきました。
アーティストの視点からのへの新たなアプローチ
私は、このコメントを基に、対談だけではなく、アーティストが研究者を取材し、アーティストの視点から研究者の魅力を引き出した映像作品の制作を提案しました。理事に賛同していただき、プロジェクトがスタートしました。そして、映像制作を得意とする志村信裕さんに作品制作をお願いしました。
志村さんは1982年東京生まれ、初期には、ボタンやリボンなどの日用品を撮影した映像をプロジェクションする映像インスタレーションを数多く制作していました。2015年以降、現地を取材した映像作品を制作するようになります。留学先のパリで取材を開始した《Nostalgia, Amnesia》(2019)は、フランス・バスク地方の羊飼いと、千葉県成田市の農家を取材して構成した映像作品。登場人物の日常を淡々と描写する中で、現代社会への問いを投げかけています。
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この作品を観て、私は、志村さんに是非研究者の取材をしてほしいと思いました。最近の作品制作についての志村さんの言葉も、この取材がとても合っていることを示しています。
近年は作品づくりそのものが、ある主題に対する社会的な関心の探求へと移行している。研究者の領分に接近しながらも、美術家としての実践は、記憶を照射し、外在化させる試みにほかならない。注視すべきは、近作にも散文的な想像の余地が残されていることだろう。古典作品が時とともに新しさを放つように、この先時間を経ることで、自分が表象してきたイメージの意味合いも変わるのだろうか。過去から紡がれた光源が未来に継承される日を夢想する。
アートとサイエンスの化学反応がもたらす新たな発見
志村さんの取材対象は、数学の研究をしている正井秀俊先生、くらげの研究をしている立花和則先生の二人です。志村さんも、くらげが泳いでいる映像インスタレーション《玻璃の夢》(2021)を制作していたのも何かのご縁。
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志村さん自身、楽しんで取材をしてくださったと思います。取材を終え、多くの気づきがあったと語っていました。
アーティストと研究者が出会い、どんな化学反応が生まれたのでしょうか?
志村さんの映像作品上映および志村さんと正井先生、立花先生との対談は、10月29日(日)、東京工業大学の学園祭(工大祭)時に、大岡山のくらまえホールでの「東工大の研究者展」で行われます。
是非、足をお運びください。
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