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日本語雑話

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#エッセイ

嘘かも本当かもしれない話:Re

嘘かも本当かもしれない話:Re

油断一秒怪我一生ということばがある。
このことばに関して、かつてこんな話が新聞に載っていた。中国の視察団か何かが日本を訪問し、ある工場を訪れたところ、この標語が壁に貼ってあった。これを見た視察団の一行はエラク驚いたのだそうである。
「日本人は恐ろしいほどの働き者である。これだから凄まじい急成長を遂げたのだ」と。

我々にとっては、危険と隣り合わせの工場で怪我をしないために一秒の油断を戒めたこのこと

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老いらくの恋

老いらくの恋

例によって遠回りになるが、つまらないことが気になることがあって、ある時「国語辞典の一番最後に挙げられている語は何だろう」と、ふと思った。

五十音の一番最後はご存知のように「ん」。
「ん」から始まる自立語は存在しないわけで、しりとりをしたとき「ん」がつくと負けになるが、辞書には「ん」で始まる語が載せられている。

■『広辞苑』(第4版)では、「ん」に関する項目は次の7項目。

1.「ん」(文字とし

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「あつい」という漢字

「あつい」という漢字

毎日、暑い日が続き、ウチの猫もお疲れ気味。暑くなると家の中に戻ってるのはご飯のときくらい。
昨日は寝る時に外に出て見ると、カミさんが丹精した花の陰で、小さなレンガを枕に寝ていました。

この間、青いワイシャツを着て授業をしたら、汗がワイシャツに滲み出て、肩から脇から濡れ濡れ状態だったのを、次に行ったクラスの連中が「なんじゃそれ」みたいに笑いやがったので、

おまえたちは、座って寝てればいいかもしれ

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たにんごと?

たにんごと?

みなさんは、「大地震」「神戸牛」を何と読みますか?

僕にとって「大地震・大舞台」は「だいじしん・だいぶたい」だったのですが、「おおじしん・おおぶたい」と聞くことが多くなり、ちょっと違和感なのです。

たぶん、「音読みの漢語と結びつくものは音読みで読む」という小さい頃に教育された?単純な原則に僕の単純な頭が違和感の原因のようで、「日常に溶け込んで日常の言葉として和語化したものは「おお」と読むことの

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女子という言葉

女子という言葉

最近テレビなどで結構いい大人が「女子」という言葉を使っているのを耳にすることが多く、気になる。

僕のイメージの中の「女子」は、例えば学校で使われる言葉で、対象としても、その年代の女の子を指すという漠然とした感じ。

ただ、例えば『日本国語大辞典』を引いてみると、
①おんなのこ。むすめ。にょし。
②おんな。婦人。婦女。女性。
とあって、確かに「女の子」だけの意味ではないことが分かる。

そう思って

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受験の忌み言葉

受験の忌み言葉

忌み言葉っていうのがありまして、結婚式のとき、去るとか、切るとか、戻るって使っちゃいけないんです。 結婚がすぐに破綻するようなイメージがあるからです。披露宴のが終わるのを「お開き」って言うのも同じです。

他にも、スルメを「アタリメ」と言ったり、梨の実を「ありの実」と言ったりします。大学のとき、試合前の合宿で某先輩は、合宿中は「爪を切らないんだ」と言っていました。「詰めが甘くなる」からだそうです。

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高校生に話す50音の話

高校生に話す50音の話

今日はちょっと「音」の話をします。「おっと」(実はダシャレ)いきなり嫌な顔をしましたね。知らなくても問題ない・・?そうですね。でも、無駄も大事なんですよ。

■ガ行鼻濁音

最初に質問しますが、
カ・キ・ク・ケ・コ
ガ・ギ・グ・ゲ・ゴ
の音の違いを説明できますか。
そう、カ・キ・ク・ケ・コ は清音、ガ・ギ・グ・ゲ・ゴ を濁音です。
では、パ・ピ・プ・ぺ・ポ を何と言うか知っていますか。知らないで

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助詞と女子に注意したい

助詞と女子に注意したい

日本語の助詞はたった一字であるのにそれこそ微妙なニュアンスを見事に表すものである。例えば俳句をやる人は17音しかない中で助詞ひとつにも相当に気を使うと言う。

先日、嵐の櫻井君と相葉君が結婚というニュースがあって、えっそれって櫻井君と相葉君、二人が結婚したの?と一瞬思った方がいるかもしれない。

部活の練習中に雨が降り出したため、最後に風邪をひかないよう、頭を良く拭くようにと言ったところ、髪を拭く

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格助詞の僕とブタの物語

格助詞の僕とブタの物語

意味不明と思われると思いますが、遊んでいると思ってください。
古典の格助詞を用法ごとに、僕とブタの物語として現代語に置き換え、創作したものです。

ブタがいる

僕の愛するブタ
ブタの名前は花子
ブタの花子が昼寝している
このブタは僕のだ

大学でブタの生態を学ぶ
大学を出る
卒業しわが道を行く

北海道に出張する
夕方になる
札幌に着いた
思いがけず、花子に会う
恋仲になる
食事に行く
美しさに

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えーと、ニューヨーク

えーと、ニューヨーク

油断一秒怪我一生ということばがある。このことばに関してこんな話が新聞に載っていた。中国の視察団か何かが日本を訪問し、ある工場を訪れたところ、この標語が壁に貼ってあった。これを見た視察団の一行はエラク驚いたのだそうである。「日本人は恐ろしいほどの働き者である。これだから日本はすさまじい急成長を遂げたのだ」と。

我々にとっては、常に危険と隣り合わせの工場で、怪我をしないために一秒の油断を戒めたこのこ

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オノマトペ

オノマトペ

森山良子にサトウキビ畑という歌があって、これはなかなかにいい歌だと思う。フォークで育った僕らには懐かしい調べだし、彼女の透き通った歌声や歌唱力の素晴らしさはまがうべくもない。沖縄戦の悲劇が切なく歌われていることもサトウキビ畑の哀切な響きを魅力あるものにしている。

同時に、何と言っても、あの「ざわわ」という言葉が繰り返し繰り返し歌われて、それが耳に心地よい。「ざわわ」はサトウキビが風に揺れる音だが

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宿世の授業

宿世の授業

[ 日本語雑話 ] 

前世と現世と来世みなさんは、たぶん誰でも「白分が死んだらどうなるか」って考えたことがありますよね。「死んだらなくなっちゃう」と現代文明を生きているみなさんは、これもたぶん誰でも知っているわけですが、でも一方で、「悪いことをすると地獄に堕ちてしまう」なんて思ったりもし、「もし生まれ変わったとしても君を愛する」などという世迷い言を恋人たちはささやくいたりもします。
霊魂や精神は

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