吉川宗一

niwatoriwani4@gmail.com

吉川宗一

niwatoriwani4@gmail.com

記事一覧

少年吸血鬼の優雅な生活

 輸血パックにストローを挿して飲み下す。  美味いモノではない。血液など、飲食物として採られていないのだから当然だ。ヒトはこの量の血を飲んだら腹を壊すので、これ…

吉川宗一
1か月前
1

灰の山

 ごーん。  母が「おりん」を鳴らした。あの土釜みたいなやつ。 「あんたも手くらい合わせなさいよ」 「おあ」箸を置いて、大してでかくもない仏壇に手を合わせる。  そ…

吉川宗一
3か月前
2

20240626

なんの感情なく一日を過ごしてしまった。 よく、歌詞などで、「変わることがこわい」「挑戦を恐れないで」というのを見るけども おれには馴れのほうがおそろしい

吉川宗一
3か月前

The Red Strings of Fate

ヒモくん:円城寺棋生(えんじょうじきせい) 27歳、現在無職。 日課:お皿洗い、お花に水をやること、お菓子作り、心療内科通い 得意なもの:暗記、暗算 苦手なもの:目を…

吉川宗一
6か月前
5

Nobody knows why I can't "live".

 要するに重力というものは無いほうがよい。  例えばコーヒーを運搬する時であるとか。 「すみません。即刻洗浄します」  一秒前にコーヒーまみれだった僕は洗浄機の水…

吉川宗一
6か月前
1

【蛇足】Nobody knows why I can't "Live".

秋田大学文芸部2020年度部誌にて吉川が寄稿した「Nobody knows why I can't "Live". 」の蛇足です。いつもの通り作品外で言うことが特にないので内容は無いです 本編は無料…

吉川宗一
10か月前
2

クリスマスが今年もやってくる

 クリスマスなので、粘土で彼女を作った。  日本の神様は矛で海を捏ねて国を作り、僕は粘土を捏ねて彼女を作った。ユダヤ教におけるゴーレム、ギリシャ神話におけるガラ…

吉川宗一
10か月前
3

20230906

昼過ぎのことである。 薬局のスキンケアコーナーで、妙齢の婦人に声をかけられた。 「わたし85歳なんだけど、いつも娘がこういうの(化粧水)送ってくれるの。でも、あんまり…

吉川宗一
1年前
2

20230723

7月ももう終わる。 前回の日記を見たら、去年の10月とあった。 その間、何をしていたのだろう。 日記を書いていた頃は、なにも出来なくて、なにも覚えていなくて、幽霊にな…

吉川宗一
1年前
2

【蛇足】The Red Strings of Fate

秋田大学文芸部2022年発行「ハイツスーパービッグラブ」204号室担当の吉川宗一です。 読んでくださってありがとうございます。 DL版はこちらから(無料です)👇🏻 発行から…

吉川宗一
1年前
2

20221021

早く起きて損をした気持に成る。三文の価値とはこの感情か。 古本を開くと短い髪が挟まっていた。前の持ち主のものだろうか。茶色で、根元がほんの少し白かった。 床に放り…

吉川宗一
2年前
1

20221004

7:24起床。眠すぎるが、体は軽い。睡眠時間は十分なはずだ。たまたま目覚めがレムとノンレムの切り替えのよくないタイミングだったのだろう。朝トーストと卵とウインナー、…

吉川宗一
2年前

20220728

仮睡から覚めれば外は銀灰色の湿気を上げていた。バスの運転手が「雨が激しくなってまいりましたのでちかくの窓を閉めてください」と言う。自分は腕を後ろにして窓を引いた…

吉川宗一
2年前
1

20220722

自分は本日100円を拾うた。 自席の隣に100円が、誰にも気づかれないようひっそりと存在しており、自分は気が気でなかった。拾うたのは、人の話を聞くにあたって散漫になる…

吉川宗一
2年前

20220617

陽気に外を歩いていたら捻挫した。

吉川宗一
2年前
1

20220603

公共交通機関は目的地まで寝ていても事故を起こさないから良い。自家用車ならそうはいかない。ちゃんと目覚めきってハンドルを握りペダルを踏むべきだ。 雨が降ると聞いて…

吉川宗一
2年前

少年吸血鬼の優雅な生活

 輸血パックにストローを挿して飲み下す。
 美味いモノではない。血液など、飲食物として採られていないのだから当然だ。ヒトはこの量の血を飲んだら腹を壊すので、これからも血液が飲食物となるのは叶わないのだろう。従ってこの先、残念なことに、血液の味が改善されることはない。
 血液の美味さとは、血を保持していたときの身体の健康さと、血が採られてから経過した時間──即ち新鮮さによる。吸血鬼に回ってくる輸血パ

もっとみる

灰の山

 ごーん。
 母が「おりん」を鳴らした。あの土釜みたいなやつ。
「あんたも手くらい合わせなさいよ」
「おあ」箸を置いて、大してでかくもない仏壇に手を合わせる。
 そこには、兄がいる。
 今日は兄の三回忌だ。

 俺が中3の冬に兄は死んだ。大学生活を機に一人暮らしをしていた兄の遺体は、父が確認しに行った。真っ青な顔をして帰ってきた父を見て、母は呆然としていた。俺は受験期だったけど、父の車で兄の家まで

もっとみる

20240626

なんの感情なく一日を過ごしてしまった。

よく、歌詞などで、「変わることがこわい」「挑戦を恐れないで」というのを見るけども
おれには馴れのほうがおそろしい

The Red Strings of Fate

ヒモくん:円城寺棋生(えんじょうじきせい)
27歳、現在無職。
日課:お皿洗い、お花に水をやること、お菓子作り、心療内科通い
得意なもの:暗記、暗算
苦手なもの:目を合わせること

お姉さん:楠井ゆう(くすいゆう)
27歳、薬剤師。
日課:棋生を可愛がること
得意なもの:仕事
苦手なもの:虫

 からからからと音を立ててから、緑の毛氈(もうせん)の河より山が這い出でくる。この山を、壁牌(ピーパイ)

もっとみる

Nobody knows why I can't "live".

 要するに重力というものは無いほうがよい。
 例えばコーヒーを運搬する時であるとか。
「すみません。即刻洗浄します」
 一秒前にコーヒーまみれだった僕は洗浄機の水圧で水浸しになった。
「ありがとう、EOU……できれば、タオルを貰えるかな」
「どうぞ」
「一枚でいいよ」
「怒っていますか? その場合、航行に影響を及ぼす場合があります」
「…………」
「……俺たち友達だろ?」
「それを今きみが言うのは

もっとみる

【蛇足】Nobody knows why I can't "Live".

秋田大学文芸部2020年度部誌にて吉川が寄稿した「Nobody knows why I can't "Live". 」の蛇足です。いつもの通り作品外で言うことが特にないので内容は無いです
本編は無料で読めます↓

・タイトルについて
なにも思いつかなくて適当に付けてしまいましたし文法的に正しいのかすら分かりません。

・余命について
本当なのか政府の嘘なのかは個人の解釈にお任せするので別に読まなく

もっとみる

クリスマスが今年もやってくる

 クリスマスなので、粘土で彼女を作った。  日本の神様は矛で海を捏ねて国を作り、僕は粘土を捏ねて彼女を作った。ユダヤ教におけるゴーレム、ギリシャ神話におけるガラテア、ヒンドゥー教のガネーシャ。古今東西、粘土とか垢とか、全く生命力の欠片もないものから作られた伝承は多い。その一端に僕も加わったと言うだけの話なので、別に物珍しくもないだろう。
 口でも作るか、と顔のあたりをグニグニと触っていたらその窪

もっとみる

20230906

昼過ぎのことである。
薬局のスキンケアコーナーで、妙齢の婦人に声をかけられた。
「わたし85歳なんだけど、いつも娘がこういうの(化粧水)送ってくれるの。でも、あんまりずっと世話させるわけにもいかないじゃない。自分で選びたくて」
実際、85歳と思えぬ、肌にハリがあり、喋り方もはっきりしていて、歯は全部あるんだろうなとか、普段から孤立を避けてこうして喋っているんだろうな、という様子だ。人並みにシミや白

もっとみる

20230723

7月ももう終わる。
前回の日記を見たら、去年の10月とあった。
その間、何をしていたのだろう。
日記を書いていた頃は、なにも出来なくて、なにも覚えていなくて、幽霊になったような透明な日々で、それもそれで悪くはなかったのだが、死ぬに至らぬ要件があったから、せめて人間でいることをつなぎとめられるように書いていた。
今はそのようなことはないから、書いていなかった。
けれど、同じように、何をしていたのか思

もっとみる

【蛇足】The Red Strings of Fate

秋田大学文芸部2022年発行「ハイツスーパービッグラブ」204号室担当の吉川宗一です。
読んでくださってありがとうございます。

DL版はこちらから(無料です)👇🏻

発行から4ヶ月たち、書いた当時の記憶が無くなってきたので改めて読み返しています。書いておいてなんですが、特に自分から言うことはありません

・「The red string of fate」運命の赤い糸
偶「運命の赤い糸ってst

もっとみる

20221021

早く起きて損をした気持に成る。三文の価値とはこの感情か。
古本を開くと短い髪が挟まっていた。前の持ち主のものだろうか。茶色で、根元がほんの少し白かった。
床に放り投げた。もう見つけられない。

20221004

7:24起床。眠すぎるが、体は軽い。睡眠時間は十分なはずだ。たまたま目覚めがレムとノンレムの切り替えのよくないタイミングだったのだろう。朝トーストと卵とウインナー、オレンジ。映画みたいな朝食。
14:35。暑かったり寒かったりする。手が冷えていた。左利きがホワイトボードに大きく字を書くのを忸っと眺めていた。よくも器用に書けるものだ。左利きなら、横線を右から左に書いたほうが書きやすそうだが、どうなの

もっとみる

20220728

仮睡から覚めれば外は銀灰色の湿気を上げていた。バスの運転手が「雨が激しくなってまいりましたのでちかくの窓を閉めてください」と言う。自分は腕を後ろにして窓を引いた。
雨のことは陰鬱で嫌いだったはずなのだが、いつからか好ましくなった。眺むと落ち着くような、そして同時にそれを表現したくなるような、ともかくも自分にとってよいテーマとなった。ただし己が室内なり濡れない保証がある場合のみである。
手には漱石の

もっとみる

20220722

自分は本日100円を拾うた。
自席の隣に100円が、誰にも気づかれないようひっそりと存在しており、自分は気が気でなかった。拾うたのは、人の話を聞くにあたって散漫になるから対象を除去したなどという立派な理由ではない。現に人の話を聞いている間にはその100円に触れなかったし見もしなかった。盗みがばれるからだ。そう、この100円を財布に入れるは窃盗であると理解していた。自分は100円を1円100枚分の価

もっとみる

20220617

陽気に外を歩いていたら捻挫した。

20220603

公共交通機関は目的地まで寝ていても事故を起こさないから良い。自家用車ならそうはいかない。ちゃんと目覚めきってハンドルを握りペダルを踏むべきだ。
雨が降ると聞いていたのに晴れている。
バスの中で爆睡していると、右腕の方に熱気を感じた。
日光の温かさではない。
体温だ。
隣に座っていた人の体がこちらに持たれかかってきていた。隣の人も、寝ているのだ。
右腕が緊張する。このまま、その頭が自分の肩に落ちたら

もっとみる