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#47『舟を編む』(著:三浦しをん)を読んだ感想【本屋大賞受賞作】

三浦しをんさんの『舟を編む』
2012年(第9回)本屋大賞受賞作です。

僕はもともと言葉に触れるのが好きで、本作のあらすじを見たのがきっかけで手に取りました。読み始めてからタイトルの意味を知り、一気に引き込まれました。

このような方にオススメの本です

  • 言葉に触れるのが好き

  • 想いを伝えるのが苦手なほうだ

  • 今取り組んでいる仕事に熱中できない

  • 辞書がどのように作られるのか気になる

あらすじ

出版社の営業部員・馬締光也は、言葉への鋭いセンスを買われ、辞書編集部に引き抜かれた。新しい辞書『大渡海』の完成に向け、彼と編集部の面々の長い長い旅が始まる。定年間近のベテラン編集者。日本語研究に人生を捧げる老学者。辞書作りに情熱を持ち始める同僚たち。そして馬締がついに出会った運命の女性。不器用な人々の思いが胸を打つ本屋大賞受賞作!

「BOOK」データベースより

感想

  • 登場人物たちの関係性が素敵

  • 言葉に触れるのがさらに好きになった

  • 目の前の仕事にしっかり向き合おうと思った


馬締をはじめとした登場人物たちの関係性が素敵だと思いました。

玄武書房の新しい辞書「大渡海」の完成に向けて、辞書編集部と関係者は長い旅に出ます。馬締の辞書にかける情熱、それに応える登場人物。情熱に対して情熱で応える。なんて素敵なんだろうと思い、僕も仕事や日常でそうありたいと思いました。

自分の想いを話し言葉で上手く伝えられない不器用な馬締。器用ではあるが熱中できるものがなく、自らの存在意義について考える西岡。2人の悩みは僕にも重なるものがある気がして、感情移入しながら読んでいました。その後、馬締は舟の舵を取るまでになり、西岡は名より実を取る。そんな2人の成長した姿が印象的です。

そして、ラストに思わず目頭が熱くなりました。


言葉って奥が深い!本作を読んで改めて感じました。

本作では様々な言葉が出てきますが、似たような言葉でも意味は微妙に違ってきます。例えば、「あがる」と「のぼる」は似ていますが、「あがる」は上方へ移動して到達した場所自体に重点が置かれていて、「のぼる」は上方へ移動する過程に重点が置かれています。
言葉は、ほんの少しの違いでも意味が変わってくる繊細なもの。だから、言葉の使い方次第で相手への伝わり方も変わってくる。言葉を大切に使いたいと思うと同時に、言葉に触れるのがさらに好きになりました。

また、辞書が完成するまでには多大な労力を要することが辞書編集部での活動を通じて分かります。辞書によっても個性があるのは今まで考えたことがなかったので新たな発見でした。辞書には、多くの方の想いが込められている。今度書店に行ったら、辞書にも注目したいですね。


辞書の編纂過程の中で様々な困難に直面しますが、その中で一貫しているのは皆が目の前にある仕事に向き合っていること。
読みながら、僕も今取り組んでいる仕事にしっかり向き合っていこうと思いました。特に、西岡の仕事の取り組み方が印象的です。今の自分のポジションでできることは何かを考えて、いつ入るかわからない社員のために引継ぎ事項を作る。自らの名が残るかどうかではなく、「大渡海」の完成の為に取った行動に感銘を受けました。


文庫版の巻末にある「馬締の恋文」
読むとドキドキする、かも?

印象的なフレーズ

「辞書は、言葉の海を渡る舟だ」
「ひとは辞書という舟に乗り、暗い海面に浮かびあがる小さな光を集める。もっともふさわしい言葉で、正確に、思いをだれかに届けるために。もし辞書がなかったら、俺たちは茫漠とした大海原をまえにたたずむほかないだろう」
「海を渡るにふさわしい舟を編む」

『舟を編む』

たくさんの言葉を、可能なかぎり正確に集めることは、歪みの少ない鏡を手に入れることだ。歪みが少なければ少ないほど、そこに心を映して相手に差しだしたとき、気持ちや考えが深くはっきりと伝わる。一緒に鏡を覗きこんで、笑ったり泣いたり怒ったりできる。

『舟を編む』

「私は十代から板前修業の道に入りましたが、馬締と会ってようやく、言葉の重要性に気づきました。馬締が言うには、記憶とは言葉なのだそうです。香りや味や音をきっかけに、古い記憶が呼び起こされることがありますが、それはすなわち、曖昧なまま眠っていたものを言語化するということです」

『舟を編む』

「言葉は、言葉を生み出す心は、権威や権力とはまたく無縁な、自由なものなのです。また、そうであらねばならない。自由な航海をするすべてのひとのために編まれた舟」

『舟を編む』

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