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知っている思うけれど。


 先生、あのね、私にはおとうとがいます。知ってると思うけど、います。学とかいて、まなぶと言います。知ってると思うけど、アホです。知ってると思うけど みんなからは、

「まなボン。」

 とか

「まなぼぅ。」

 と呼ばれています。


 まな坊の同じクラスのやんちゃっちゃは、前に一度、私のことを指さして

「アホの姉ちゃんや」

 と言うてきたことがありました。知っていると思うけれど。 かかとを落としておきました。

ていっヽ( ・∀・)ノ┌┛Σ(ノ `Д´)ノ



 今、私は、とても反省をしています。

何を反省したのかというと、おとうとがアホやからって。お腹が空いてたからって。おとうとに、余計な知恵をつけるのはやめようと思いました。



 先生も知っていると思うけれど、まな坊の筆圧は、握力2です。おじいちゃんは、すいぼくがやと言うてました。お母さんは、すいぼくがの方がもっと のうたんあるわと言うてました。なんや分かりませんけど、言うてました。


 まな坊があまりに字ぃがきたないのと、せめて握力にやる気をだせと言うことで。お母さんは、宿題の漢字ドリルの字がきたないと消しゴムで全部消しにかかります。冗談ではなく、本気です。本気とかいて、まじとも読むそうです。


 そのとばっちりは私にも来ます。でも私には、知恵があります。生きてる間に知恵使え。お母さんの口ぐせです。私よりまな坊の消しゴムの方が、いつもコロコロしてんのは、そういうことです。



この前の火曜日。またまな坊は、お母さんに消しゴムで全部消されていました。

「まな坊の宿題、終わらんかったらご飯の用意できひん」

 と言われました。なぜなら、お母さんが消し散らかしたケシカスが、ご飯を食べるテーブルにいっぱいだからです。私とおじいちゃんは、いっしゅん遠くの方をみました。でも、私は知恵を使いました。



よしみちゃんが、じゅくで インダス文明について習ったというお話を思い出しました。中学でそのうち習うよと言われました。


「まな坊、あのな。インダスって分かる?」

「なんだす?」


 うちのおとうとは、物事の本質はとらえているような気がします。なんでここで船場ことばが交じるのやら。しかも自然にいやみなく。先生。これは私が、かれの姉だからでしょうか。


 それでね。先生。私はまなぶに言いました。インダス文明の時につくられた“インダス文字”はまだ解読されていないんだよと。だからね。先生。この世には、読める字より読めない字の方が多いんだよと教えました。すると学は、何を思ったのか。


世界には 読めない字の方が多いことを良いことに 自分の字ぃは、インダス文明の インダス文字やと言い出しました。

それが読めたら世界の大発見やと。お母さんが僕の字ぃ、読まれへんくて当然ナノダと。




(σ'д`) べっとりするだって、シャンポリオンだって、日夜努力をつみかさねてきたのだから。(べっとりするとは、多分ヴェントリスのことやと思います。シャンポリオンは、シャンポリオンのままです。シャンピニヨンと言わないだけ、まだマシです。たぶん。 話を、まな坊に戻します。) …お母さんも、僕やお姉ちゃんをポトンと産み落とすだけ産み落とさんと、一生懸命育ててくれていることは分かるけれども。愛情いっぱいいっぱいは、分かるけれども。もうそろそろ、スパルタはやめて、ムチは置いて。飴をわれわれに与えるべきナノである。お姉ちゃんも、僕もおなかペコペコや。…おじいちゃんなんか、もうカラカラや。



 私はおじいちゃんは元からやと思いました。

「元からカラカラな人、これ以上カラカラにさしたら干からびてまうで?」

 こういう所だけ、私とまな坊は、気が合うような気がします。 どうしてでしょう。



お母さんがどうなったのかは、こわいので言いません。(近頃は先生が学級通信にみんなの作文をのせるから、あんたはうちのバンキシャかと言われています。これもあとで、けんえつされます。せちがらいです。)


おじいちゃんは、なんかよう分からんけど口ぐせで、

「およよよよ、よよ。」

と言いました。すると、おとうとは

「ピー!大坊!」

 とはんしゃてきに言いました。教えたお父さんは、あとからめちゃくちゃおこられるやろな、これと思いました。

「この渋滞、だれが処理するねんな」

 と、お母さんは言っていましたが、お母さんの力量では私はむりやと思います。もうみんな、お腹がすいていたので今日だけ特別ということでご飯にしようと片付け始めました。するとそのタイミングでお父さんが帰ってきて、私もお母さんも おとうともおじいちゃんも、たぶんみんなが思ったと思います。ええタイミングで帰ってくるなぁと。



 ご飯のあと、(その日は市場のコロッケでした。私とおとうとがすきなやつです。おいひかったです)


私はまなぶに言いました。

生きたあかしを書き記せと。すると何を思ったのかいつもよりまだマシになりました。たんじゅんで よかったです。


おじいちゃんは、言いました。

すいぼくがに のうたんが付いたと。のうたんとは、なんですか?あとで、気が向いたら調べときます。インダス文字がかいめいされる頃、まな坊の字ぃも読めるようになれば良いなと思いました。


おわり。


小林栄 戯曲集~【南都雄二?】より

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