マガジンのカバー画像

感想文

87
運営しているクリエイター

#コラム

『楽園』(ラスト)~悲しくて優しい物語~

前のページへ

 ノアエディション(フリーペーパー社)に雇われている前畑滋子の元に、中年女性・敏子が訪ねてくる。敏子には夫はおらず、40歳を過ぎてから産んだ一人息子・等を事故で失ったばかりだった。敏子は等には超能力があったのではないかと思っており、滋子に捜査を依頼に来たのだ。
 等が生前に描き残した絵には不思議なものがあり、それがサイコメトラー能力のなせるものではないかというのだ。
 滋子はこれを

もっとみる

『楽園』~悲しくて優しい物語~

2007年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 ノアエディション(フリーペーパー社)に雇われている前畑滋子の元に、中年女性・敏子が訪ねてくる。敏子には夫はおらず、40歳を過ぎてから産んだ一人息子・等を事故で失ったばかりだった。敏子は等には超能力があったのではないかと思っており、滋子に捜査を依頼に来たのだ。
 等が生前に描き残した絵には不思議なものがあり、それがサイコメトラー能力のなせるもので

もっとみる

『楽園』4~悲しくて優しい物語~

前のページへ

 ノアエディション(フリーペーパー社)に雇われている前畑滋子の元に、中年女性・敏子が訪ねてくる。敏子には夫はおらず、40歳を過ぎてから産んだ一人息子・等を事故で失ったばかりだった。敏子は等には超能力があったのではないかと思っており、滋子に捜査を依頼に来たのだ。
 等が生前に描き残した絵には不思議なものがあり、それがサイコメトラー能力のなせるものではないかというのだ。
 滋子はこれを

もっとみる

『楽園』6~悲しくて優しい物語~

前のページへ

 ノアエディション(フリーペーパー社)に雇われている前畑滋子の元に、中年女性・敏子が訪ねてくる。敏子には夫はおらず、40歳を過ぎてから産んだ一人息子・等を事故で失ったばかりだった。敏子は等には超能力があったのではないかと思っており、滋子に捜査を依頼に来たのだ。
 等が生前に描き残した絵には不思議なものがあり、それがサイコメトラー能力のなせるものではないかというのだ。
 滋子はこれを

もっとみる

『楽園』7~悲しくて優しい物語~

前のページへ

 ノアエディション(フリーペーパー社)に雇われている前畑滋子の元に、中年女性・敏子が訪ねてくる。敏子には夫はおらず、40歳を過ぎてから産んだ一人息子・等を事故で失ったばかりだった。敏子は等には超能力があったのではないかと思っており、滋子に捜査を依頼に来たのだ。
 等が生前に描き残した絵には不思議なものがあり、それがサイコメトラー能力のなせるものではないかというのだ。
 滋子はこれを

もっとみる

『おそろし 三島屋変調百物語事始』~江戸情緒あふれる一作~

2010年出版(日本)
著作、宮部みゆき
 

 とある事情を抱えるおちかは、実家を離れて親戚の袋物屋・三島屋で奉公人として働いていた。悲しい事件に巻き込まれて心に傷を抱えるおちかは、人と接することを恐れていた。そんな中でたまたま藤吉という叔父の友達の話し相手をする事になる。藤吉にもまた暗い過去があり、曼珠沙華を異常なほど恐れていた――。

※ネタバレあり

『模倣犯』を読んで以来、宮部みゆき

もっとみる

『模倣犯』(映画)~芸術は爆発だ!~(2)

2002年公開(日本)
原作、宮部みゆき 監督・脚本、森田芳光
 

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバック の持ち主・鞠子の祖父、義男。事件を追いかけるライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察……そして犯人たち。
 マスコミにかかってきたキイキイ声

もっとみる
『模倣犯』宮部みゆき(1)

『模倣犯』宮部みゆき(1)

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバックの持ち主・鞠子の祖父、義男。事件のルポを書くライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察、武上・秋津・篠崎……そして犯人たち。
 マスコミにかかってきた

もっとみる
『模倣犯』宮部みゆき(9)~雑感・気になる点~

『模倣犯』宮部みゆき(9)~雑感・気になる点~

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバック の持ち主・鞠子の祖父、義男。事件のルポを書くライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察、武上・秋津・篠崎……そして犯人たち。
 マスコミにかかっ

もっとみる
『模倣犯』宮部みゆき(8)~結末~

『模倣犯』宮部みゆき(8)~結末~

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

→前(由美子の運命)へ

※ネタバレあり

~結末~

 由美子の自殺を知り、滋子を始め、真一も義男も、相手を追いやってしまったという気持ちを持ちます。
 そして、ヒロミとカズを犯人と決めつけたルポを書いていた滋子は、最も深く心に傷を受け、自分を許せなくなります。その感情が、ピースを倒す力につながるのは、せめてもの救いかもしれませ

もっとみる
『模倣犯』宮部みゆき(6)~ヒロミの死後~

『模倣犯』宮部みゆき(6)~ヒロミの死後~

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 →前(ピースとヒロミについて)へ

※ネタバレあり

~ヒロミの死後~

 ピースはヒロミを殺すつもりでさしむけたのではなかったようですね。
 本当に、カズと、ヒロミくんと、世間を舐め切っていただけだったのか……。映画を先に観ているので、ピースはてっきりヒロミを死なすつもりで送り出したと思っていました。なのでちょっと拍子抜けしま

もっとみる
『模倣犯』宮部みゆき(3)~物語の流れ・ピース・ヒロミについて~

『模倣犯』宮部みゆき(3)~物語の流れ・ピース・ヒロミについて~

小説の感想です。

2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバックの持ち主・鞠子の祖父、義男。事件のルポを書くライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察、武上・秋津・篠崎……そして犯人たち。
 マスコミにかか

もっとみる
『模倣犯』(2)~よかった表現について~

『模倣犯』(2)~よかった表現について~

『模倣犯』~よかった表現について~
2001年出版(日本)
著作、宮部みゆき  

 高校生の塚田真一は、犬の散歩の途中、公園で人間の片腕を発見する。そこから明らかになる連続誘拐殺人事件。失踪したと思われていた女性たちは殺されていた――。片腕とは別に発見されたハンドバックの持ち主・鞠子の祖父、義男。事件のルポを書くライター、前畑滋子。犯人を追いかける警察、武上・秋津・篠崎……そして犯人たち。

もっとみる

『トーマの心臓』~天国に至る翼~



(イメージ画)

1974年発表(日本)
著作、萩尾望都

※ネタばれ含む

 ギムナジウムに通う男子生徒たちの物語。春が始まる前の最後の雪の日に、学校のアイドルだったトーマが陸橋から落ちて死亡した。生真面目でクラスの委員長を務めるユーリの元に、トーマからの遺書が届く――。
「ユリスモールへ さいごに
これがぼくの愛
これがぼくの心臓の音
きみにはわかっているはず」
 トーマの死の真相が事故で

もっとみる