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誰が13日の金曜日を不吉にしたのか

「不吉な13日の金曜日」は、西洋文化の迷信だが、西洋以外でも知られている。とても有名な迷信だ。

トリスカイデカフォビア(13恐怖症)、パラスケヴィデカトリアフォビア(13日の金曜日恐怖症)などというものまである。

この迷信は100年前にはじまったものでーーという俗説を見かけることがあるが。とんでもない。この歴史はかなり古い。そして、真相の在り処も深い。


ギリシャやスペイン語圏で不吉なのは、13日の火曜日。イタリアで不吉なのは、17日の金曜日。いずれにせよ「13」か「金曜日」は出てくる。

西洋文化は歴史的に、12という数字を「完全性」と結びつけてきた。クリスマスの12夜・オリンポスの12の神々・イスラエルの12の部族……その他、多くの例がある。(シュメール文化から、そうであったという説もある)

「12で完全体」の概念において、13がどんな扱いを受けるか。なんとなくわかるだろう。14は無傷だが。

13が受ける、ある種不当な扱いは、ユダのそれと似ている。

イエスと12人の使徒とユダ(13人目のように見られがち)が会食をした翌日、イエスは十字架にかけられた。最後の晩餐があったのは(聖の)木曜日で、次の日は金曜日と。

13日の金曜日は

アダムとイヴが禁断の果実を食べた日
カインがアベルを殺した日
ノアの箱舟が出航した日(災害が起こるため)


1907年出版の小説『13日の金曜日』:株式市場を意図的に暴落させる、悪徳ブローカーの物語。迷信を利用して、人々とウォール街を混乱させる。

1980年代のホラー映画『13日の金曜日』:言わずと知れた、ホッケー・マスクをつけた殺人鬼、ジェイソン。

『ダ・ヴィンチ・コード』では、テンプル騎士団がこの迷信のもとであると、表現された。


テンプル騎士団

聖地へ向かう巡礼者の保護を目的として、1120 年頃に設立された、修道院軍事騎士団。中世で、最も裕福かつ影響力のある集団の 1 つだった。寄付金がよく集まったのもあり、西ヨーロッパ全域に、城・教会・銀行のシステムを確立させた。しかし、その富が、彼らを破滅へと導いた。

テンプル騎士団の「終わりの始まり」は、1307/10/13 (金) 。

その日の朝、フランス王の将校が、団の数百人を逮捕。後に処刑。それまでの違法行為への罰とされたが、実際は、国王が彼らの財力を欲しがったからだった。

※この辺りの話は、真相がハッキリせず不確かなところも、多々ある。 


ところが、より掘り下げてみると……

13日と金曜日は、むしろ幸運の印であった。こうも見えるのだ。厳密には、ある文化にとっては、そうなのだ。

北欧神話のフリッグとフレイヤは、どちらも女神で、母性や家庭・愛や豊穣の象徴。金曜日の語源といわれる。

フリッグ/フレイヤ(両説ある)が、夫を想うあまり流した涙は、ゴールドになった。→ 北欧の人々にとって、金曜日は結婚に吉日とされていた。

ローマ神話の視点では、金曜日の語源はヴィーナスだが。

ポイントは、金星・金曜日は、女神のイメージということ。


ローセルのヴィーナスは、妊娠している女性の像で、13本の線が入った角(三日月形)をもっている。

月経周期の表現と考えられている。(28日周期で1年間に13回)


中世に、キリスト教が盛んになると……

複数の神々を信仰することや、女神崇拝は、“異教” のもの的にとらえられ出した。

女神たちは複数いる「神々」であるし、愛や豊穣は性行為を連想させるなど。神聖なイメージは、薄れていった。

金曜日を祝うこと・13という数字も、一緒に、よくないもののように扱われていった。

「北欧やゲルマンの民族がキリスト教に改宗した時、フリッグは山頂に追放され、魔女と呼ばれた」

「憎悪に満ちた女神は、毎週金曜、11人の魔女と悪魔、つまり13人で集まる。来週の不運を企てる」

その頃、このように語られていたという。要は、レッテルはりだ。


どこからともなく生まれた話かもしれないし、意図的に流された噂かもしれない。

以前に、百鬼夜行と夏油傑の話を書いたのだが。これと、多少かぶるところがある。


ただ、バベルの塔然り、ノアの箱舟然り。旧約聖書「創世記」は、シュメール神話の影響を受けている。元をたどると、共通点が見つかる。

キリスト教にも、歴史上、異なる信仰をうまく許容していた時期はあった。他の信仰のエピソードを、取り消してまわったりしなかった時期が。そういうやり方で、数を増やしていた時期が。

言い方は悪いが、こんな感じだったと思われるが。→  まずはハードルを下げて、とりあえず興味をもってもらわないと。


最近では、こういった13の話(つまり、パワフルな女性を黙らせるために、13が利用された側面があったこと)が注目されるようになってきた。

例)テイラー・スウィフトさんは、13を自身のラッキー・ナンバーとしている。ちなみに、彼女の13へのこだわりは、半端じゃない。


おまけ

①「サーティーン・クラブ」

19世紀後半に設立された、いわゆる秘密結社。

13人のゲストが不吉だったら、13人で集まりたい時はどうするんだ・今後ずっと面倒ではないか、と思ったためらしい。

ニッカーボッカー・コテージの13号室で 毎月13日に 13品のディナー・コース。このような会を開いていた。

アメリカの元大統領の内、4人が、この13クラブの会員になったことがあるそう。

この名前の秘密結社は、他に、いくつも作られた。

② ビクトリア朝の迷信

リンク先には、ビクトリア朝時代にあった、13個の迷信が書かれている。

簡潔でイラストつきで、おもしろかった。13日の金曜日の迷信もあった。