![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/111271137/rectangle_large_type_2_cc85132eb73ccf9434ab3c21303ceda1.png?width=1200)
百鬼夜行、なぜ起こる
「かたしはや えかせにくりに ためるさけ〜」
平安時代から室町時代、夜に一人歩きをする人たちが、こんな呪文を唱えていたという。
これは、百鬼夜行を恐れての行動だった。
「百鬼夜行」とは、文字通り、多くの鬼が行進すること。
平安後期の『今昔物語集』に、書かれている。『口遊』や『袋草紙』には、この呪文が載っている。
『口遊』(くちずさみ)は、平安中期にまとめられた子ども用の学習書。
『袋草紙』は、平安後期に公家の歌人が残した歌論書。
「かたしはや えかせにくりに ためるさけ てえひ あしえひ われしこにけり」
「難しはや 行か瀬に庫裏に 貯める酒 手酔い 足酔い 我し来にけり」
こんな感じだと解釈されている。
自分は酒に酔った者である〜という、主張 (?)
。これがどう魔よけになるのか。
百鬼夜行に遭遇してしまった場合にそなえて、自分を酔っぱらいであると強調していた。酔っていて見えていない・覚えていないと、表していたのだ。
鬼たちは、人間に行列を見られるのをひどく嫌うと、信じられていたため。
今昔物語の中のひとつ。
大納言左大臣の、藤原常行(ふじわらのときつら)には、夜ごと、通いつめる女があった。
その道中に、常行は、火を灯しながら歩く大集団を見た。それは、異形の者たちばかりの行列だった。
常行は、朱雀門の東に身をひそめたが、鬼たちに見つかってしまった。ところが。目の前までせまった鬼たちは、なぜか、立ち去った。
常行の服には、「尊勝陀羅尼」(そんしょうだらに)という真言密教の呪文が、ぬいつけられていた。鬼たちは、その呪文を恐れて、近づけなかったのだ。
これは、今で言うところの「困った時にはこの商品!」的な、宣伝の一種だったのだろうか。
なんにせよ。
当時の人たちは信じ込んだ。鬼が出没しやすい日まで定められ、該当日の夜には、誰も出歩かなかったという。
そんなにも人々に恐れられた、鬼たち。意外にも、滑稽な見た目だった。
それが描かれているのが、百鬼夜行絵巻だ。
これが、「百器夜行絵巻」と題されることもあった。
![](https://assets.st-note.com/img/1689850411235-R6qIa51YjU.jpg?width=1200)
京都の真珠庵に所蔵される『百鬼夜行図』
![](https://assets.st-note.com/img/1689843456598-GzldYsJiMH.jpg?width=1200)
河鍋暁斎は自らを「画鬼」と称する人物
鬼と言うか、妖怪と言うか……。
鬼 ⇆ 器の理由はこうだ。
傘・草履・ごとく(コンロの置き台)・はさみ・扇・琴・琵琶といった日用品や楽器が、鬼になる。時を経た古い道具には、霊が宿るとされていた。その境目が、99年だとも。
九九(つくも)神である。
![](https://assets.st-note.com/img/1715992690898-JLuhnKfUPh.jpg?width=1200)
元は人間とともに暮らしていた道具たちが、乱雑にあつかわれたり・捨てられたりすることによって、悲しみや憎しみを覚える。
人間に復讐する策を練るために、集結する。
鬼たちの真の目的は、パレード自体にあらず。
![](https://assets.st-note.com/img/1689850854271-QVigCfcf2T.jpg)
個性的な妖怪たちがたくさん出てくる『うしおととら』の中でも、最も目立たない妖怪だろう。きっとみんなに忘れられている。針の変化(へんげ)。
『鬼滅の刃』の、太鼓と響凱(きょうがい)や琵琶と鳴女(なきめ)。
![](https://assets.st-note.com/img/1689847743593-b55z4f8qEY.jpg)
![](https://assets.st-note.com/img/1689845057763-spWJKoq2k3.jpg)
『呪術廻戦』の夏油傑。
![](https://assets.st-note.com/img/1689845083594-ks0b5Skck9.jpg?width=1200)
「どこにでもあるようなものが、ここにしかないことに気づく」そういう大切さに気づかないとーー。本質的には、こういう話なのだろう。
リコちゃんかわいそう!夏油さんの気持ちわかるよ!これなら全員思うが。使えなくなったハサミに、今までありがとうなどと思いながら捨てる人は、まれだろう。私も違う。
視点の違いや線引きの違いが、世界に、“百鬼夜行” を起こす。