【回答がありました】PORTキャリアによる「女性は化粧をするべき」という指南に強く抗議します。

【2024.2.1】報告動画を作りました。

2024年1月6日、PORTキャリアによる
「化粧は社会人のマナー」
「お化粧をせずに素顔のままで、就活をするのはおすすめできません。」
などの性差別的な指南へ抗議をした件に関して、受け取った回答をこちらで報告していきます。

2024年2月1日現在、
「化粧は社会人のマナー」
「お化粧をせずに素顔のままで、就活をするのはおすすめできません。」
という文言自体は削除されていますが、
「必ずしもNGではないが「化粧はマナー」と考える人もいる」
「化粧とは社会人としての身だしなみの一部としてマナーと考えられています。納得いかない部分もあるかもしれませんが、現在の日本社会ではそう認識されているのは事実です。」

という表記はそのままになっています。
差別をする側の論理を無批判に右から左へ流すべきでないこと、
納得云々の話ではなく差別の話であること
が、なぜ認識できないのでしょうか?

2024年1月22日、ポート株式会社 広報担当より回答がありました。

この度は貴重なご意見を賜り、誠にありがとうございました。
本件につきましては、弊社編集チーム、また、弊社サイトに参画いただいているアドバイザーの方々に報告いたしました。

人権・ジェンダーその他の社会情勢等の観点から適切な配慮をするよう心がけておりますが、
対象のコンテンツについては、ご指摘いただきました事項も踏まえまして点検し、必要な対応を実施いたします。
また、対象記事以外についても常に適切性を点検し、必要に応じて修正を重ねてまいります。

改めまして、この度は貴重なご指摘をいただきまして誠にありがとうございました。
今後も多くの方々に役に立つコンテンツ提供に努めてまいります。

ポート株式会社 広報担当からの返答(2024/01/22)

抗議文および公開質問状で要望および回答を求めた
1.当該記事の即刻の取り下げを求めます。(この抗議文を受け取り次第)
2.再三の改善宣言にもかかわらず、いまだにこのような差別を発信していることに関して説明を求めます。(2024年1月末日までにお返事をください。)
は、いずれも無視されているどころか、別の記事では
「スカートスタイルのスーツでは、足元はローファーやフラットシューズではなくパンプスを履くのが一般的です。」
「ヒールの高さは3〜5cm程度にするとほどよくスタイルが整い、歩きやすさも確保できます。」

という表記もそのままになっています。

2024年1月9日、執筆者の一人である樋口智香子氏より回答がありました。

就活生の化粧に対する、私の見解はたったひとつです。

私は、化粧の効果やそのメリットを強く実感しているので、化粧を推奨します。
身だしなみを整えることの一環として、化粧という手段があるので、それを最大限に活用してほしいと考えています。
しかしながら、化粧をしないことが悪いとか、心遣い(記事でいうところの“おもてなし”)に欠けるとは考えていません。
なぜならば、心遣いの手段は、化粧以外にも多々あるからです。
体質として、化粧ができない人もいるでしょう。
あるいは、化粧への強い抵抗感があり、精神的に悪影響を及ぼすくらいなら、当然、しないほうがいいでしょう。
社会的背景やアドバイスをふまえても、自分で意思決定することがよいと考えています。

記事内のご質問者様は、化粧に対する誤解や、その方法への迷いがあるようでした。
ですので、身だしなみとしての化粧を推奨し、活用する方法をお伝えしました。
しかしながら「最終的には自分で意思決定してほしい」というところまでは、お伝えしきれておりませんでした。
ここには確かに、問題点があったと存じます。

記事の文面につきましては、掲載元様のご意向も伺った上で、調整できればと考えております。
部分的な表現へのご指摘もありますが、
ご理解いただきたいのは、何かを推奨することは、必ずしもそれをしないことの否定にはならないということです。
貴団体も、掲載元様も、私も「就活生を応援したい」という思いは、強く一致しているはずです。
本件で、より良い調和が生まれると良いですね。

抗議文への回答としては、くだけた表現でのお返事になってしまいましたこと、
また、メールという手段になりましたこと、どうぞご容赦ください。
なるべく早く、温度感のある言葉を、お伝えしたかったのです。

貴団体には感謝しております。
情報発信の仕方を見直すための、貴重な機会をいただきました。
また、マナー講師が化粧を推奨することで、
強い精神的苦痛を感じる就活生がいらっしゃるということ、深く感じ入ることができました。
様々な立場の方に向けた、心遣いのある発信を心がけてゆきます。
ありがとうございました。

アカデミー・なないろスタイル 樋口智香子氏からの返答(2024/01/09)

回答、ありがとうございました。
これに対する返事には大変悩みましたが、チーム内で話し合い、現時点でできる限りの説明とともに返事をしました。
すべての人が、ジェンダー・アイデンティティや服装規範などによって就活以前で排除されることなく、本来の仕事探しができるような未来のために、同じ方向を目指して頂けると信じています。

返事、2ページのうち1ページ目。長いです。下記に内容を転記します。樋口智香子様

早々にお返事を頂き、ありがとうございました。

前向きに検討して頂けるとのこと、ありがとうございます。これを機に、色々な声を知って頂ければと思います。
就活マナー指導をする側のすべての人は、指導の中で、差別的・抑圧的な規範にアイデンティティや尊厳を踏みにじられる人や、「どうしても合わせられない」という人に必ず出会ってきているはずです。
また、ハッキリと「嫌だ」と言われなくても、戸惑った様子の就活生や、積極的にそれを受け入れる様子のない就活生に出会ってきているはずです。
指導をする側の人たちが「そういったことを一切知らなかった」「思いもよらなかった」とは考えにくいと私たちは思います。

今回の抗議に関して、SNSでは早速、
「うちも大学で就活のとき『メイクしないのはいいけどメイクをしてないことを好まない面接官もいることを頭の片隅に…』とか、メイクの仕方の動画とかあったり超もやもやして視界がほぼ霧だった」
「大学の就活に向けて的な教科書で唯一理解できなかったところだ……!笑 今日社会的に強い立場の男性方はほぼ皆すっぴんじゃん!社会のマナー守ってないのそっちじゃん!!!」
というコメントが寄せられました。
私たちの署名サイトの「賛同者からのコメント」欄にもいろいろな声が届いています(https://chng.it/FfBJyxZwsW)し、
また、この問題に関連する語句でインターネットやSNSなどを検索すると、抑圧的・差別的マナーに不当に苦しめられている人々の声は、容易に、たくさん見つかります。
こちらのメールに、弊団体が募集した体験談のPDFを添付しますのでぜひ参考にしてください。

ポート株式会社を含め、この問題に関して指摘を受けた人たちは、全体的に、あまり深刻に受け止めてくれていないのかなと感じます。
この問題が原因で鬱病に追い込まれる人がいるのはもちろん(私たちの団体にも経験者がいます)、就活が原因で亡くなる人が大勢いる中で、服装・マナー規範の問題は決して無関係とは言えないと私たちは思っています。
抑圧的・差別的マナーに苦しめられている就活生たちは、あたかも、そういった指南に合わせられない「特殊な例」のように勘違いされがちですが、そうではなく、抑圧的・差別的である指南がなされていることが問題なのです。

残念ながら、社会には根強い性差別、外見差別、人種差別などがあります。
そういった差別がある現実を見て、自分のアイデンティティや尊厳を殺して就職活動に臨む人もいると思います。
その道を選ぶ人のことを否定しませんし、指南をする側がそういった現実を踏まえて就活生にアドバイスをすること自体を否定しません。
ただ、指南をする側の人々には、「本来は、そういったことは差別であり、あってはならないことである」という大前提を踏まえて、
「どういった道を選んでもあなたの側に立ちます」と就活生の側に立って、指南をしてほしいです。
仕事が見つかる・見つからないだけではなく、就活マナー指南側から自身のアイデンティティや尊厳を踏みにじられずに済むという、
それだけで、本来受けなくても良い精神的苦痛の深刻化を止められる可能性があります。

勘違いされたくないのは、私たちは、「化粧を自らの選択で取り入れること」を否定している団体ではないということです。
化粧によってコンプレックスを解消して堂々といられる人、化粧によって自分らしくいられる人、生き生きする人、化粧が好きという人はたくさんいて、
その人たちの選択が阻害されることはあってはならないと考えていますし、
化粧は、ジェンダー・アイデンティティを問わずアクセスできるものであるべきです。
本来、化粧=ビジネスマナーではなく、化粧は、自分を奮い立たせるためのポジティブなものです。
脅迫的または脅しのようなニュアンスで「化粧をしなくてはいけない」と苦しめられる人がいてはいけません。

私たちは、化粧に関する自己決定権に関して、当たり前のことが当たり前になってほしいだけです。
「男性」に課されていないことは「女性」にも規範として課してはいけないし、その逆もそうです。
「女性」と「男性」を入れ替えて読み上げたときに「おかしい」と思うことは、再考してほしいと思います。
それは合理性のない差別や抑圧である可能性が高く、それを無批判に拡散することは、差別に加担することです。

記事における指南は、明らかに、「女性は化粧をしなさい」という指南以外の何物でもないと考えます。
この社会においては、「女性は化粧をすべき」という圧力が働いています。
就活マナーの中でも、嫌という程定番になっている指南です。その環境と合わせて受け止めると、残念ながら、
「ビジネスの場でのお化粧は、自分の外見をアピールするものではなく、相手へのおもてなしなのです。」が、「ビジネスの場で化粧をしていないことは相手へのおもてなしがなっていない」という圧力となっていること、
「お化粧をせずに素顔のままで、就活をするのはおすすめできません。お化粧をすることは、身だしなみを整えることの一環だからです。」が、「化粧をしなさい」「化粧をしていないのは、身だしなみを整えていないことだ」というメッセージとして機能していることは事実です。そしてこれが「女性」とされる人のみに適用されている状態は歪です。
「職種にもよりますが、社会人になれば、お化粧をして出勤します。」も、かなり語弊のある文言です。「社会人=化粧をして出勤するものだ」という方向にかなり比重が置かれているように思えます。また、「社会人」の定義が曖昧ですし、「学校を卒業し、仕事をしている人」を想定
2024/01/10 樋口智香子氏への返事 1ページ目
2ページ目の内2ページ目。1ページ目の三分の一くらいです。転記します。しているのであれば問題のある言葉です。学生ではなく仕事をしていない人も、学生であり仕事をしている人もいますし、人間社会に生きている限りすべての人が社会人だからです。学生のうちは化粧を免除されているという規範があるのであれば、それは女性とされている人への性差別的・搾取的なダブルバインドです。
「メイクアドバイザー」でなく「マナー講師」の肩書きを背負うのであれば、「化粧の効果やそのメリットを強く実感している」「化粧が好き」というだけでは無責任であり、
「マナー講師」が伝える場合、配慮を十分しないと押し付けになってしまう危険性を理解して頂きたいです。

良い例として紹介したいのは、「キャリタス就活」のこちらのページに記載されている「メイクをする方は、ナチュラルメイク。」という文言です。
https://job.career-tasu.jp/guide/howto/manners-02/
樋口様が実感から化粧を推奨したいということを否定しません。その場合、
・大前提としてジェンダーを限定しない(女性にこだわらないこと)
・どういった化粧の方法があるのか例示する(素肌をカバーしたいだけの人や顔のパーツを際立たせたい人など様々)
・「自信に繋がるのなら」「効果を実感できるのなら」(例)勧めると但し書きをする
・メイクの押し付けにならないようにメリットを語る時はデメリットも語る
・化粧の有無が採用の全てではないことを十分に含ませる
など、「女性は化粧をしなさい」といったメッセージにならないようにする方法はたくさんあります。

長々と説明をしてしまい恐縮です。どういった情報をお持ちであるのか、どこまで伝わったのか手探りでしか分からないため、チーム内で話し合いながら、今の時点でできる限りのことを説明させて頂きました。
すべての人が、ジェンダー・アイデンティティや服装規範などによって就活以前で排除されることなく、本来の仕事探しができるような未来のために、同じ方向を目指して頂けると信じています。
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2024/01/10 樋口智香子氏への返事 2ページ目

メールに掲載、添付した資料は以下の通りです。
「キャリタス就活」
https://job.career-tasu.jp/guide/howto/manners-02/

団体が募集した体験談のPDF

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