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【小説】酒娘(サケムスメ)
❇️あらすじ❇️
~この世界は神々が創り
人々は神々の子である~
ここはパラレルワールド神国日本
神々と人々が共存する世界
人々は自然の力を神の恩恵と敬い畏れ
創成主たる神々を信仰し
『奉酒』する事で神々へ感謝の意を顕した。
また神々は自ら創り出した世界を慈しみ愛し
時に還俗し人々の前に現れては
人々へ神の力を分け与える事で
強大な文明を発展させてきた。
時は流れ…
人々の信仰心は徐々
【小説】酒娘 第壱幕#021
第弐拾壱話 セイメイも人の子
天鈿女命はこれまでも神の羽衣の力で空を飛ぶ事が出来た。そして今、水竜を使役する事に成功し、一体化する事で大きな竜の姿となり高速で飛行する事が出来る様になった。
「ウズメよ、この能力は素晴らしいのだ!!ボクも欲しいのだ!!」
水竜となった天鈿女命の背に乗っている月読命が興奮しながら全力で羨ましがっている。
「月読命さんは竜というより兎じゃないかな?月の神様だし。
【小説】酒娘 第壱幕#020
第弐拾話 決着、そして迎合
八百万の神々について。
ここ神国日本では、彼等は大きく2つに分類される。
ひとつは創造神と呼ばれる神々。神国日本を創世したのち天界におわして神国日本と、そこに暮らす人間を見守り慈しみ、調和を乱す者に神罰を下す神々。その頂点に君臨するのが天津神の長であり、月読命の姉、天照大神である。
彼等は総じて位階が高く、現世に実体を持たないが、人間からの信仰の集合体である彼等は信仰
【小説】酒娘 第壱幕#019
第拾仇話 目覚めの時
月読命の脳裏には、壇ノ浦の戦いののち、源義経と共に意気揚々と凱旋した時に待ち構えていた姉、天照大神の鬼の形相が浮かびカタカタと小刻みに震えていた。
都の守護を放り出した月読命が100%悪いのだが、今まではセイメイ達が何とか最悪の事態は防いでくれていたので天照大神の雷は落ちていない。
しかし今回、そのセイメイからのSOSがあった。何かよからぬ事が起きている事は揺ぎの無い事実で
【小説】酒娘 第壱幕#018
第拾捌話 都を護る者
ここは神国日本奉酒連合司令部の隣にある5つ星ホテル。60階建ての最上階ロイヤルスイートルーム。
「美味い、美味いにゃあ…!!さすが一流ホテルにゃ!ボクちゃん満足満足!!」
ルームサービスで出されたご馳走をたらふく食べ終わってすっかりご満悦の月読命は、スマホのバッテリーが切れたのを忘れていた事を思い出し、充電器に繋げた。
「はにゃ?着信にゃ。セイメイからにゃ。」
「セ
【小説】酒娘 第壱幕#017
第拾漆話 髭切りの綱
「ライコウ様!!みなでライコウ様をお助けしろ!!」
ライコウ四天王の1人、ツナがそう命じると数名の男神がハシヒメ目がけて突進していく。そしてツナ自身も自らの身の丈よりも大きな太刀をライコウの手足に絡みついたハシヒメの触手のような髪に振り下ろした。
『ガキンッ!!』
激しい金属音とともに大きな火花が散った。弾き返される大太刀。ツナは一瞬ではあったが後ずさった。
「ちっ
【小説】酒娘 第壱幕#016
第拾陸話 伏見の激突
櫛名田比売は退屈そうに、しかし全くの無表情で両手を動かし何かを操っている仕草を続けていた。
「櫛名田比売はん、妾にお力をお貸しくださりほんにおおきにどすぇ。京を鬼が支配する…セイメイに積年の恨みを晴らす時が来らしますとは思いもしいひんかった事どす…オッホッホッ!」
櫛名田比売の妖力で復活を遂げたハシヒメ。
芸妓の様に白い肌から覗かせる窪んだ眼。鮮血の様に赤い唇から長い舌
【小説】酒娘 第壱幕#015
第拾伍話 晴明と頼光
-晴明殿-
京の都ほぼ中央に位置し、守護者として都の安寧と均衡を保って来たセイメイの居。
今は都各地の神々と宮司、セイメイが使役する式神が集結し、都を脅かす謎の勢力に対する会議が行われていた。
セイメイは焦っていた。
京の都に放っている彼の式神からの応答が次々と途絶えていたからだ。
「セイメイ様、通信も通話も一切ダメです!各所にあるカメラモニターも映りません!」
(い
【小説】酒娘 第壱幕#014
第拾肆話 封印解除
ー古の都 京ー
パラレルワールド神国日本においても
古くから政治・文化の中心であり、近代化が進む現代においても世界遺産に認定された寺社仏閣が街そのものを演出するかのように建ち並ぶ。そのため海外の観光客からも人気のスポットで、有名な寺社は今日も人で溢れかえっていた。
しかし、彼等は知らない。荘厳で崇高な街並みはある陰陽師の力で均衡を保っている事を。
「セイメイ様!大変です!
【小説】酒娘 第壱幕#013
第拾参話 マリーゴールド
「ネズミが3匹紛れ込んだよ。ウチがとっ捕まえて来ようか?」
「あら、どちらのネズミさんかしら?ちょっと見せてくれる?」
ここは神国日本国立神力研究所の所長室。
所長の伊奈は、報告に来た少女が映し出す映像を観察した。
「ふぅん、どうやって潜入したのかしら…おかしいわね、すれ違ううちの職員達、誰も気づいていないみたいね。」
訝しむ伊奈に少女は淡々と答えた。
「気配
【小説】酒娘 第壱幕#012
第拾弐話 任務完了
「ご苦労だったな、五百万石。」
五百万石が目隠しを解かれた時、視界は周囲の明るさに順応出来ずしばらく目を細めていたが、聞き覚えのある声がした。
「山田…山田錦か!?」
徐々にクリアになる視界の先に1人のコメ男子が悠然と脚を組みながら座っていた。
「十四代ちゃんの監視の役目、大儀だった。天叢雲様が大層お喜びだそうだぞ。」
「ど、どういう事だ?オレは監視など請け負ってい
【小説】酒娘 第壱幕#011
第拾壱話 兄と弟
「十四代ちゃんが囚われているとしたら、最も可能性が高い施設はここです。」
愛山の言葉に合わせて司令室のスクリーンに映し出された地図上からとある研究施設がクローズアップされ、外観写真、間取り、勤務者数等の詳細情報が順番に表示された。
そして最後にある女の顔、神国日本奉酒連合の代表でもあり、江戸小町ちゃんの母でもあり、そしてこの国立神力研究所の所長でもある伊奈の顔が拡大された。
【小説】酒娘 第壱幕#010
第拾話 フレネミー
菊水は引退したとは言え、元連合司令官という肩書きがあった。だから彼が連合本部に到着した時は受付から代表室のあるフロアまで丁重に案内された。
「こちらの部屋でしばらくお待ちください。」
と、代表秘書に案内されてからかれこれ1時間以上経つことに次第に苛立ちを隠せずにいた。
「ったく、客人にお茶の1つも出せないのかね…」
何が起きているのか連合の連中も状況把握に必死になって
【小説】酒娘 第壱幕#009
第玖話 輪廻と覚醒と
えぇ、勿論覚えていますわ。
私とても怖い思いをしましたから。
暗闇の中で1人で震えて泣いていましたの。
えぇ、とても心細かったんです。
あまり先の事は考えていませんでしたわ。
今、この瞬間が不安だったとでも言いましょうか…
いいえ、死ぬ事は全く怖いと思った事はありませんわ。
寧ろこの孤独から解放されるのであれば、早く殺して欲しいとさえ思った程です。
目を。目を瞑ってい
【小説】酒娘 第壱幕#008
第捌話 千里眼
伯楽星は大自然の中で、大好きな動物達と一緒に育った。
ー『千里眼』ー
いつからそれが出来たかと聞かれると、彼女は答えに窮してしまう。何故なら物心ついた時から出来ていたから特に気にした事もなかったのだ。だから自分だけしか出来ないと知った時は大変驚いた。と同時に、何処からかこの特殊能力の噂を聞きつけた興味本位の輩が近づいて来るようになったのが怖かった。
元々人付き合いが苦手だった
【小説】酒娘 第壱幕#007
第柒話 トラブルメーカー
ツクヨミは先程からスマホの画面を凝視しながら何やら不気味に呟いている。
「ニュフフッ。なになに?チーズハットクとな?うわぁこれは!!このスイーツも美味しそうだにゃ!」
下界に向かう天馬の馬車の中で、ツクヨミとアメノウズメはスサノオの情報を調べていた訳だが…ツクヨミは完全に浮かれていた。
「ツクヨミ様、お兄様が向かいそうな場所は見つかりましたか?」
「ん?あぁ、ウ