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#介護
小説 ケア・ドリフト①
山に囲まれた特別養護老人ホームやまびこに何台もの車が入ってくる。しかも午前六時三十分に、である。日の出の時間が四時台になるくらいの時期だが、梅雨明け前の空は厚くて黒い雲のせいか、まだ日が出ていないようにも思えた。この時間帯に入ってくる車の主は、そんな天気の影響を受けているからか、一様に眠そうな顔をしている。彼らは早番と言われる職員だ。
「おはようございます」
一人の男が挨拶をしながら、喫煙スペ
山に囲まれた特別養護老人ホームやまびこに何台もの車が入ってくる。しかも午前六時三十分に、である。日の出の時間が四時台になるくらいの時期だが、梅雨明け前の空は厚くて黒い雲のせいか、まだ日が出ていないようにも思えた。この時間帯に入ってくる車の主は、そんな天気の影響を受けているからか、一様に眠そうな顔をしている。彼らは早番と言われる職員だ。
「おはようございます」
一人の男が挨拶をしながら、喫煙スペ