マガジンのカバー画像

24
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩】貯水槽

【詩】貯水槽

(横書き)

死が見えた途端人は優しくなる。
相手の貯水槽にポタポタと、暖かい言葉を流し込むんだ。
(死なんていつでも側にあるというのに)
優しくされたかったからと、
一度死んで生き返ってみたあの子は今絶望しています。
良かったと言ってくれる人よりも、
よくも騙したなと激怒する人の方が多くて。
「無償の優しさなんて宝くじで1億円当たるぐらいだから期待しないほうがいいよ」
そう言いたかったけど、昔、

もっとみる
【詩】彩り

【詩】彩り

自分自身だって世界の一部なはずなのに、大切にするのは自分を除いた世界だぞって説く大人がいる、ぼくはそのことが嫌いだ。 
それは透明人間になれって言っているようなもので、しんだほうがいいよって言っているようなもので。その言葉にどれだけ、多くの人が犠牲になってきたか知っているくせに、忠誠心が高ければ高い人ほど守ってしまうのを知っているくせに。みんながみんなだけを大切にすれば一人残らず幸せになれるなら、

もっとみる
【詩】夢

【詩】夢

夢 という漢字が書けなくなった
出てこなくなったんだ、急に
子どもの頃は散々書いていて
書けなくなる未来など想像すらしていなかった
知らない間に ぼくの頭から夢が消えかかっている
焦って調べて、ようやく書くことができたけど
あれ、こんなんだったっけ…って
やっぱりわかならなくなっていて
ぼくはなんだか、心にぽっかり穴があいたような気持ちになった
消えてほしくない、夢は消えてほしくない
夢は、希望だ

もっとみる
【詩】鬼子

【詩】鬼子

ひとは言う ありのままの姿を見せてと
それがどんな意味なのかも知らずに

自分と同じようにかわいいだろうと信じている
愛せるから大丈夫と信じている
鬼なんて存在しないと、信じている

そう思える幸せを守るために
鬼は鬼であることを隠しているんだぜ

傷つけたくないから隠しているのに
ひとはやたら暴こうとしてくる
そしてわかった途端、
傷つけられたと喚き散らかす
ひとの方がよっぽど恐ろしいと思ってし

もっとみる
【詩】惑星ちがい

【詩】惑星ちがい


ぼくは別の惑星の住人だと思う

みんなが起きている時、ぼくは寝ている
みんなが寝ている時、ぼくは起きている
みんなが悲しんでいる時、ぼくは喜んでいる
みんなが喜んでいる時、ぼくは悲しんでいる
みんなが笑っている時、ぼくは黙っている
みんなが黙っている時、ぼくは笑っている

きっと任務に選ばれたんだ
この惑星の住人について知りなさいって
ここに来たときの記憶がない、そんな状態さ
でないと辻褄

もっとみる
【詩】いちごみるく

【詩】いちごみるく

甘い香りはあなたを笑顔にさせる
優しくて可愛くてほんとに良い子
体にはいちごみるくが流れているのよと言ったら信じてもらえたそ自分

いちごもみるくも流れていません。

毎日いちご50粒、みるく800cc、砂糖大さじ30、練乳大さじ10
必死で作ってあなたにあげている
本当は、身体の中心に黒い塊があって
それが生み出した
マグマみたいな血しか流れていない
可愛くて甘い香りなんかしない
あなたの笑顔が

もっとみる
【詩】傷跡

【詩】傷跡

死が訪れる系の映画やドラマ、漫画を見ていて思ったのですが、絶対いなくならないでほしい人がいなくなった時、人は悲しいを超えてただただ“痛い”のではないかと思ったんです。残された人はすごく苦しそうな顔をしていて、悲しそうというより“痛そう“だと思いました。もし自分がそういう状況に置かれたら、こんな気持ちになるのかもしれないって想像して書いた詩です。
(縦書きに挑戦してみました。画面に表示するのむずいな

もっとみる
【詩】大切なきみ

【詩】大切なきみ

傷つけてもまた愛せば元通りになると思っている、元通りになるから大丈夫だろうと思っている、そんな人は軽蔑していいと思う。

逆だよ。一度傷つけたら愛なんて届かない。
届いたとしても、それによってさらに傷つけてしまうんだよ。
元通りなんかならない。絶対に。

だからきみは怒っていいんだ。
弄ばれて良いほど、きみの命は軽くない。

大切なんだ。大切なんだよ。

自分で思うのは難しいかもね、だからぼくが、

もっとみる
【詩】虫の夢

【詩】虫の夢

毒を吐く害虫から生まれた私は、
果たして人といえるのだろうか。

人になるために
優しさを真似して、笑顔を練習して、
動きを合わせて溶け込んで。

温かい飲み物を飲んで血を温めて、
体温が元に戻らないよう努める。 

なりたい。人になりたい。

でもなれない。

全部、模倣にすぎないからだ。

必死に人に近づこうとするその時点で
人では無い気がしてならない。

真似しようとする度に
自分は違う生き

もっとみる