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【詩】虫の夢

毒を吐く害虫から生まれた私は、
果たして人といえるのだろうか。

人になるために
優しさを真似して、笑顔を練習して、
動きを合わせて溶け込んで。

温かい飲み物を飲んで血を温めて、
体温が元に戻らないよう努める。 



なりたい。人になりたい。

でもなれない。

全部、模倣にすぎないからだ。



必死に人に近づこうとするその時点で
人では無い気がしてならない。

真似しようとする度に
自分は違う生き物だと思わされる。

周りの人間達は、私のことを優しいと言った。 

でもそれは頑張った姿だ。

社会に馴染むように真似した姿だ。

本性を分厚いベールで覆った姿だ。

それでもあなたは優しいと言う人間もいるが、やめてくれ。

その言葉に縋ってしまうと、余計に私がわからなくなる。

周りと私は全く別の生き物に見えるという違和感は、一体どうなるのだろうと、分からなくなる。

私は人だと言い聞かせてきたが、
やはりそうとは言い切れないんだよ。

本性をちらつかせた時、
駆除の目をされたのは確かだから。




害虫出身。

人の目にはこの世界がどんな風に映ってるのか知りたくて、人になることを夢見てる。

悩みを打ち明けるってどんな感じ

友人とこころから笑い合うってどんな感じ

恋人と愛を囁き合うってどんな感じ

社会から必要とされるってどんな感じ

すべて私にはわからない。




今日も月夜がやってくる。

陽の光りは眩しすぎて生きていけない。

微笑んでくれるのは、お日様じゃなくお月様。

静かに見つめて微笑んでくれる。


お月様の子守唄を聴きながら、私は眠りにつく。



おやすみなさい

虫が人に生まれ変わる夢が

正夢になることを願って

 







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