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篠村友輝哉/YukiyaShinomura
2023年6月26日 10:43
(前編はこちら)──「いかに」が大切、とはいえ……篠村 例えばある演奏について、徹底的に奏法とか身体の使い方、ピアノだったら鍵盤へのコンタクトやペダリングとか、そういうことの分析だけで演奏を記述するレビューや評論に僕はすごく違和感を覚えるんです。その演奏家の音楽の組み立て方とか、演奏において何を優先しているのかとかは、分析するしその必要性を感じるんですが、その演奏家の音や表現のよって来ると
2023年6月26日 10:42
──「いかに」の重要性篠村 「何を」と「いかに」について、僕自身は、大学の頃なんかは断然「何を」の方が大切だと考えていました。そこには、音楽大学という環境の、「どう弾くか」「どう楽譜を読むか」を訓練することにあまりに特化しているようなところに対する反発も含まれていたような気がしています。やっぱり、弾き方や読み方だけ知っていても、その先に描きたいものがなければ、それらは中身のない容器のようなもの
2022年8月29日 17:45
(前編はこちら)──現代的な表現をいかにして伝えるか向井 美春ちゃんの話に、「楽譜からの逸脱が昨今の流行り」というのがあったけれど、それについてもう少し具体的に聴かせてもらってもいいかな? 小倉 例えば、オーケストラで「そこそんなテンポでいく?」「音楽的にそんな展開ありえないでしょ」というような指示を出す指揮者が最近多いと周りから聞いていて。でもそれはさっき話したように難しいところで、
2022年8月29日 17:41
──理想の演奏篠村 これまでのこの企画での自分の発言を振り返ってみると、何度か繰り返し話していることがいくつかあることに気が付きました。そのひとつに、演奏を「再現芸術」と呼ぶことに対する違和感がありました。何か「再現」という言葉が、演奏家の仕事の本質を表していないんじゃないかという感じをずっと抱いています。僕たちは「楽譜通りに弾く」ことを教えられてきていますし、もちろん、それはクラシックの演奏
2021年7月19日 17:37
過去の「音楽人のことば」で対談してくださった方の再登場を軸にしたシリーズ内鼎談企画、今回は第9回のゲストだったマリンビストでモデルの野木青依さんと、本企画初のクラシック音楽家でないゲスト、アートマネージャーでシンガーソングライターの宮﨑有里さんをお招きいたしました(野木さんのご紹介はこちらの第9回記事冒頭をご覧ください)。 宮﨑さんと私は高校の同級生で、「変わり者」と目されていた私にも親しくして
2021年4月18日 13:23
(前編はこちら)ーー伝統を更新しながら伝えていく篠村 教育やレッスンというのは、伝統を伝えていくということでもありますが、ただ、伝統と言っても、それをそのまま繋いでいくっていうことでいいのかと思う部分もあるんですね。どこかで更新しながら伝えていくべきものなんじゃないかなと思うところがあって。比嘉 それは、例えば自分たちが今生きている時代にとっての古典、というような捉え方かな?篠村 そう
2021年4月18日 13:20
ピアノ弾き同士での対談は少し久しぶりになりました。第12回のゲストは比嘉洸太さんです。比嘉さんは、私が桐朋学園の修士課程で室内楽を師事した川村文雄先生の門下生なのですが、在籍中に出演した川村先生のプロデュースする演奏会に比嘉さんも出演されていて、その際に初めてお会いしました。そのときは、楽屋でのちょっとした会話のみで、その後も結局、修士課程在籍中はすれ違う際にあいさつをする程度で終わってしまいま
2021年2月2日 10:54
節目の10回を迎えて、11回目から何か新しい企画を…と思い、2回に1回くらいのペースで3人で対話する鼎談を組み込むことにしました。鼎談では、既にこのシリーズで対談した方に再登場いただくことが中心になる予定です。 その1回目として真っ先に思い浮かんだのが、まさに盟友関係と言える五十嵐沙織さんと寺内詩織さんのお二人でした。何度も共演を重ね、また一友人同士としても仲を深めてこられたお二人とのお話でし
2021年2月1日 11:14
(前編はこちら)ーー音楽に「力」はあるのか篠村 哲学者のカントが『判断力批判』のなかで、芸術について論じているんですが、そこで当然音楽についても触れていて、彼は音楽を、感覚的な快さとか「瞬間的な」感動をもたらすものとしては、芸術の中で最上位にあるものと位置付けています。しかしその一方で、芸術の持つ、それに触れることで連想力が働かされたり、心的な能力が開発されるという面においては、最下位だと言っ
2021年2月1日 11:02
「音楽人のことば」シリーズも10回目となりました。振り返ってみても、同世代の音楽家たちがこれほど自分の考えを語る場はあまりなかったのではと自負できるほど、充実した企画になっていると感じています。ゲストの方々、読者の皆様にはこの場を借りて改めて御礼申し上げます。 節目となる今回は、ヴァイオリニストの山縣郁音さんをお迎えしました。端正な演奏ながら、華のある音色をお持ちの山縣さんですが、室内楽やオーケ
2020年11月12日 17:02
(前編はこちら)ーー演奏家とモデルの共通点、エンタメ性と芸術性の両立篠村 演奏以外の活動を始めたことで価値観に変化などはありましたか?野木 いまは音楽活動とモデルの活動が両輪で、あとはラジオのMCを一年やったり、基本的にお話があればどんなことでも、「自分はマリンバ奏者なので…」とは言わずにやっているのだけど、モデルは、昨年の5月に、働いていた銭湯の関係で知り合った人から、イベントのビジュア
2020年11月11日 22:29
今回のゲストは、マリンビストでモデルの野木青依さんです。 野木さんとは桐朋学園大学での同級生でしたが、在学中はあいさつを交わす程度の関係に終わってしまいました。そのあとも私の演奏会に来てくださったり、SNS上でちょっとしたやり取りをしたりということはありましたが、ゆっくりお話しする機会がないままでした。 野木さんは卒業以降、マリンバの演奏や企画以外にも様々なお仕事を手掛けられていて、また演奏
2020年9月15日 17:08
(前編はこちら)ーーその作品をなぜ自分が弾くのか篠村 時代で言ったら、どの時代の作品に一番共感しますか?山本 共感ということで言えば、自分に近い時代の作品ですね。あと邦人の作品にはすっと入れるような感じがあります。篠村 作曲家にもよると思うけれど、どのあたりに共感しますか?山本 僕は準備の段階で、たぶん(結果的には)意味のないこととかも考えながらいろいろやっていると思うんですが、割
2020年9月14日 17:02
前回に引き続き、今回も初めましての方との対談となりました。ヴィオリストの山本一輝さんです。 山本さんとは面識こそありませんでしたが、この対談企画の第6回のゲスト、濱島祐貴さんから時々彼の話を聴いていましたので、前々からお話をしてみたいと思っていました。今回お願いしようと思ったのも、濱島さんのYouTubeで彼の演奏とお話を聴いたことがきっかけです。前回の五十嵐沙織さん同様、山本さんも快く打診に