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BtoB広報・PRの目的とKPIの立て方

Shimizu_PR

広報担当者の悩みゴトに、KPI設定を挙げる人が多いようです。またその上司、経営者の方からも、広報の評価指標が分からない、という話を聞きました。

広報のKPI設定が難しいと言われるのは、営業部やマーケティング部と連動する業務でありながら、管理部門のような「成果を数値化しづらい」業務だからだと思います。
また、KGI/KPIをリード数や受注数にするとその数字は小さく、貢献度が低く見えてしまうことも評価を難しくしていると思います。
しかし、具体的目的を定義しプロセスとアウトプットと成果を交えれば、広報・PRの適切なKPI設定は出来ると考えます。

PR代理店とBtoBスタートアップで計10年間PRに従事した経験から、広報・PRのKPIについての学びをここにまとめようと思います。

以下のような方の参考になればと思います。

・BtoB広報・PR担当者で、目的設定、KPI設定で悩んでいる方
・BtoB広報・PR担当者で、成果を社内に示すのに苦労している方
・マネジメント層で、PR・広報の評価に悩んでいる方

※メディア露出のKPI管理、効果の数値化については書かれていませんのでご了承ください。

目的、KPI設定の前に考えたいBtoBの広報・PRの特徴

広報・PRに求められる目的は、認知獲得、信頼醸成、対外ブランディング、社内ブランディングなど多岐にわたると思います。
その中で、認知獲得に関しては、toCとtoBのビジネスモデルの違いからくる広報・PRの環境の違いに触れておきたいと思います。

①toCとは顧客が異なる

BtoBではサービス導入までの検討期間が長かったり、複数人で検討されるため、TV・新聞やSNSで見たから即問い合せ、購入というケースは非常に稀です。
toBの広報・PRは、toCよりもダイレクトな貢献度がさらに分かりづらくなるので、目的とKPI設定には工夫が必要になります。
※フリーミアムモデルや、主要顧客がスタートアップ企業の場合は異なるかもしれません。

出所)株式会社ベイジさん資料

②toCとは購買プロセスの役割が異なる

近年増えているThe Model型(に近しい組織)の企業であれば、マーケティング→インサイドセールス→フィールドセールスとバトンを渡すことになり、後工程を考えたKPIの数値管理が必要になります。
スクラム採用を取り入れる採用広報でも同様のことが言えると思います。

出所)株式会社才流さん資料

これらの前提を踏まえて、広報・PRの目的、KPIについて考察したいと思います。

目的を定義する

KPIを上手に設定するには、目的の定義から始めます。
広報・PRは成果を数値化しづらいので目的を定義しない、という人もいらっしゃるかもしれません。しかし、目的を定義することで

  • 進捗把握と課題の抽出ができる

  • 社内のコンセンサスがとれ、チーム、部署間で同じ意識で行動ができる

  • リソースを集中(有効活用)することができる

と、メリットは多いので、広報・PRも目的を定義した方が良いと考えています。
私は、目的→目標→手段の順で考えるようにしています。

良い目的は曖昧さがない

良い目的とは期限や目標数字が設定され、曖昧さがないものだと、元P&Gのマーケター音部大輔さんは著書『なぜ「戦略」で差がつくのか』で語っています。

広報・PRの役割の1つの「認知獲得」は、「誰に」「いつまでに」「どのように態度変容してもらうのか」を定義している方は少ないように思います。

私自身、優先すべきステークホルダーは誰なのか?認知獲得とはどういう状態を指すのか?を定義したところ、やるべきことが明確化し、PRが非常にやりやすくなりました。

「企業理念の浸透」などの社内ブランディングが目的の場合でも同じことが言えると思います。

具体的な目的の定義の仕方

<誰に>

広報・PRの役割は「ステークホルダーとの良好な関係づくり」「社会とのコミュニケーション」と言われます。特定の誰かではなく、広いコミュニケーションが求められることが多いです。

しかし、スタートアップ企業であれば、どのステークホルダーとの関係構築に力を入れるか優先順位をつける方が分かりやすいかもしれません。全てのステークホルダーと関係性を築こうとすると中途半端なコミュニケーションになる懸念があります。
会社の成長に合わせてステークホルダーの範囲を広げていく、または優先するステークホルダーを替えていく考え方だとやるべきことが明確になります。

  • リード数増加のための新規顧客との関係構築

  • LTVを優先した既存顧客との関係構築(CSが担当する領域かもですが)

  • ゲームチェンジのための規制緩和を狙った行政との関係構築

  • 採用のミスマッチ防止のための求職者との関係構築

などです。

1点、新規顧客と関係構築する場合、マーケティング部と広報・PRは同一のターゲットを狙うのか?は一歩踏み込んで考えたいテーマです。例えば、営業やマーケティング部は、Championと呼ばれるエンタープライズ企業の役職者やDX推進責任者をターゲットにしているケースがあると思います。そのような人数が限られたターゲットを広報・PRもターゲットにするのか?です。
個人的には、広報・PRはChampionに影響を与えるであろう組織・人を特定し、ターゲットにする考え方もあると思います。Championの取引き先企業であったり、業界のリーダー企業、行政、業界団体、メディアなどと関係を構築するのです。

<いつまでに>

期限の考え方として「フォーキャスト(現状の課題や実績から考える)」と「バックキャスト(将来のあるべき姿から逆算する)」の2つがあると思います。

バックキャストで目的を考えるのであれば、なんとなく5年後までに●●する、よりも、期限に必然性があった方が納得力が増します。

私の例で言うと、法改正のタイミングをコンペリングイベントにしたバックキャストで考えました。
医療、建設、物流業界には2024年4月に働き方改革関連法が施行され、人手不足が加速する「2024年問題」があります。2024年までに社会をどのように救いたいか、自社がどのような状態になるべきか、を目的に盛り込むと納得度が増し、目標数値も明確化しました。

目標数値は、態度変容の結果を考える

例えば、認知獲得・信頼獲得を目指した場合、そうなる状態とはどういうことでしょうか? 認知している企業のことは、会社名/サービス名を記憶しており、一度は自発的に企業のホームページを検索しているのではないでしょうか。
プレスリリースやメディアでの掲載、SNSの投稿に接触してもらっただけで認知された。と言うのは少し乱暴だと思います。

認知した結果、態度変容し、潜在顧客の指名検索、問合せ、資料DL、セミナー参加、求職者であればカジュアル面談に参加してもらう。その数字をKPIにした方が経営に沿うものになると思います。
マーケティング部や営業部、人事部との齟齬もなくなります。
メディア掲載数、ホームページのPV数、オウンドメディアのPV、SNSのいいね!数などはKPIのための中間指標と考えます。

当然、一度の情報接触だけで態度変容はしてもらえないので、ステップ、導線づくり、情報発信のテーマ、質、頻度を意識してアクションを設計することが求められます。
それらは広報・PRの範疇ではなく、マーケティング部の業務範囲だ!ということであれば、マーケティング部と密に連携し、役割分担とMQL(Marketing Qualified Lead)を設定します。

ちなみに、Web広告の世界では、”認知やブランディングに寄与しているが、全くCVしない広告は存在しない”という研究結果があります。​​
つまり、
”認知、ブランディングに寄与する広告は、CVもする”のです。
https://wacul.co.jp/lab/ad-attribution-useless/

Web広告と広報・PRは性質が異なるものですが、それくらいの厳しい目で自身のアクションとアウトプットを評価するべき、と思わされます。

「企業理念の浸透」のようなインナーブランディングが目的の場合の目標数値は、理念が浸透した結果、社員がどうなるか、を考えます。
たとえば、退職率や定着率を目標数値にすれば、社内報以外の手段を考えるきっかけにもなるかもしれません。

広報・PRの手段を広義で考える

広報・PRの手段を考えるとき、広義の広報・PRを意識することが重要です。ともすると営業、マーケティング部が企画したセミナーの告知、人事部が採用募集している職種と接触しやすい媒体探しといった業務に留まってしまうケースがあります。

広報・PRは、情報を届ける手段(マスメディア、専門媒体、オウンドメディア、セミナー、SNS、口コミ、チラシ配り)を理解するだけではなく、主体的にやれることは多々あります。

その他広報・PRが行いたい手段の例を、以前noteに書いているので、興味あればご参照ください。

広報・PRの目的、KPIの例

架空の企業で目的・KPIの設定をしてみます。
例えば、ミッションで”ITの力で企業を強くする”を掲げる、バックオフィスの業務軽減ツールを提供する企業の広報・PRの目的とKPIの案です。

目的:2030年までに中小企業のIT人材不足を救う(経済産業省資料
目標:Marketing Qualified Lead●件の獲得
手段:

  • 中小企業の2030年問題啓蒙のためのメディア露出●件

  • 業務効率化ツールを評価するアワードの受賞●件

  • 自社サービスの中小企業の導入事例公開●件

  • 上記事例集のホワイトペーパー作成 ●件DL

  • 中小企業庁ゲスト登壇のセミナーを主催し、申し込み●名

広報・PRはアクションしてなんぼ

広報・PRの目的、KPIについて、長々と書きましたが、やっぱり広報・PRはアクションしてなんぼです。考えすぎて行動に移せなくなってしまっては元も子もありません。

ご自身でやりやすいやり方を見つけて、アクションをしてください。
その結果、例え失敗してもそこから学ぶことも多いはずです。

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