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BtoBスタートアップ PR・広報基本ガイド -ドメイン別の具体例-

※2023年3月更新

突然ですが、スタートアップの広報PR界隈ではBtoBの広報・PRについてこんな話を聞きます。

  • BtoBはメディア露出しづらい

  • 広報的な施策を行っているが効果が不明だ

  • BtoCとは違うアクションが必要そうだが、何をしたらいいか分からない

確かにBtoBのPR・広報の情報や事例は、BtoCと比較すると少ないかも。。。
しかもPR・広報は効果が出るまで時間が掛かるといわれています。効果が出ていない中、施策を続けるのは非常に不安だと思います。

そこでPR歴は10年で、大手PR代理店→BtoBスタートアップで試行錯誤、及び伝聞してきたBtoB広報PRをいくつかの”型”としてまとめようと思いました。
1つの目安としてBtoB広報PRで悩まれている方の参考になったら嬉しいです。

※内容の至らぬ点のご指摘やご意見をいただけたら、随時改訂をしていきたいと思います。

本来はHow(手段)ではなくWhat(目的)から考えるべき・・・

広報・PRに求められる役割は、狭義だと「メディア露出の獲得」。
広義だと「社会との関係値作り」「ステークホルダーとの良好な関係」と言われています。

広義の広報PRは自由な発想でアクションをすればいいと思います。
How(手段)ではなくWhat(目的)から考えろ!です。

しかし、ある程度Howの知識がないと広報戦略を描きづらいのが実態ではないでしょうか。

BtoB PR・広報の世界であるあるなのは

目的は認知獲得で、戦術は大量のメディア露出!そのためのプレスリリース執筆と、あとは公式SNS運用!

なかなかメディアに取り上げてもらえないなぁ。
取り上げられても、それを見たお客様からの反応が少ないな。。。

とBtoCと同じようなアクションに落とし込んで「効果が出ない」と悩んでしまうことです。

これは、メディア露出の効果のあるなしの話ではなく、toCとtoBで購買プロセスが異なることに起因します。
また、BtoBのPR・広報の事例が少なく、ついついBtoCと同じ手法を取ってしまうことで起きていると思います。

本来はもっと多角的な視点が広報には求められます。

広報・PRの基本

そこでスタートアップの成長ステージ、ドメインに応じた代表的なBtoBの広報PR活動のHowをまとめました。

「こういう手段もあるんだな」
「ウチの会社はこの手法がある程度ハマりやすいんだ」

と理解した上で戦略策定に取り組むと、精度や視点も異なってくるはずです。

ステージ別の広報PR活動

◆今何に取り組むべきか?
これはハッキリ言ってSansanでマーケティング・広報を担当されていた日比谷尚武さんが紹介している元リブセンス広報IRの真鍋順子さんがまとめた以下図に沿うイメージでいいのではないでしょうか。(成長スタートアップの広報戦略、いつ何をすべきか?

ステージ別で考えた時に、BtoC、BtoB問わず参考になると思います。

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昨今は、事業広報開始と同時期に、採用広報も取り組み始めるスタートアップが増えている気はします。
また、IPOは準備から3年ほど要するので、Ⅴ)IR開始は、目標から逆算して取り組むと良いと思います。

MVVの策定や採用広報については、素晴らしいnoteがすでにあるので参考にしてみてください。

ドメイン別の事業広報

事業広報をドメイン別に整理します。
事業広報とは、簡単に言えば
「自社の商品・サービスを広めること」です。(諸説あり)

BtoBのPR・広報でのポイントは2点

  1. 顧客はどこから・誰から情報を入手しているか

  2. ドメインによって効果が出やすい/出にくい施策がある

です。

1.顧客はどこから・誰から情報を入手しているか

「え!?普通はメディアに掲載された記事を見て、商品を知るんじゃないの?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、BtoBだと顧客の主な情報入手経路がメディアではないケースもあるのです。
メディアに取り上げてもらうことは大事ですが、それだけではBtoB商材はなかなか認知されません。

顧客は誰からの影響でサービスを知るのか。導入を検討するのか。
その相手とリレーションを築くには、どうすればよいか。

BtoBのPRパーソンは、その解像度を高めることが必要だと思います。

一般的に、PR・広報は全てのステークホルダーを意識してコミュニケーションをするべし、と言われています。しかし、事業広報においては、特定の誰か、に絞ってリレーションを築く方が良いと思います。

2.ドメインごとに合うPR手法がある

多くの広報さんたちと会話する中で、サービスを提供するドメインによって、ある程度最適な広報手法の型があるのではないか?という仮説が出てきました。

そこで、いくつかの切り口でドメインを分けてみます。

まずバーティカルかホリゾンタルかで分岐させます。
以下、One Capitalさんのnoteのカオスマップで分類されたドメインをもとにします。
SaaSではない売り切り型のビジネスモデルでも同種のドメインを参照してください。

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そして便宜上、「生活者への影響」の高低で四象限に分類しました。
「生活者への影響」とは、エンドユーザーは誰か、提供サービスの関係人口の多さ、社会的意義などを加味して私が主観で分類しています。

A:ホリゾンタルで生活者への影響度が高いドメイン

BtoBの中ではAは顧客(潜在・顕在)数が多く、いわば労働人口約5600万人がターゲットと言えます。BtoCに近い環境だとも言えます。
「働き方の変化」「働き方改革」に関連付けた広報PR活動を行う企業が多いです。

行政の動きと連動させる(ガバメント・リレーションズ)
Aの事業はドメインに関連する法改正を控えているケースがあります。法改正は大きなコンペリングイベントとなるので、潜在顧客を見込み客にステップアップさせる要素の1つになります。

できれば法改正に向け、行政や業界団体との協力を働きかけたいところです。こうした活動は重要なソートリーダーシップになり、顧客から第一想起されることに繋がります。
行政や業界団体は、電話でアポを取れば、話を聞いてくれる場合も多いです。

行政との取り組みを起こすのは難しくても、「法改正まであと1年」などの節目にマーケティング部とオンラインイベントを企画し、集客やコンテンツで協力するのも1つの手です。

具体事例は、コンカーさんの電子帳簿保存法に関するパブリックアフェアーズの取り組み弁護士ドットコムさんの脱ハンコに関連した取り組み などがあります。

◆インダストリー・リレーションズ
業界団体や、ときには同業他社と協調し、市場啓蒙や顧客の利便性を高めるためにアクションすることを指します。
新しいテクノロジーの活用を業界内で広める過程では、その活用による課題の話も出てきます。
業界共通のガイドラインづくりや標準の規格づくりが必要になります。

同業他社・競合他社と協力する場面も出てきます。
営業は競争領域、広報PRは協調領域として棲み分け、社内から理解を得た上でアクションを起こすようにしましょう。

新しく自社で団体を立ち上げることもあれば、既存の団体と協力することも選択肢の1つです。

具体例としてはマネーフォワードFintech研究所弥生さんの電子インボイスの標準規格選定があります。

1点、業界を啓蒙する団体を広報が立ち上げる場合は、継続性も考慮して体制を組むことをお薦めします。
「話題化させること」を目的に立ち上げたのでは、立ち上げた瞬間がピークで終わってしまいます。

顧客・業界の何を解決するために、インダストリー・リレーションズが必要なのかを考える必要があるでしょう。

メディア・リレーションズ

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