前代未聞!主人公が一度もゾンビを倒さないゾンビ映画!?誰か一人くらい「これはおかしい!」と気づきそうなものだけど…「ドルフ•ラングレン ゾンビ•ハンター」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(733日目)
「ドルフ•ラングレン ゾンビ•ハンター」(2017)
マイク•メンデス監督
◆あらすじ
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ミシシッピー州の小さな町で、古代の悪霊ゾンビが解き放たれた。悪霊はとり憑いた人間を殺した者に次々と憑依していき、町は大量の犠牲者で溢れ返る。そんな時、くたびれたロングコートを身にまとった大男が町に出現。数十年前に同じゾンビと戦った経験があるという大男は、FBI女性捜査官と共に悪霊ゾンビに立ち向かう。(映画.comより引用)
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『悪霊ゾンビを倒しながら旅を続ける孤高のハンターが田舎町で最強最悪の悪霊と対峙する!』という王道にも程があるゾンビアクション映画です。
これはある意味めちゃめちゃパンチが効いてますし、私の企画向けだとは思いますが、中々にツッコミどころが多すぎてどこから言っていけばいいのか分からなくなるレベルです。エンディングを除くと80分ほどですが非常にテンポが悪く、本題に入るまでに30分以上かかります。そして一番驚くべきは『主人公が悪霊やゾンビを一体も倒さない』という点です。
るろうに剣心の剣心よろしく「拙者はもう誰の命も奪わない」みたいな殺さずの誓いがあるわけでもなく、ちゃんと戦いには身を投じます。なんならめちゃくちゃ参加してます。何せハンターですから。
しかし、今作に登場する悪霊は非常に厄介で『人間に取り憑いて殺戮の限りを尽くし、誰かに殺されると今度はその相手に取り憑いて再び暴れ回る』を繰り返すため、不用意に殺すことができません。そのため主人公はゾンビハンターと言っておきながら、ゴム弾や大きな網で悪霊に取り憑かれた人間の動きを奪うだけです。まぁそれもハンターっちゃあハンターですけど…
そのため、今作はゾンビアクション映画にも関わらず、主人公が悪霊やゾンビを倒すシーンは一度足りともありません。なぜ悪霊の設定をあんなややこしくしたのでしょうか。このあたりの疑問はまた後でしっかり書かせていただきます。
そんな今作の主人公である悪霊ゾンビハンターのジュビダイアを演じたドルフ•ラングレン氏は“人間核弾頭”の愛称で知られ、若い頃は空手家として活躍したのちに20代の後半から俳優に転身。その大きな体を活かして様々な作品に出演。「エクスペンダブルズ」シリーズや「アクアマン」シリーズなど60歳を過ぎた現在も第一線で御活躍中です。
数多くの作品に出演をしているドルフ氏ですが、今作含め「ドルフ•ラングレン 〇〇」というご自身の名前が入った作品がざっと調べただけでも11作もありました。
その全てで主演を務めていらっしゃるのは流石の一言ですが、よくよく調べてみるとそれぞれの原題に同氏の名前は付いておらず、かつどの作品もぱっと見かなりB級感が強いです。おそらく日本ではそのままのタイトルでリリースすると他のB級映画に埋もれてしまうからなのか、ドルフ氏の名前を冠することで少しでも手にとってもらえる確率を上げているのかもしれません。ちなみに同氏主演のサメ映画もあります↓
今作の監督を務めたマイク•メンデス氏は90年代後半より監督業をスタートし、これまでに単独で監督を務めた作品は8本ほどあるようです。そのうちの7本がホラーやパニック映画で、さらにはそのうちの2本は巨大蜘蛛映画です。大分偏ってますが個人的には相当好きです。この作品↓が一番気になります。
脚本を担当したダン•バーク氏は私がこの企画でつい先日視聴した「ステイク•ランド 戦いの旅路」(’10)の続編にあたる「ステイク•ランド 戦いの果て」(’16)で長編映画監督デビューをしており、なんと私が地味に気に入っているサイコスリラー映画「ヴィランズ」(’19)も手掛けていました。
現在アマゾンプライム、U-NEXT、Leminoにて配信中です。最近見た中でもトップクラスに“アレ”なので逆にちょっと見てほしいです。
◇ミシシッピ州の田舎町で運悪く悪霊ゾンビが解き放たれてしまった。『人間に取り憑いて殺人を繰り返し、その取り憑いた人間を殺した者に次々と憑依していく』その悪霊によって殺人事件が頻発し、町は不安に包まれていた。そんな町にやって来た悪霊ゾンビハンターのジュビダイアは型破りな方法で事件の解決に乗り出す。彼は見事悪霊を退治することができるのか!?
というのが細かめのあらすじなんですけども、ツッコミどころが多いので何から書いていけばいいのか分からなくなります笑
そもそも今作のヴィランは悪霊と取り憑かれた人間なので、正確にはゾンビは一体も登場しません。にも関わらずタイトルが「ゾンビ•ハンター」となっている時点でこの邦題を付けた方は本当に今作を見たのかなと疑ってしまいます。一応、“悪霊とゾンビ”ではなく“悪霊ゾンビ”ではあるんですけど、悪霊ゾンビってなんですかね。悪霊だけでいいと思うんですけどどうなんでしょう。
◇森で狩りをしていた男性が偶然小さな金属の入れ物を拾い、その中に封印されていた悪霊に取り憑かれてしまう。正気を失った彼は家族を惨殺、さらには近所の人々を次から次へと殺していく。勇敢な男性によって射殺され事態は収束。かと思いきや、今度はその男性が周囲の人々を殺し始める…
という冒頭部分はめちゃくちゃ面白かったです。グロ描写もさることながら、視聴者が事態を飲み込む前にポンポンと展開していく疾走感が素晴らしかったです。この冒頭のシーンで大分期待が持てたんですけど、それ以降で一気にペースダウンしていた印象です。
町を訪れた悪霊ゾンビハンターの主人公ジュビダイアは『流石に怪しすぎる』という理由で速攻で警察に捕まってしまい、勾留されます。その後は今作のヒロインにしてFBI捜査官のピアスが事件を調査し、「これはどうやら普通の事件ではなく、ジュビダイアが言っていた悪霊説が正しいっぽいぞ」となって、ジュビダイアに助力を仰ぎ、本格的に捜査に乗り出します。
このあたりでようやく物語の本題に入るんですけども、ここまでに30分近く使ってるのはやっぱりちょっと長いです。あの冒頭の疾走感はどこにいってしまったのでしょうか。ピアスの調査パートは不要に感じました。
そして今作に登場する厄介な悪霊はとり憑いた人間を殺した者に次々と憑依していくため、どう倒すのかが非常に見どころになってきます。
何を隠そうジュビダイアは若い頃にこの悪霊と対峙しており、その時に彼の父親が非常に画期的な倒し方を編み出しました。それが『数分後には死に至る毒薬を飲んだ状態でその取り憑かれ人を殺し、自分に憑依したタイミングで毒が回り道連れにする』という“絶対に他にも方法あるでしょ!”と声を大にして言いたくなるようなバカ作戦で、彼の父親はこの世を去りました。
なぜか「この作戦以外に方法があるはず!」とならないジュビダイアたちはまたこの方法で悪霊を倒そうとします。
悪霊は教会で大暴れした後、最終的には子供に憑依し、父親はなんとか我が子を地下室に閉じ込め、ジュビダイアたちに助けを求めます。しかし考えることを放棄している脳筋男•ジュビダイアはお手製の毒薬を父親に渡し、「これを飲んで子供を殺せ。その後お前も死ぬけど、あの世でまた会えるよ」と到底主人公とは思えない畜生発言が飛び出します。
ジュビダイアからプレッシャーをかけられた父親は意を決して毒薬を飲み、愛する我が子を手に掛けようとします。しかしそこへ警察が突入してきてしまい、子供を殺す前に全身に毒が回った父親は死んでしまいます。これ以上無い犬死です。
その後、なんやかんやあって悪霊に取り憑かれた警察を拘束したジュビダイアは今度は自分が毒薬を飲んだ状態で警察を殺そうとします。しかし彼が毒を飲む前に今度は牧師たちがやって来て大揉め。最終的に取り憑かれた牧師はジュビダイアを手に掛けようとするも、ここでヒロインのピアスが手榴弾のピンを抜いた状態で牧師を射殺し、自らも爆発して事態は終焉を迎えます。
本当にただの一回も主人公が活躍しません。優しいお父さんに毒薬を飲ませて犬死させたくらいです。
あと書き忘れてましたが、ヒロインのピアスは天使の血族です。その設定が活かされるシーンはほぼありませんが、彼女の背中にある羽型のアザや彼女の過去の不思議なエピソードからジュビダイアがそう判断したのできっとそうなんでしょう。クライマックスで自爆する時も宙に浮き、まるで天に召されるかのようだったので本当に天使だったんだと思います。
悪霊に取り憑かた人間が殺戮を繰り広げる描写は凄まじいんですけど、やはり主人公が悪霊やゾンビと戦うシーンがもっと見たかったです。というか主人公に一切見せ場がなく、流石にこれはドルフ氏も「オレ全然活躍してないじゃん!」と文句を言ってもいいレベルだと思いますし、制作陣も「なんかこれはおかしい!」と気づけなかったのでしょうか。
もっとシンプルに死者を操る悪霊とかをボスにすれば全て解決すると思うんですけど…
個人的になんですけど、この手のゾンビアクション映画ってストーリー云々よりも如何に豪快にゾンビを倒していくかが肝だと思います。いち視聴者としてはドルフ•ラングレン氏が大勢のゾンビ相手に大立ち回りを繰り広げる派手なアクションシーンが見たかったです。なもんでそれが一切無い時点でちょっと方向性を間違えている気がしました。
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渋谷裕輝 公式HP↓