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スランプ作家が息子を救うために異次元にダイブ!勢いとテンションで乗り切る古き良き80年代ホラー「ガバリン」【ホラー映画を毎日観るナレーター】(617日目)

「ガバリン」(1986)
スティーヴ・マイナー監督

◆あらすじ
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亡くなった叔母の屋敷を相続したホラー作家のロジャー。ここではかつて幼い息子・ジミーが謎の失踪を遂げていた。以来、スランプに苦しむロジャーはベトナム戦争の実体験にもとづく新作の執筆を始めるが、叔母の亡霊が現れて「屋敷に気をつけて」と警告し…。(Filmarksより引用)
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『叔母の屋敷を相続した小説家が様々な怪異に巻き込まれる中で、己の過去や家族と向き合い、息子を取り返すために奮闘する』

という王道の80年代ホラーです。少々一本道かつ所々に無理があるストーリーでしたが、その全てを勢いとテンションで乗り切っているところに好感が持てました。また、全体的にコミカルなタッチで描いているため肩肘張らずに見られるので個人的にはかなり好きな作品です。

ちなみに監督を務めたスティーヴ・マイナー氏は「13日の金曜日」シリーズの2と3でも監督を務めており、製作を担当したショーン•S•カニンガム氏は何を隠そう「13日の金曜日」の記念すべき1作目で監督•脚本•製作を務めた、言わば“人気シリーズの生みの親”です。そのため公開当時は“13日の金曜日コンビが手掛けた”という風に宣伝されていたそうです。

現在U-NEXT、hulu、Leminoで配信中のほか、アマゾンプライムにて8月末まで50円でレンタルが可能です。

「全知全能をかけて創造した」とか「パズル•スリラー」等のよく分からない文言が堪りませんね。
(natalie.muより引用)

原題の「HOUSE」がなぜ「ガバリン」になったのでしょうか。ゴブリンをネイティブに発音したガバリンが耳心地が良いからとかそんな理由なんですかね。

パズルの要素は全然感じなかったんですけど、どうなんでしょう。(natalie.muより引用)

◇ベトナム戦争帰りの売れっ子ホラー作家のロジャー。彼は叔母の屋敷を相続することになったのだが、叔母曰くその屋敷は呪われているらしく、過去にはロジャーの息子•ジミーが行方不明になっており、相続するきっかけになったのもその屋敷で叔母が自殺をしたからだった。息子を失い、さらには離婚をしてひとりぼっちになったロジャーはスランプに陥っており、心機一転この屋敷でベトナム戦争の実体験を元にした新作の執筆に励んでいた。しかしそれからというもの、ロジャーの身の回りで不可解な現象が立て続けに起こるようになる。次第に彼は霊が自分に憤慨していると感じるようになり、自身の過去と向き合うことになる。

という流れになっています。

屋敷に移り住んだロジャーが様々な心霊現象に見舞われていく様子がこの作品の見どころのひとつです。
屋敷に現れる幽霊というかモンスターの造形が今見るとかなりチープなんですけど、どこか味わいがあってこういう手作りの感じって今はもう見られないよなぁと少しさみしく思います。

ロジャー(右)とモンスターみたいな外見の幽霊
(ktv-smart.jpより引用)

ベトナム戦争時代のロジャーのある行動を咎めるために幽霊たちは現れるようになり、別れた妻に化けたり、過去(ベトナム戦争)にタイムスリップさせられたりとロジャーを散々な目に合わせていきます。

流れだけみると少々ロジャーが可愛そうにも感じますが、これをロジャー役のウィリアム・カット氏がしっかり笑いに昇華してくれます。

幽霊たちを初めて目撃してからはありったけのカメラを購入してその姿を収めようとしたり、軍人時代のフル装備姿で大暴れしたり、「プラトーン」(’86)のあの有名なシーンのような格好で雄叫びを上げているところをお隣さんのハロルドに目撃されて完全にキ◯ガイだと思われて心配されたり、バラバラにして庭に埋めたモンスターを近所の犬が掘り返しちゃったりとかなりコメディタッチに描かれます。

元妻に化けていたダイエット•デブリン
このあとロジャーによってバラバラにされて庭に埋められます。(tv.apple.comより引用)

心霊現象も先述したような幽霊たちが襲って来る以外では、大量の刃物が飛んできたりと命に関わるものもあれば、カジキマグロの剥製がビチビチ跳ねるだけという“怖い”というよりかはどこか滑稽なものまであり、見ていて飽きがきません。

そして物語後半ではこの心霊現象の数々がベトナム戦争時代の同僚•ベンの悪霊の仕業だったことが明らかになります。あの時ベンは戦闘で致命傷を負い、たまたま近くにいたロジャーに一思いに殺してくれと懇願するも、ロジャーは助けを呼んでくるとその場を後にしてしまいました。ロジャーたちが駆けつけた頃にはベンはベトナム兵に拉致されており、凄惨な拷問の末に命を落としたのでした。

ジミーと悪霊となったベン
(justwatch.comより引用)

ぶつけようのない怒りでロジャーを一方的に恨んでいたベンは悪霊となって屋敷に住み着き、ジミーを誘拐した張本人でもありました。

クライマックスではそんなベンとロジャーが屋敷を舞台に大立ち回りを繰り広げ、なぜか屋敷の外に急に現れた崖にロジャーが落とされそうになったりと色々ありながら最後はベンの体内にぶち込んだ手榴弾が大爆発して見事撃破!ようやく本物の元妻も駆けつけて再び家族が揃うという大団円で幕を閉じます。

相当面白い今作ですが、先述した通りストーリーにおいて気になるところがいくつかありまして

そもそも叔母さんから「この屋敷はヤバいわよ」と前々から言われており、実際にその屋敷で息子が行方不明になって、さらには叔母さんもそこで首吊り自殺をしているにも関わらず、「相続したから住んじゃおう」となるロジャーのメンタルが信じられません。

そして、今作におけるロジャーの相棒とも呼べる存在のご近所さん•ハロルドはコメディリリーフとして大活躍するんですけども、彼も彼で間が悪かったり、おせっかいだったり、中々にイカれた行動を取ったりもします。特に一番強烈だったのが、軍人の格好をしたロジャーを見て、気が狂ったのではと心配したからとはいえ、勝手にロジャーの電話帳を失敬してロジャーの元妻(売れっ子女優)に連絡したり、個人的に電話番号を聞いたりするのは少々引きました。もちろんコメディ描写なので面白いんですけどね。

モンスターは結構気持ち悪いです。(moviewalker.jpより引用)

さらに、ベンによって異次元に連れ去られた息子のジミーはベトナム戦争がまさに繰り広げられている森の中で檻に入れられた状態でロジャーに発見されます。ロジャーが洗面所の鏡の中にあった異次元に自ら入り、タイムスリップをしてベトナム戦争時代に行ってようやくジミーと再会するわけなんですけども、行方不明の間(おそらく数年)ジミーはずっとこの檻に入れられてたんでしょうか。服などは汚れていないけど見た目は行方不明の時のままで年も取っていなさそうなので色々と気になってしまいました。

気になる部分をいくつか挙げてしまいましたが、これらを気に止めさせないくらいのスピードで勢いよく展開していくので正直見ている最中は全然引っかかりませんでした。見終わってつらつらと感想を書いているとふと「あれって何でああなったの?」と浮かんでくるんですけど面白ければ全然良いんじゃないでしょうか。

あと余談ですが、今作はMSK1にて「魔性の館 ガバリン」というタイトルでパソコンゲームとしても販売されていたようです。

MSK
「2倍速データレコーダ内蔵」の字体が川口浩探検隊を彷彿とさせますね。(suruga-ya.jpより引用)

☆この度ホームページを開設しました!
もしよかったら覗いてやってください。

渋谷裕輝 公式HP↓


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