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冒険家マークと学ぶローマ帝国史 第2回


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さあ、エウボイア島からトロイアへと出港したアカイア軍一向は一体どうなったのだろうか?今回は彼らのその後を見てみよう!

お、今、目の前で何のコインを見てるかって?まあまあ、焦らなくても後で紹介するさ。ローマで発行されたデナリウス銀貨だけど、詳細は後ほど紹介するよ。


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トロイアへと上陸したアカイア軍だったが、トロイアの屈強な城壁を陥落させることができず、制圧に難航していた。両者の攻防は、ほぼ互角であり、気付けば10年の歳月が経過していた。アカイア連合軍の戦士たちは疲弊し切っており、既に限界に達していた。みな故郷に帰って家族に会いたいと熱望し、不満から結束力も落ちてきていた。

毎日のように若い戦士たちが散っていく様子を見て、上官たちも早く戦いを終結させなければならないと焦っていた。そこで、人々はイタケ出身の王オデュッセウスに助けを求めた。オデュッセウスは天才的な戦略家であり、彼に作戦の指揮権が託された。思い悩んだ果てにオデュッセウスは、木馬作戦を提案した。

トロイアの木馬&マーク-cutout

この作戦はアカイア連合軍が撤退した振りをするものだった。一度海岸から全ての戦艦を引き揚げさせ、そして、敗北の貢ぎ物として巨大な木馬をトロイアに捧げる。素晴らしい貢ぎ物としてトロイアは城壁の門を開け、これを中に入れるが、この木馬の中には実は大勢の戦士が息を潜めている。周囲が寝静まった夜間に戦士らが外に出て、一気に街を制圧するという作戦だった。

オデュッセウスのこの作戦に全てを賭け、アカイア連合軍は作戦を決行した。アカイア連合軍の全艦隊が海岸から出港し、巨大な木馬を残して地平線の向こうに消えた。昼間になっても静かで攻めてない来ない状況をトロイアの人々は当然不思議がった。そして、彼らが城壁から外を見回してみると、そこには誰もおらず、巨大な木馬が置かれているだけだった。この木馬を不審に思う者もいたが、審議の結果、縁起の良い戦利品として受け取ることになった。これがトロイア戦争におけるトロイアの最も大きな過ちだった。

トロイアの人々は勝利に歓喜し、その日の夜は宴を開いた。たくさんの酒が振る舞われ、酔っ払う兵士たち。飲み過ぎたトロイア兵たちは深い眠りに落ちていった。深夜になり、宴が終わって周囲が寝静まったタイミングを見計らったオデュッセウスは、突撃の合図を出した。木馬をぶち破って外に飛び出した戦士らは、眠りこけるトロイア兵を襲い、あっという間に街を制圧した。

トロイアの人々が異変に気付いた頃には、もう全てが遅かった。王族たちはパニックになり、逃げ惑うもアカイアの戦士に捕まり、斬り付けられていった。トロイアの王プリアモスも、王子パリスもここで絶命した。だが、王族の一人アイネイアスは老齢で身動きが取れない父アンキセスを担ぎ、息子とアテナの神像を持って城の裏口から命からがら脱出していた。

ここで、このトロイア陥落の様子を描いた古代ローマコインがあるので紹介しよう。

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図柄表:ウェヌス
図柄裏:アイネイアスとアンキセス
発行地:ローマ共和国アフリカ属州カエサル軍駐留基地内臨時造幣所
発行年:前48年〜前47年
発行者:ガイウス・ユリウス・カエサル
銘文表:-
銘文裏:CAESAR(カエサル)
額面:デナリウス
材質:銀
直径:17.0mm
重量:3.7g
分類: RCV I 1402、RSC12、BMC RR31、Cohen12 (2f.)、CRR1013

分類に明記しているアルファベットと数字は、コインカタログの省略名称と掲載番号を示しているよ。コイン入門者は、このアルファベットと数字が何を示しているのか意味不明で戸惑うよね。でも、この資料番号とも呼ばれるナンバリングが非常に重要で、コインメモやサイトにこの情報が記載されていれば、そのコインを掲載しているコインカタログの情報にアクセスできる便利なものなんだ。

本貨は、ガイウス・ユリウス・カエサルが発行したデナリウス銀貨。行軍中のカエサル軍が形成した駐留基地内の臨時造幣所で発行され、軍の兵士らへの給与支払い、物資調達などの必要経費のペイメントに使用された。ガリア戦争でガリア人から奪った巨万の富と戦利品を利用してこの銀貨を打たせた。

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身体が不自由で盲目の父アンキセスを担ぐアイネイアスが描かれている。アンキセスは美と愛の女神アフロディテ(ウェヌス)との間にアイネイアスをもうけた。女神との一夜は口外してはならないとの約束だったが、ある日アンキセスは酒に酔った勢いで、そのことを話してしまう。彼は罰として雷神ゼウスの雷を浴び、その後遺症で身体が不自由になり、盲目になってしまった。

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本貨はトロイアから脱出するアイネイアスとアンキセス親子を描いており、ギリシア神話をローマ人が継承していることが窺える興味深い一枚である。さらに、カエサルは自身の先祖をアイネイアス及びウェヌスと自称し、政治活動に利用した。

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亡命したアイネイアスらは、トロイアから対岸のトラキアに渡り、その後、エーゲ海を南下してクレタ島に上陸し、それから西へ進んでペロポネソス半島に向かった。その後、シチリア島に渡るが、ここで父アンキセスが没した。アイネイアスの亡命の旅はまだ続き、彼はついにイタリア半島に上陸した。だが、南部イタリアは豊かな地であり、既に先住民が牛耳っていて、定住が叶わなかった。そこでアイネイアスはイタリアを北上し、まだ開拓されていない湿地帯を拠点とすることにした。不衛生な沼が多い湿地帯は、人々から避けられていたが、亡命してきた身としては仕方なかった。だが、アイネイアスはこの地に永住し、繁栄を謳歌した。そして、ラティウム地方と呼ばれるこの一帯に彼の末裔がアルバ・ロンガ王国を建設した。

それから約500年後、アルバ・ロンガ王国の王女レア・シルウィアがウェスタ神殿の階段で軍神マルスと結ばれ、ローマの建国者となるロムルス、そして弟レムスの双子を身籠ったのだった____。


To be continued...


Shelk 詩瑠久🦋

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