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2021年上半期ベスト映画 10

例年は上半期のみだと5本を選出するのだけど、今年は邦画ウォッチャーとしてはとんでもない当たり年なので、上半期で10本紹介しないと気が済まない。去年の公開延期作品とかもあるでしょうし、下半期も期待が膨らむ。


10位 ヤクザと家族 The Family

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「新聞記者」の藤井道人監督作品。ヤクザモノってどこか浮世離れしていて、派手な暴力やドンパチを観る異世界のアクションムービーとして認識していたけれど、この映画は残酷なまでに現実とともに極道を描いていて、時代の移ろいに飲まれ続ける様が鮮烈だった。やはりどうしても怖いし、日常的には敬遠してしまう存在だし、なるべく出くわしたくないし、"反社会"であることに違いない、でも、それでも、という所にまで気持ちが持ち上がっていく作品で、そういう小さな変化がこの先に違う未来を作るのかも、と。


9位 Arc

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「愚行録」「蜜蜂と遠雷」ときてコレ、とは石川慶監督の作風の多彩さたるや、という。不老不死SFという枠組みではあるけど、辿り着くのはこの生命をどう使い切るかという選択と何を大切に想うかという眼差しにまつわる物語で、"人の営み"に辿り着くところは一貫してるのかな。このテーマでやってほしいことを適切な温度感で全部やってくれてて、ノーストレスかつ上品な仕上がりだった。モノクロで映し出される小豆島の風景がすごく現実離れしてて美しかったし、こういう未来感の演出の仕方もあるのか!と驚いた。



8位 花束みたいな恋をした

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坂元裕二脚本、菅田将暉と有村架純主演の恋愛映画。観た者が各々、何かを語らずにはいられなくなるという作用によって大旋風を巻き起こした作品で、自分でも色んな角度から語りすぎた結果、作品としての良さがだんだんぼんやりしてきてしまった印象。それでも忘れがたい名シーンは多く、この映画自体がどこかであったかもしれない記憶として刻まれていたりもする。


7位 JUNK HEAD

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映画監督未経験の内装業者・堀貴秀氏が熱意と執念で仕上げたコマ撮りアニメ映画。途中まで一人で作ろうとしてたと知れば驚愕せざるを得ないほどに精緻に作り込まれている。滑稽かつグロテスクなキャラ造形、血と皮膚と肉を強く感じるモーション、地下へ向かうスリルを伴ったディストピアSFなストーリー。好きなものを複合し、好きな世界を掌から創出する、こんな理想的な在り方がある?デザインは異形だが意外と王道の冒険譚な点も好みだった。三部作構成のため、物語としては途中で終わるのだけど満足感は充分。



6位 あのこは貴族

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山内マリコ原作小説を岨手由貴子監督が映画化。「パラサイト」や「万引き家族」とはまた角度の異なる“階層”のモチーフで、息詰まるような閉塞感とともに凛とした解放感まで描いていてポジティブな強さがあった。自分が生まれた場所の基準でしか世界のことを知れず、その世界のルールでしか生きることができない。一方で、自由であればあるほど不安定な世界を生きねばならない。その“どこへもいけなさ”を脱するために、これほどの痛みが必要な社会とは一体、、?と。せめて心だけは自分のものだけで満たしたいな。



5位 シン・エヴァンゲリオン劇場版

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庵野秀明が手掛けてきた一大巨編の完結作。これを単体の映画として評価するのはすごく難しいのだけれど、連作としての面白さを抜きにしても圧倒的な画の力があったように思う。大人になることを拒絶してきた物語をいかにして終わらせるのか。期待に応えるための切迫感と自信の作家性を追い求めた先に現れた歪だがこれしかありえないと言い切れるエンディング、鳥肌。



4位 くれなずめ

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松居大悟監督が自身の劇団「ゴジゲン」の作品を映画化。高校時代の帰宅部仲間のノリ、その良くも悪くも眉をひそめちゃいそうなテンションで突っ走り始める物語は主人公演じる成田凌の一言で大きく様相を変える。思いこもうとする、忘れないようにする、飲み込んだり消化したりしないようにする、どんな思いだって肯定する、喪失と"大人になれなさ"についての話。



3位 猿楽町で会いましょう

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MVや広告業界でも活躍する児山隆監督の初長編作品。駆け出しのモデルとフォトグラファー、その一見キラキラした青春譚が中盤から急激にべっとりとした不気味さに包まれ、鑑賞中に逃げ出したくなるほどだった。空虚な自分をコーティングし肉体と精神が蝕まれていく、それを当人のキャラクター造形として描くだけでなくそうならざるを得ない現行の社会構造までもある意味公平に描いた観察映画だと思う。更に非モテ側の人間はこういう物語に参入すら許されないことまでも刻んであってとてつもなくグロテスクだった。



2位 街の上で

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恋愛映画の旗手・今泉力哉監督が漫画家・大橋裕之との共同脚本で紡ぐ恋愛と友情と知り合いとそのどれでもない関係にまつわるドラマ。下北沢の街を舞台に出会っては別れ、巡っては残る、そんな流れゆく毎日のことを淡々と綴った1作。上半期の中だと、劇場で声を出して笑った箇所が最も多かった。



1位 すばらしき世界

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西川美和、初の原作つきの長編映画作品。圧倒的な強度がある作品ゆえ、言葉を添えることも意味を為さないと思うのだが、あえて言うならば自分もまた社会復帰を手助けする職業をしている身として、この苦しさともがきは痛切なものとして届いた。信じたい、でも信じられなくなる、ただ今度こそは、と何度も思う。そして辿り着いた先で何が待つか。その景色を、2021年に横たわっている現実として受け止めなければならないこの世界とは、、、と途方に暮れそうにもなる。気づいていないフリをしている場合じゃない。



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