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珈琲の大霊師

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シャベルの1次創作、珈琲の大霊師のまとめマガジン。 なろうにも投稿してますが、こちらでもまとめています。
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2019年4月の記事一覧

珈琲の大霊師181

珈琲の大霊師181

 無限回廊は、現在の見た目のインパクトを得る為に、設計段階からある力を前提として作られていた。

 その力とは、「風の精霊」の力だ。普通に考えたら、砂地と崖を頼りに作られるこの建築物は不安定極まりない。それを、風の精霊使いの力によって力技で各部を押さえつけ、崩落を防いでいるのだ。

 村興しに奔走していたある女に、若き天才精霊使いが惚れ込んだ事からこの無限回廊は始まった。

 精霊使いは、女に自分

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珈琲の大霊師180

珈琲の大霊師180

「やだぞ!俺、負けて無いからな!!」

 完全に包囲された少年は、自らの椅子に座って言い放った。

「殴る?」

 強情を張る少年の前で、再びドロシーが巨大化する。その右腕は、何故かさっきより大きくなっていて、少年の顔が引きつる。

「来るって分かってれば、そんなもん」

「主、相性というものがある。我には防げぬぞ。これは」

「……殴る?」

 今度はドロシーがモカナに聞く。モカナは、苦笑いしな

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珈琲の大霊師179

珈琲の大霊師179

「ルビーさん!?」

 倒れたルビーに、慌ててモカナが駆け寄った。

「へえ。やっぱガキだから、効果が薄いのか?普通なら、もう話せないはずなのにな。まあ、時間の問題か。これで、お前も俺の女だな。はは、はははははは!!」

「ふざけっ……くっ、あっ、ぬぁぁぁぁ!!あぁぁぁ……ぁ……」

 意識が急速にぼやけてくるのを、ルビーは感じていた。そして理解した。シオリも同じように、意識を奪われ自由を奪われて

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珈琲の大霊師178

珈琲の大霊師178

 その頃、ジョージが単独で探索をしていると信じて疑わないモカナほ、必死でシオリを探していた。

 もはや周囲に人影は無く、気配も無かった。それでもドロシーは相変わらず下を指差していた。

 店舗の無いスカスカの階には、風がうねって、進行を妨げる。

「まだまだ下みたいです。うむっ、うう、風強いですね」

 フードがはためいて、モカナの顔に引っ付いていた。

「あはは、面白い顔さぁ!」

 それを茶

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珈琲の大霊師177

珈琲の大霊師177

 昼食を食べ終えた一行は、手分けして珈琲の実を捜すことにした。

 何故かジョージが一人で探す事になり、モカナ、ルビー、シオリが固まって探す事になった。

「男がついてると、警戒して口が堅くなる奴がいるからな。今回、俺は単独行動だ」

 とか言っていたが、それというのも昼食を食べた店の女に何かを囁かれていた事が理由だろう。と、ルビーは当たりをつけていた。

 それに、実際3人でいると声を掛けられ易

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珈琲の大霊師176

珈琲の大霊師176

 一時間ほど人に揉まれながら、上層を回っていると、ふと甘い香りが漂った。

「ふはぁ、良い匂いがしますね~。お腹すいてきました……」

 ぐるるるるきゅーと、モカナの腹が鳴る。それに苦笑して、ジョージはその香りのする店に入る事にした。

 幅広な南国の植物の葉が床一面に敷き詰められた、露店風の内装。甘い果物の香りと、鼻をくすぐる香辛料の香り。

 モカナの勘を打ち鳴らす何かがあった。ここの料理は、

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珈琲の大霊師175

珈琲の大霊師175

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第24章

     奪われる意思

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 太平王国ウーラ。その昔、大陸に覇を唱えた国の成れの果て。多民族の融和をもって成された覇は、民族同士の内戦をもって幕を閉じた。

 しかし、今もその頃のような民族の壁の無い世界を求める者達が、この国には集まってくる。

 現王は、それらの移入希望者達を拒まず、密林を開墾し、

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珈琲の大霊師174

珈琲の大霊師174

「で、あんたはどれにするんだ?」

「あたしは、この地方伝統の空升模様のクッションにします」

 隙だらけに見えたが、抜け目なく自分のものは確保していたらしいシオリが、刺繍で斜めに大きな升目の入ったクッションを掲げる。

「………珈琲が有名になったら、珈琲の豆入りクッションを作らせよう」

 そんな事を呟きつつ、ジョージは狼を模したクッションを手に取り、店主に纏めて支払うのだった。

 ちなみに、

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珈琲の大霊師173

珈琲の大霊師173

「俺とモカナは、買い付けに行ってくる。クッション選びたかったら着いて来い。別に適当に過ごしててもいいけどな」

 朝食を終えた後、モカナの珈琲を飲みながらジョージがそう言った。ルビーとシオリは顔を見合わせた。

「ん~。ここにいてもつまらないし、あたいは着いてくさぁ」

 言ってから、珈琲を一口飲む。ふわりと複雑な香りが体中に満ちるような感覚がルビーの頭をしびれさせた。

「あたしも、一人はちょっ

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珈琲の大霊師172

珈琲の大霊師172

「ふーん、気持ち良いならやればいいじゃないさ」

「だっ!だめだめ!!そういうのは、好き同士の人じゃないとだめなの!……あたしも、よく知らないけど、その、男の人に裸見られるのは、恥ずかしいでしょ?その、裸でそこらへん歩けないでしょ?」

「ん~~~。まぁ、裸は嫌さ」

「それは、恥ずかしいです」

「だから、あたしだってジョージさんに裸なんて見せられないわよ!」

「え?何で裸の話が関係するのさ?

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珈琲の大霊師171

珈琲の大霊師171

 ドバードの南門周辺には、厩付きの宿が集中していた。門を潜った途端に、老若男女の呼び込みが馬車に殺到し、今夜の宿が決まっているかを尋ねてきた為、とりあえずジョージは一番人の良さそうな老人の宿に世話になることにした。

 ジョージの見る目が確かだったのか、老人は手馴れた仕草で馬を操り、古いが温かみのある内装の宿へと一行を案内したのだった。

「それにしても、今回の旅は馬車があって楽ちんですね」

 

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珈琲の大霊師170

珈琲の大霊師170

 がらりがらりと終わりの無い回転を繰り返していた車輪が次第に緩くなり、2頭の白い馬が足を止めると、頑強な門に立つ軽装の衛兵がこちらに近づいてきた。

「用向きは?」

「食料の補給と、宿泊ってとこかな。1泊、あるいは2泊だ」

 自分より若いな……と、相手を値踏みしながらジョージは応えた。

「荷は?」

「ガキ2人に、枯れてる女が一人だ。荷って程のもんは無いな。ま、さっと検めてくれ」

「……い

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珈琲の大霊師169

珈琲の大霊師169

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第23章

     空回る知識

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 幌馬車はアディア連邦の主要街道を北に向かって進んでいた。

「この辺りは、アディア連邦でも数少ない内陸の都市、陸の入り口ドバートの領域ですね。アディア連邦は、海辺の都市が主要になっていて、その沿岸地帯を覆うように宿場町や、砦があるんですよ。その連なった砦の中心が、ドバートで

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珈琲の大霊師168

珈琲の大霊師168

 1週間で準備を終えたジョージだったが、問題となるのは旅に同行する者の選定だった。

 水宮の一室では、ジョージ、モカナ、リフレール、ユルの4人が

「ジョージさんとモカナちゃんは確定として、さすがに2人だけでは心配ですね……。ジョージさん、武力では頼りになりませんし」

「悪いな。まぁ、前回は途中までリフレールに任せっきりだったからなぁ」

「ジョージさんがついていれば、そもそも争いになる事は少

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