珈琲の大霊師172
「ふーん、気持ち良いならやればいいじゃないさ」
「だっ!だめだめ!!そういうのは、好き同士の人じゃないとだめなの!……あたしも、よく知らないけど、その、男の人に裸見られるのは、恥ずかしいでしょ?その、裸でそこらへん歩けないでしょ?」
「ん~~~。まぁ、裸は嫌さ」
「それは、恥ずかしいです」
「だから、あたしだってジョージさんに裸なんて見せられないわよ!」
「え?何で裸の話が関係するのさ?」
「あ、えっと、性交する時には裸でするものだから……。まあ、そうじゃなくてもできるらしいけど」
「あー、そういえば親父と母ちゃんは裸でしてたさぁ」
「うえっ!?ちょ、ルビーちゃん見たことあるの!?」
「当たり前じゃないさ。まあ、同じ部屋で寝てた頃の話さ。なんか、あたいがお腹から血が出るようになったら、ビルカと一緒に違う部屋になったさ。なんか母ちゃんが大きな声出してて、親父があたいに弟と妹どっちが欲しいって聞いたりしてたさ。なんか、めっちゃ仲良さそうで、あたいは放っとかれて詰まらなかったから、たまに邪魔したりしたさ」
「ひいい……王家怖い王家怖い」
「いや、あたいの国じゃ皆そんな感じらしいさ?……そういえば、あたいと喧嘩して勝った奴はあたいと子作りしていいって親父が言ってたさぁ。あたい負けたことないけど。気持ち良いなら、してみりゃ良かったさぁ」
「だめだよ!!そんなのだめだよ!!もっと自分を大事にしてよ!!ルビーちゃんが経験者だったら、あたしもうどうしたらいいか分かんないよ!!やめてよ!!そ、それに最初はすっごく痛いって言うし」
「痛いのなんて、あたい平気だけど?」
ふふんと誇らしげに胸を張るルビー。歴戦の勇士なれば、生傷の耐えない生活をしてきたルビーにとっては痛みとは空気のようなものなのだ。
「うーん、じゃあボクはジョージさんと子供は作れないんですか?」
「へ?……ああ、モカナはまだ血が出てないから、子作りはできないさ。あたいもできるようになったんだから、そのうちできるようになるさ」
「そうなんですか……」
「やめっ!もうこの話やめよう。モカナちゃんも、もっと自分を大切にして!ね?」
「??好きな人同士じゃないと、だめなんですよね?ボク、ジョージさん好きですよ?」
「はうっ!!」
まっすぐ純粋な目で好意を語るモカナが眩しくて、シオリは目を背けるしかなかった。それはあまりに曇りも恥も無い為、男性として好きなのか人間として好きなのかまではシオリには分からなかった。
「えー、でもジョージはやめといた方がいいさ」
「どうしてですか?」
「だって、リフレールとも、ルナとも子作りしてるし」
「そうなんですか?」
「うん。リフレールが煮え切らないから、あたい手伝ってやったんさ。あたいも良く分からないんだけど、大人の男ってのはどんな女とでも子作りしたいらしいんさ。あたいも、幼馴染に押し倒された事くらいはあったし」
「ひええ!?未遂!?未遂だよね!?」
「びっくりして、絞め落としちまったさ。ただ、なんていうか、男があたいを欲しがってるのは、なんか伝わったさ。なんか、お腹が熱くなる感じがして。それは、なんか悪い気しなかったさ。で、なんか最初に子作りする相手ってなんか特別らしいさ。だから、リフレールがジョージの特別になるように二人っきりにしてみたんさ。苦労したさー」
「み、未経験なのにそんな恐ろしい事を……」
恐ろしい恐ろしいと言いながら、シオリの顔は引きつっていなかった。頬に紅が差し、前のめりになって聞いている。
「あたいの親父も、母ちゃん以外の奴と子作りしてるらしいけど、なんか王族の特権だって親父も言ってたし。子作りするにも、相手が何人もいる奴より相手がいない奴の方がモカナを大事にしてくれそうさ」
「そっかぁ……。うーん、ボク想像できないや。ボクに、子供ができるなんて」
「そんなの、あたいだってそうさ」
話の筋がズレ始めた事に今更気づいたシオリが、軌道修正を図ろうとコホンとわざとらしく咳をする。
「えーっと、あのね。性交が気持ちいいのはさっき言ったでしょ?特に男性は簡単に気持ちよくなれるの。だから、気持ちよくなりたくて男性の中には相手の気持ちなんて考えないで無理やり性交しようとする人がいるの」
「ああ、あたいの幼馴染みたいなのさ?」
「まぁ、うーん。そう、かな。とにかく、そういう男性がいるの。でも、無理やりされても女性は気持ち良くなれないの。むしろ、痛いし、本来好きな人とだけしたいものなのに無理やりそういう気持ちを奪われる事になるのね?こういう、互いの同意無しにする性交を強姦っていうの」
「へえ。まあ、ただ痛いのは嫌さね」
「でね、その、ジョージさんだって男性でしょ?だから、無理やりしたくなる時だってあるかもしれないじゃない。あたし、力無いし、もし無理やりされても抵抗できないのよ。だから、一緒の部屋に泊まるのは怖いの」
「ふぅん?あんたがジョージとせーこーするのが嫌だったら、あたいがジョージぶん殴って止めてやろうか?」
「ジョージさん、男の人なんだよ?女の子が勝てるはずないじゃない」
「へ?あたいが、ジョージに負けるって?あはははははは!!それ、何の冗談さ!」
「え?え?」
「あたい、腕相撲してもジョージに一回も負けたことないさ。まあ、モカナじゃ勝てないだろうけど、あたいはツェツェで親父の次に強いんだよ?ひょろいジョージに負ける理由が無いさ」
「そ、そうなの?」
「……それに、今考えたけど、ジョージはあんたを襲ったりしないさ」
「どうしてそう言い切れるの?」
「男って、美人な程子作りしたいらしいじゃないさ。ジョージは、数ヶ月、あのリフレールと一緒に旅をしてたのに、全然そういう事しなかったのさ。リフレールは、遠まわしに誘ってたのにさ」
「……え、リフレールって、あの凄い美人のお姫様?」
「そうさ」
「………うん。分かった。なんか、今すごく安心したよ」
あの美人が相手にされてなかったのに、こんな自分が対象になるはずがない。
そう確信したシオリは、その後気まずそうに入ってきたジョージに、平身低頭して謝ったのだった。
それでも、ベッドは窓側からジョージ、モカナ、ルビー、シオリと最も遠い配置にしたのであった。
翌朝、遠くの鶏の声で目が覚めたシオリは、珍しいものを見た。
ドロシーが、窓の外を眺めているのだ。見ると、モカナも、ルビーも、ジョージも誰も起きていないのに。
ただ、真っ直ぐ窓の向こうの空を見つめていた。その様子は気になったが、一度気絶させられた事があるシオリは単独での接触を避け、二度寝を試みるのだった。
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