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短編小説

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短編の小説を気まぐれに投稿します。
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#ショートストーリー

【短編小説】ランドセル

【短編小説】ランドセル

初めて君に会った時、
君はまだまだ小さくて、
慣れない仕草で僕を担いでた。

色んな人が写真を撮ってたね。

君は大きくなるにつれ、
僕を投げたり、枕代わりにしたり、
乱暴に扱った。

けど、友達が僕にイタズラした時、本気で怒ったね。

僕の為かな。
それともおじいちゃんおばあちゃんの為かな。

6年も毎日一緒に過ごしたんだ。
やっとお休みもらえるのに、少し寂しいな。

4月からは学ランだもんね。

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【短編小説】俺の大好きな人

【短編小説】俺の大好きな人

俺の名前は夏生。
今日の目覚めは気持ちいいほどだ。
朝8時なのにリビングの窓から差し込む日差しは強い。
お天道さんはすでに仕事を始めている。
毎日みんなのためにせっせと働き、えらいと感心してしまうほどだ。
季節の中でこの感じを味わえる夏が1番好きだ。

朝起きたらまずやること、それは楓を起こすことだ。
寝室に向かい楓を見るとお腹を出して寝ている。なんて可愛いやつだ。
朝から大好きな人の可愛いさを独

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【短編小説】自慢の上司

【短編小説】自慢の上司

「明暮くん、メールの一つも作れないの?」

壁は黄ばんで所々にヒビも窺えるオフィスの空気は、真夏にも関わらず一瞬で凍てついた。
あまりの唐突さに自分の胸にジャックナイフが刺さっていることさえ認識できなかった。
脇からは一筋の汗が垂れ、白いワイシャツに辿り着くと、吸い尽くされた。

「すいません。すぐ直します」
出社一日目は最悪の形で幕を開けた。

家に帰って黒の戦闘服を身に纏ったままベッドに倒れ込

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【短編小説】1+1=2の理由

【短編小説】1+1=2の理由

教室の窓から見える地球を覆う程大きい空は今日もご機嫌。
大好きなママとパパにハグをしてもらった時と張り合うぐらいにだ。

『今日もご機嫌だね』

そんな言葉を心の中でかけてあげていた。

なんの反応もしてくれない空、
唯一反応してくれたのは先生ぐらい。

「授業に集中」
当然先生はお呼びではない。
授業中に空を見ていたのにはちゃんとした理由がある。

ぼくは今、疑問を持っているのだ。
それは算数の

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【短編小説】UNO

【短編小説】UNO

「ご飯も食べたことだし、みんなでUNOやろうぜ!」

「やるやるー、けんちゃんもやろー?」

「おっ、久しぶりだ!奏と律、僕は強いから覚悟するんだぞ!」

「俺友達と学校で毎日やってるから負けないもんね」

「奏、この前怒られてたよね」

「おいっ、それは言わないって約束だろ!」

今日は大晦日。
私の実家に旦那の鍵(けん)と一緒に帰省している。
奏(かなで)と律(りつ)は姉の子供である。
2人と

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