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小説

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#短編

彼の決意は壊せない -砕かれた【黄金比】-

彼の決意は壊せない -砕かれた【黄金比】-

 ――さあ、今日も『勉強』だ。
 グラバールで、かつて『天才』と呼ばれた蒸気機関技師、アルトゥ・シャオンは、工具を手に取った。

 青い空から暑い日差しが降り注ぐ。天気は快晴だった。
 朝、アルトゥは家を出て、アルフライラ郵便公社へと向かっていた。カバンのなかには《手紙》ではなく、彼自身が愛用する工具が入っている。普段は特務局員の一員として局内を出入りしているアルトゥだが、今日の目的は別にあった。

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アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『【代贈】ホワイトメッセージ-降り積もる真白な想い-』/『三太翁と六人の弟子』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【代贈】ホワイトメッセージ-降り積もる真白な想い-』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

子供たちにプレゼントを贈るという、クリスマスっぽいノベルです!
どういう展開にしようかな、と考えながら、色々楽しく書かせていただきました。
おまけノベルとして、『三太翁と六人の弟子』も納品いたしました

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安らぎの場所 -小さな故郷-

安らぎの場所 -小さな故郷-

 大陸横断鉄道の列車から見える街並みの景色が、少しずつ東方系の色を帯びてきていた。
 ――帰ってきたな。
 ルーシン ウェイは故郷に近づくにつれ、顔の緊張がほぐれていくのを感じていた。普段は気づかないが、外の世界にいると、やはりどこか身体に力が入ってしまうものなのだということを、自覚させられた。
 アルフライラ北東区、イェンルー老街。その近くの小路にある、小さな商店。ここが、ルーシンの実家だった。

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アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』にノベルを納品しました(『ガラスの檻から連れ出して』/『ガラスのなかの心』)

先日、アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『ガラスの檻から連れ出して』

千梨/東京インソムニア/(C)アルパカコネクト

いくつか描写したいシーンが思い浮かんだので、どれにしようか悩みながら執筆させていただきました。
おまけノベルとして、『ガラスのなかの心』も納品いたしました!

記憶の波、揺らす蒼海(わだつみ)

記憶の波、揺らす蒼海(わだつみ)

 常夏の都市、アルフライラ。なかでも「南のリゾート地」とも称される、南東区。ナーディルは、特務局員エージェントの訓練兼、配達部の手伝いで、この地区の海岸近くにある邸宅へと訪れていた。
「ありが、とう」
 《手紙》の受取人からサインを貰うと、まだ慣れない、たどたどしい公用語で、ナーディルはお礼の言葉を述べた。
 一通り配達が済んだ後、仕事の報告をするために分局へと戻ろうとしたが、ふと、出発前の上司の

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アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』にノベルを納品しました(『【ハロパ】重ねた心、思い出ひとつ』)

先日、アルパカコネクトPBW『東京インソムニア』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【ハロパ】重ねた心、思い出ひとつ』

千梨/東京インソムニア/(C)アルパカコネクト

アルパカコネクトさまのワールド『東京インソムニア』にて、初依頼をいただきました!

6人合わせでの納品でした!  ハロウィン・パーティのお話。
中盤はドタバタ感やコメディチックな感じで。
キャラクターの仮装イラス

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アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『【ゴンドラ】芸術が結ぶ《縁》-中央区ゴンドラ遊覧-』/『交錯する想い -芸術祭開催に向けて-』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『【ゴンドラ】芸術が結ぶ《縁》-中央区ゴンドラ遊覧-』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

今回はキャラクター四人分を描写したノベルになりました!
それぞれのキャラクターが上手く描けていたら幸いです。
ゴンドラは優雅で良いなと思います。自分も乗りたいです。
おまけノベルとして、『交錯する想い

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アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』にノベルを納品しました(『青い鳥のスーベニア』/『青い鳥のダンケシェーン』)

先日、アルパカコネクトPBW『ホワイトレター』のノベルを納品し、公開されました。

納品ノベル『青い鳥のスーベニア』

千梨/ホワイトレター/(C)アルパカコネクト

キャラクターのかわいらしさを上手く表現したい! と思って執筆してみました。ほのぼのとした日常を感じていただければ幸いです。
また、おまけノベルにて、本編の後日談『青い鳥のダンケシェーン』も公開されています! そちらも合わせてチェック

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BARD――世界は囁く(前編)

BARD――世界は囁く(前編)

 それは今日のことか、昨日のことか、明日のことでありましょうか。
 とある小さな村に、バードという名の娘が暮らしておりました。
 バードは、風や木や虫たち、その他様々なものと話をすることができる娘でした。川の楽しそうな笑い声、土の優しい子守唄、星たちとの秘密の内緒話。他の村人たちが知らないことを、世界の神々の囁き声から知ることができました。
 時には神様たちの話を皆に伝えることによって、村人たちを

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紅(くれない)に水くくる

紅(くれない)に水くくる

「はぁ……やっぱり綺麗だなあ」
 様々に色づくもみじと穏やかな川の流れを見て、私はため息をついた。秋の山の暖かい色は、こっちまで気分を上げさせてくれる。それは私の名前が、くれないの葉――つまり、漢字で「もみじ」と書いて「くれは」と読ませるように付けられたので、もみじそのものに親近感を得て育ったせいなのだろうか。
 昔から私はもみじが好きだった。夏に育った瑞々しい青い葉が、秋になると赤やオレンジ、黄

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