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世界級「スーパー18歳」の見果てぬ夢。車いすテニスの小田選手。全仏大会シングルスを連覇。今年のパラリンピックで「レジェンド超え」の2冠を狙う

この若者に贈る称号は世界級「スーパー18歳」だろう。車いすテニスプレーヤーの小田凱人(ときと)選手だ。パリで行われた全仏オープンテニスの車いすシングルスで連覇を達成した。めざす目標はパリのパラリンピックでの単複2冠だ。「レジェンド」にも成し遂げられなかった快挙をスーパー・ハイティーンが狙っている。

パリのローランギャロスで開催のテニス全仏大会。車いす男子シングルスで小田選手が優勝を成し遂げた。全4試合を1セットも失わずに頂点に輝く完全優勝。昨年に続いての連覇達成だ。

第1セットの第4ゲームでは、相手の浅い返球に対して、車いすをクルリと一回転させて強烈なスマッシュを打ち込んだ。

強いだけでない。観客を魅了するエンターテインメントにも長けている。「ただポイントを取るだけじゃなくて、大道芸みたいなテニスをしたい」と振り返った。小田選手はオンライン形式の高校で学ぶ18歳。若者はワクワクしたい。それがプレーにも表れるのだ。

この優勝で全仏優勝2回、今年の全豪、昨年の全英と、小田選手は四大大会で4度目の優勝を果たした。

今大会では三木拓也選手とのペアで臨んだダブルスでも決勝に進出。自身初となる四大大会2冠をめざしたが、こちらはあと一歩及ばず準優勝だった。

小田選手はシングルス優勝後、表彰式のスピーチで「数か月後にパラリンピックで帰ってきます。またすぐ会いましょう」とあいさつした。

小田選手の名前「凱人」は名前の由来はパリの名所にもなっている「凱旋門」だ。8月末にパリで開幕するパラリンピックに、小田選手は初めて挑む。

狙うのはシングルスだけでなくダブルスを含めた2つの金メダルだ。達成できれば「レジェンド超え」となる。

レジェンドとは、テニスの四大大会車いす部門で単複計50の優勝を成し遂げた国枝慎吾さんのこと。小田選手は国枝選手の試合動画をきっかけに車いすテニスを始めようと決意した。国枝さんは小田選手にとって「師匠」的な存在でもある。

パラリンピックでは1大会でのテニスの単複金メダルは、国枝さんだけでなく、誰もなしえたことがない。その偉業に向けて、小田選手はさらなる進化を遂げている。

パラリンピックの起源は、1948年にイギリスで行われたストーク・マンデビル競技大会と言われる。この時は戦争で負傷した兵士たちのリハビリテーションとしての意味合いが強かった。

1960年にローマで行われた第1回パラリンピック以降、障害者スポーツは目覚ましい進化を遂げている。もはやリハビリの目的を越えて、アスリートによるハイレベルな戦いが繰り広げられている。

小田選手のように、勝敗だけでなく、魅了するプレーにこだわるプレーヤーも登場した。

「スーパー18歳」は8月のパリの地で、金メダルを手にすることができるだろうか。単複2冠の夢。小田選手の飛躍する姿を待ちわびている。

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