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彼、もしくは彼女について

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うつくしく、たくましいひとびと
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#随筆

恋人の妹の話

恋人の妹の話

好きなひととのお付き合いが長くなると、相手の家族と会う機会も自然に増えていく。

彼を守り育ててくれたご両親にお会いするというのはやっぱり一大イベントだけど、好きなひとに兄弟姉妹がいると、よりおもしろい。

好きなひととともに育ってきた、親とはまたすこし異なる存在。

もし兄弟姉妹がいるならば、よくもわるくも、互いに影響を与え合っていないわけがないから、私は知っているひとのきょうだいを見かけるとい

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黒いラブラドール・レトリバー

黒いラブラドール・レトリバー

一昨日の朝6時過ぎ、バイトへ出かけていくとき、犬と散歩している男のひとを見かけた。

犬は普段からよく見かけるけれども、その日見た犬は黒いラブラドール・レトリバーだったから、犬と男のひとの横を通り過ぎるときに思わずじいっと見入ってしまった。

すると真っ黒な犬も、てくてく歩きながらじいっと私を見てきた。私たちは初対面なのに互いをじろじろ眺める、不思議な人間と犬だったと思う。けれどあの子が私の方を見

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胸元に咲いた、その赤い花を

胸元に咲いた、その赤い花を

3月を迎え、風が春色になる季節になるとふわりと思い出すことがある。私が中学生のとき好きだったひとのことだ。そのひとは同じ吹奏楽部の先輩で、私よりひとつ年上だった。

彼を好きになったのは、彼が私の楽器を運んでくれたのがきっかけだった。

私が担当している楽器はコントラバスだった。

コントラバスは152cmの私の身長よりも大きな弦楽器。そのほとんどが木でできており、しかも中は空洞なのでさほど重たい

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中学のときの同級生の話

中学のときの同級生の話

もう昨年のことになってしまったけど、中学のとき同級生だった男の子が入籍したという話を友人との電話で聞いた。

私がちゃんとかかわったことがある同級生の中で結婚した人物は彼が初めてだから、友達から話を聞いたときはすごく驚いた。

「ええっ、結婚したんだ!」
と思いつつ、おめでたいことだと素直に思えたのは、私がまだ若くて何も焦っていないということ、さらに同級生の彼がそう思わせるような人柄を持っていたと

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