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ぼんやりした不安を分解する


「ぼんやりとした不安」には、「自己連続性(Self-Continuity)」が関与していると心理学では考えられている。それは個人が時間や状況が変化しても、自己の同一性や個性を維持し続けることができる能力のことを指す。

自己連続性は、自己の過去、現在、そして未来についての感覚的なつながりを維持することによって実現される。自分自身が過去や未来においてどのような存在であったのか、現在もその存在を維持しているのか、そして将来においてどのような存在になりたいのかという自己像を持ち続けることによって、心理的距離が近い、または遠い、と表現される。

たとえば「3年後の自分を想像してください」と言われて想像したとき、どんな像が浮かぶだろうか。今と変わらないぐらいの存在感を持った存在であるなら、未来との心理的距離は近く、もし検討もつかないようなら心理的距離は遠いと考えられる。

このように心理的距離が近い人、つまり「自己連続性が高い」人は、自分が過去や将来の自分とつながっていると感じ、自分自身を一貫性のある存在と認識する。

スタンフォード大学のブライアン・ナットソン教授によると、自己連続性が高くて自分自身に一貫性を見出せる人ほど不安に強くセルフコントロール能力も高いのだという。つまり未来の自分の身になって考えられるということで、現在の決定が未来に及ぼす影響を実感できやすい。

それは例えば、未来の成功を信じて現在の努力ができる、あるいは未来のために今、酒やタバコ、ギャンブルなど害になるものをやめることができる力であって、つまるところ、現在の決定が未来におよぼす影響を実感できるよう実際に、行動できる力を表す。

「3年後の自分がどうなっているか想像もつかない」よりも「自分はこのように生きているだろう」という価値観や意味、あるいは信念を持っている人には「ぼんやりした不安」は起こりにくいのはうなづける。

さらに自己連続性が高い人はそうでない人よりも25%も高い平均収入を得ているとの研究結果が出ている。

この自己連続性が高いということと、その人が将来にむけて持つ「不安感」が低いことの関係性について少し考えてみた。

それは一体なぜなのか。

そこには人生に対しての強い意味あるいは一貫した価値観を持っていることと関連しているようだ。

価値観とは一般的に、何を大切と考えるか、どんなことにより重い意味を持たせるかということにに表される。価値観が合う人たちは、共同事業が成功しやすいし、その関係も長続きしやすい。

もしも人生の意味があやふやで、価値観が定まっていなければ、あいまいな将来は私たちの中で明確な像を結ばなくなる。そして結果として未来との心理的距離は遠くなり、そこには霧がかかったような、ぼんやりとした不安が残る。

ここで大切なのは、自分の人生でどのように行動したいのかを自問自答し続けるその過程であって、それは人生の意味や価値観と切り離せない。

ではどうすれば、よいのか。

自己連続性を高めるためにまとめられたジョンホプキンズ大学の報告によると、次のような方法がある。

  1. 自分自身のストーリーを作り上げること:自分の人生についてのストーリーを作り上げ、自分が過去や未来の自分とどのようにつながっているかを明確にすること。

  2. 記憶を振り返ること:自分の過去の出来事を振り返り、自分自身がどのように成長したかを見つめ直すこと。自分自身の過去と向き合い、自分が過去と現在の自分と繋がっているという実感を持つこと。

  3. 人生の価値や意味について考えること:簡単な記録または3行日記をつけることで、自分の価値観を見直すこと。

  4. 瞑想やマインドフルネスなどの実践:瞑想やマインドフルネスなどの実践は、自己連続性を高める上で有効。自分自身に意識を向け、現在の自分自身に集中することで、自己肯定感を上げる。

  5. どうなりたいかについて探求すること:将来についての自分自身のビジョンを明確にすることが、自己連続性を高める上で重要。自分自身が目指すべき方向性を決めることで、自分自身が現在の自分と将来の自分とつながっているという実感を持つこと(これは後述しているので参考まで)。

昔のように社会の価値観が個人の上に大きくのしかかってきた時代と違い、現在では、働き方、結婚、出産、などすべてのことに価値観の分散化とブレがある。そんな中では、自分の価値観を確立する事は難しいし、近い将来のことについても、決定できないもどかしさがある。

だからこそ、今の自分と未来の自分をつなぐ太い綱が必要で、それは毎日のプロセスから積み重ねられるのだ。

夜眠る前のリラックスした状態で、仕事、家族、趣味、パートナーシップなどそれぞれの分野で、自分はどんな人生を送りたいか、ランダムに書き出すという作業をすると、隠れていた感情や意思が表面に浮き上がってきやすい。

その浮き上がってきたところをグイとつかまえて、自分が「今すること」「今したいこと」に落とし込んでいく。

そしてそのプロセスを毎日のライフワークにすること。手帳に書いて何度も見直すなどの地道な行動が、進んでいく方向を、少しづつ上向きにしていく、というのは確かに納得できる。






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