生理を「ガマン」しないコツと生き方

2022年6月1日 07:00

辛い生理痛、ガマンしていない？
10代～50代の女性を対象に行われた調査では、各年代で8割以上もの女性が生理痛があると回答した。このように多くの女性が悩んでいる生理痛には、日常生活に気をつけるだけで軽減するものと、病気由来できちんと治療しなければならないものとがある。

原因によって「機能性」と「器質性」に分けられる生理痛

生理痛はその原因によって「機能性月経困難症」と「器質性月経困難症」に分けられる。

　　東京医療保健大学和歌山看護学部看護学科の福山智子教授によると、「機能性月経困難症」とは、子宮や卵巣の機能が成熟していないために起こるもので病的な原因はないとのこと。成熟に伴い症状は年齢と共に落ち着いていくことが多く、セルフケアで緩和することも可能と言われている。

　一方、「器質性月経困難症」は病的な原因が背後にあるため、産婦人科を受診し適切な処置を受けることが必要。子宮や卵巣が成熟した30代以降に多くみられる。

機能性月経困難症と器質性月経困難症の見分け方

　機能性月経困難症と器質性月経困難症は、痛みの出るタイミングでおおよその見当をつけることができる。

機能性月経困難症：

月経開始の12時間前から、月経が始まって48時間程度までの周期性の痛みが特徴的。

器質性月経困難症：

月経期間中継続して痛みがあるという特徴がある。もっとも多いのは、子宮内膜症。放っておくと悪化して将来的に不妊の原因となる可能性もある。子どもを持ちたい持ちたくないにかかわらず、いち早く産婦人科を受診することが大切。

そのほか痛みの場所も判断材料になる。「どの辺りにどのような痛みが出たのか」記録を取ること。福山教授によると、月経痛で産婦人科を受診した人のうち半分は機能性月経困難症。残りの半分は器質性月経困難症だそうだ。受診してどちらの月経痛なのか医師に見極めてもらうことが大切。

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機能性月経困難症を緩和する正しい対策法

鎮痛剤を正しく服用して和らげる

鎮痛剤を服用し痛みの原因であるプロスタグランジンの分泌を抑える。数ある鎮痛剤のうち、プロスタグランジンの分泌を抑えてくれるのはイブプロフェンという成分のもの。同じ鎮痛剤でもアスピリンやアセトアミノフェン（カロナール）は、月経痛にはあまり効果を発揮しない。

さらに痛みが強くなってから鎮痛剤を服用しても、その時には血中にたくさんのプロスタグランジンが分泌されているため痛みを抑えることはできないので、痛みが強くなりそうなときは前もって服用してくことが大切。

湯舟に浸かって体を温める

体の冷えは月経痛を悪化させてしまいます。シャワーだけではなくきちんと湯舟に浸かってください。その際は清潔な一番風呂に入りましょう。浴槽内では水圧がかかるため経血が漏れ出てくる心配はありません。タンポンなどはつけずに入浴が可能です。浴槽の淵をまたぐ際に腟に力を入れておけば、お湯に経血が落ちることも防げます。

夏でも体を冷やさない

夏の冷房には気をつけて。体を冷やさないようにすることが、生理中は特に大切。冷えが気になる秋冬は湯たんぽやカイロ、体に巻きつけるタイプの電熱ウォーマーの活用も有効。

さらにケミカルナプキンは濡れたものを膣まわりの粘膜に密着させるので、下半身の冷えのもとになる。おすすめなのは「スクーンカップ」月経カップ。体を冷やさず、経血が空気に触れないため生理特有のニオイもない。

体を締め締めつけない

月経の時、ナプキンがずれたり経血が漏れないようにきつめの下着やスパッツを着用する女性が多くいるけれど、これはより血液循環を悪化させ、月経痛の悪化に繋がる。月経痛を穏やかにするには、締めつけのゆるい下着の着用がおすすめ。「スクーンカップ」月経カップ　ならモレやムレを気にしなくて済む。

軽い運動をする

ストレッチや骨盤を動かすような軽い運動を一日合計30分ほど行うことで血流を促進し、月経痛を緩和する。激しい運動は体調を悪化させる恐れがあるので控えること。

吸水ショーツは有効か

吸水ショーツと月経カップを併用する人も多いし、ヨガやストレッチにはそれは最適なのだけれど、吸水ショーツを選ぶときは、製造元がわかる、できるだけ確かなものを。

以下にも触れたけれど、繊維を「吸収」用に加工するためには、必ず何らかの化学薬品が使われている。特に肌の敏感な人は、オーガニックコットン布ナプキン＋月経カップの方が無難だろう。

低容量ピルの服用

また、セルフケアでは痛みがどうにもならない場合、低用量のピルを処方してもらえることもある。月経困難症と診断されれば医療保険が適用されるのでお金の負担も少なく、低用量のピルであれば体への負担も少なくて済む。

IUS（ミレーナ）を使う

避妊だけでなく、過多月経や月経困難症の治療にも使用される「IUS」（ミレーナ）は、女性ホルモンである黄体ホルモンの放出機能のついた子宮内避妊器具。日本ではまだまだ認知度がが低いため、IUSのことをくわしく知らない人がほとんどだ。

IUSから放出される黄体ホルモンは子宮内膜の増殖を抑える働きがあるため、子宮内膜が厚くなりにくくなる。そのため生理の量が減り、生理痛を軽くする効果がある。

IUS（ミレーナ）を装着する費用はおよそ4万円前後です（産婦人科で装着してもらう）。月経困難症や過多月経の治療で装着する場合は、保険が適用され、3割負担となるため約1万2,000円になる。

確かに便利なデバイスではあるけれど、メインテナンスも必要。IUS（ミレーナ）の挿入位置が正しいかを確認するために、挿入後の1カ月後、3カ月後、6カ月後、1年後にはクリニックを訪れて、エコー検査をおこない、その後は毎年1回の定期検診を受ける必要がある。さらに取り出す費用は1～2万円ほどかかる。

IUS（ミレーナ）の副作用

IUSを入れて数日間は出血、下腹部痛、腰痛などの症状が続くことがある。装着して数カ月間は、不正出血（少量の出血）を何度か経験する人も。個人差があり1カ月ほどでおさまる人もいれば、半年くらいの間、何度か出血がある人もいる。

ごくまれに起こりうる副作用としては、骨盤腹膜炎、子宮外妊娠、子宮穿孔など。IUSを装着する際は、医師からの注意事項をきちんと確認すること。