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サンタクロース現る!?(フランス恋物語103)

3人から届いた”Merry Christmas”

12時25日金曜日の、0時過ぎ。

前日のイヴに智哉くんにフラれた私は、「少しでも気晴らしになれば」と、パソコンのメールボックスを開いた。

まず目に入ったのは、予想通り、私をずっと愛し続けてくれているミカエルからで、クリスマスメールが届いていた。

Joyeux Noël
れいこ、メリークリスマス!!
らいねんのクリスマスはいっしょにいようね。
キスをこめて。
ミカエル

彼の日本語のメールは、前は全部平仮名だったが、最近片仮名も加わりだして、その成長ぶりを感じた。

今回は日本語の文を間違ってないのも、褒めるべき点である。

・・・しかも、最後には自撮り写真も付いていた。

「ミカエル!!

あぁ、やっぱりかっこいい・・・。」

エドワードファーロング似の彼はとても美しく、ハリウッド俳優か海外で活躍するモデルのようで、相変わらず浮世離れ感がすごかった。

私は微笑ましい気持ちで、ミカエルに返事を書いた。


次に、届いていたのは、パリ留学時代の親友・美月ちゃんからだった。

美月ちゃんは、”椎名林檎似の和風美人なルックスを持ちながら、超肉食系女子”というギャップが面白い親友である。

メリクリ!! 玲子ちゃん、元気してる?
7月から付き合ってたマルクだけど、将来のことで色々ケンカして別れたよ。
私もワーホリ期間まだあったけど、帰国早めちゃおうと思います。
年末には帰る予定だけど、来年の正月明けに会えるかな?
しばらくは東京の実家でのんびり過ごします。
携帯番号とメールアドレス載せておくね。
美月

手帳を見てみると、来年1月7日(木)が仕事初めで、1月6日(水)はフィリップとエシャンジュ(日本語/仏語を教え合う会)の約束をしていた。

彼女と会うのは1月5日(水)が良さそうだ。

美月ちゃん、久しぶり!!
私は元気にしてるよ。
会うの、1月5日(水)はどうかな?
この日なら休みだし、一日中語ろうよ。
私の携帯番号とアドレスはこちらです。
玲子

美月ちゃんからは、「1月5日(水)OKだよ。」と返事が来て、私たちはこの日会うことが決まった。

Pére Noël

しかし、私を一番驚かせ、「うそ!!」と言わせたのは、懐かしいある男性からのメールだった。

玲子様
Buon natale!!
お久しぶりです。お元気ですか?
イタリア旅行で同行した北原です。覚えているかな?
イタリアはクリスマス休暇が長いので早めに帰国して、今横浜の実家に滞在しています。
玲子は確か東京に住むって言ってたよね?
12月25日か26日、東京のどこかで会えないかな?
僕の携帯とメールアドレスを載せておきます。
北原博之

北原さん・・・。

その名前を見ただけで、谷原章介似の、知的で優しそうな笑顔が脳裏に浮かぶ・・・。

また、ミラノで彼から名刺を貰った時、下の名前が博之(ひろゆき)ということを思い出した。

まぁ、私が”博之さん”と呼ぶことはないだろうけれど・・・。


北原さんは、10月にミラノのツアーで偶然知り合い、そこから3泊4日でフィレンツェベネチアを旅した仲だ。

キスをしてお互い惹かれ合ってはいたが、遠距離恋愛になることを避け、それ以上の関係には進まなかった。

連絡先を聞かれたから一応メールアドレスは教えていたが、まさか連絡が来て、「日本で会おう」と言われるとは・・・。

約束

今は失恋のショックからくる人恋しさがあり、さらに北原さんのことを思うと、自然と懐かしさと愛しさが溢れてくる・・・。

私は迷うことなく、彼の携帯のメールに返事を送った。

北原さん、お久しぶりです。
玲子です。元気にしてます。
メール読みました。
12月25日は休みを取っているので、1日空いています。
私も北原さんに会いたいです。
私の携帯番号も書いておきますね。
橘玲子

すると、メールを送った直後に、さっき登録したばかりの北原さんの携帯から電話がかかってきたではないか。

私はドキドキしながら通話ボタンを押した。

「もしもし・・・。」

「もしもし・・・玲子?」

その、優しくて懐かしい声に、私は涙が出そうになった。

「はい・・・。」

彼は、少し遠慮がちに聞いた。

「今、電話に出られるってことは、彼氏はいないってことでいいのかな?」

「そうです・・・。昨日フラれました。」

私は、「北原さんになら、肩肘張らずになんでも正直に話せる」と思った。

「ハハハ・・・。そうだったんだ。

僕も相変わらず独り身だよ。」

その言葉を聞いて、ホッとしている自分がいる。

「玲子、明日っていうか、もう今日になるけど、25日は一日中空いてるの?」

「そうなんです。慰めてください・・・。」

・・・うわ、”慰めてください”は、ちょっとエロかったかな?

久しぶりの会話だというのに、私はもう北原さんに甘えてしまっている。

「そうだな・・・。

じゃあ、僕は横浜から東京に向かうから、15時に品川の××××ホテル1Fのラウンジで待ち合わせでどうかな?

あのラウンジからはガラス越しに庭が見えて眺めがいいし、アフタヌーンティーセットが充実してるんだよね。」

・・・そのホテルのラウンジは女子に人気で前から気にはなっていたが、敷居が高そうで1度も行ったことはなかった。

北原さんと人気のラウンジでお茶ができたら、素敵なクリスマスになりそうだと期待が高まる。

「はい、是非行ってみたいです。よろしくお願いします。」

彼は、その後の予定についても提案した。

「じゃ、夜も空いてるなら、そのままそのホテル内のレストランでディナーも予約しておこうか?

割烹、寿司、天ぷら、鉄板焼き、中華、フレンチ・・・色々あるけど何がいい?」

どれも美味しそうだが、やはりクリスマスらしくヨーロッパっぽい雰囲気の食事がいい。

「クリスマスらしくフレンチかな?」

その言葉を聞くと、北原さんは思い出したように言った。

「そうだ、玲子はフランス帰りだったもんね。

じゃ、フレンチの一番いいコースで予約しておくね。」

私は、北原さんとオシャレなフレンチレストランで食事をするシーンを想像して、ワクワクした。

・・・もう、昨日の失恋のショックなんて、どこかに行ってしまったようだ。

「ディナーまでありがとうございます。

じゃあ、ドレスコード意識した服着ていきますね。」

そう言うと、最後に北原さんは嬉しい言葉を言ってくれた。

「玲子なら気にしなくても大丈夫だよ。

イタリアで会った時より、さらに綺麗になってそうだね。

会えるのを楽しみにしているよ。

じゃあ、おやすみ。」

「おやすみなさい。」


電話を切った後ベッドに入ると、私は北原さんのことを色々考えていた。

ここまで気持ちよくエスコートされると、やっぱり年上の慣れた男性はいいなと思う。

しかも、42歳でカッコよくてモテそうなのに、遊んでなくて誠実そうなのがいい。

私はつい、「北原さん、ミラノに住むのやめて東京か横浜に住んでくれないかな?」と考えてしまうのだった・・・。


12月25日の15時・・・私は北原さんと再会する。

私は好きだった人に会えることが嬉しくて、その後のことは何も考えていなかった。


しかし、彼はその後のことも見据えて、私を誘っていたのである・・・。


ーフランス恋物語104に続くー

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