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短編小説

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#備忘録からつくる小説

【短編小説】The Angle’s Apple

【短編小説】The Angle’s Apple

ママと、幼稚園と、真っ赤な林檎。
それがハルの好きなもので、ハルを取り巻く世界の全てだった。

ハルは精神科の勤務医である猪俣晴(イノマタ ハル)から取って名付けられた。ハルは毎日幼稚園から帰って来ると、自ら制服を器用に脱いで部屋着に着替える。柔らかい綿素材で作られたピンク色のセットアップに、母親がうさぎのアップリケを付けた。母親が買ってきた安い衣料販店の服は、すぐにハルのお気に入りとなった。着替

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【短編小説】バルコニーも付けてね

【短編小説】バルコニーも付けてね

「好いた男から愛されなくなったら、二人で家でも建てて仲良く死んでく?」

あはは、とマリーは笑った。マリーは本当は鞠恵(まりえ)というのだけれど、いつもMARIEというクッキーを食べているから、あたしは彼女をマリーと呼ぶ。

「建てるならいっそ庭付きね」

話に乗ってくれたマリーに、”そう、バルコニーも付けてね”と、あたしはそう言いたかった。バルコニーさえあればガーデニングやらバーベキューやらプー

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【短編小説】隣人

【短編小説】隣人

「突然の来客は迷惑ね。」

 私が学校帰りに友達を連れてきた日の夜に、母は決まってそう言った。それに、と一言嫌味を付け加えるのもお決まりだった。

「それに、あの子なかなか帰ろうとしないじゃない。」

「それに、食べこぼしが多いわ、片づけるのは私なんだから。」

「それに、靴も揃えなかったわね。」

 小さい頃の私は友達が多い方ではなかった。自分の家に招いた友達の数なんてたかが知れてい

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【短編小説】オールドファッション

【短編小説】オールドファッション

静かに眠る彼の二の腕が冷え切っていたので、私はそっと毛布をかけた。寒いと感じたら、彼が無意識のうちに毛布の中に潜っていくことを私は知っている。それでも私はそうせずにはいられない。

こういう些細な衝動は愛からくるのだろうか。だとしたら、愛は押しつけがましいものだ。

目が覚めた時には彼はもう起きていて、ケータイを見ながらコーヒーを飲んでいた。7時15分。アラームが鳴ったのは15分も前のことだったら

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【短編小説】ぬるいプリン

【短編小説】ぬるいプリン

落とした気分を拾ってもらって、冷めた身体を温めてもらって、私はどんどん彼にのめり込んでゆく。
この遣る瀬無い感覚にすら、恋は私を酔わせてゆく。

エレベーターの中は、いつも無言だ。

さっきコンビニで買ったプリンが入った袋が、微かに揺れている。その音が耳に障るくらいの静けさ。

だけど手を繋いでいるのだから、間を持たせる言葉は必要ないのだ。

部屋に入ると彼は、いつも通り先にお風呂を譲ってくれ

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