赤と青とエスキース 青山美智子
エピローグで涙が溢れた。読み終わった後に改めて表紙をじっくり眺め、本のタイトルを思わず口に出して読み上げてしまうくらい、素敵な本だった。
一度読み終わったら、そのまま読み返したくなる。
読み終わった後数日間この本のことを何度も思い出し、その度に本を開き、様々なことを考えた。登場人物たちの発言を読み返しているうちに、新しい気付きを与えられることもあった。
この本は、本当にたくさんのことを教えてくれる。
書き出した言葉もある。
ネタバレなしで本の内容を説明することが非常に困難なので、とりあえず「この本、すごく良かったから是非読んでほしい」と夫に渡した。
読み終わったら、誰かと、大切な人と、語り合いたくなる。そんな本であった。
エスキース=下絵
オーストラリアに留学している女性・レイが、恋人の友人であるジャック・ジャクソンという画家の絵のモデルをする話で始まる。しかし彼女は数日後には日本に帰らなくてはならない。時間がないならエスキースだけでいいから描かせて欲しい、とお願いされるのである。
エスキース=下絵、絵画の構図をとるデッサンのようなもの。この本を読んで初めて知った単語である。
これ以上何を話してもネタバレになりそうなので深く説明できないのだが、彼女をモデルにしたエスキースは話の中で何度も登場する。
このエスキースは意味そのまま「下絵」の状態なのか、それともエスキースという完成品なのだろうか。
人生のエスキース
この本を読んでいる最中、何度も自分のこれまでの人生と、これからの人生について考えた。
過去は全て下絵で、これから完成していくものなのだろうか。
だとしたら永遠に下絵で終わってしまうのではないだろうか。
それともやはりいつか完成の時期がやってくるというのだろうか。
ならば完成のその先はどうなってしまうのだろう、また下絵の期間が始まるのだろうか。
そんなことをぐるぐると考えていたのだが、第四章の途中である女性が語る彼女の人生観にものすごく救われ、一つの答えを提示されたような気がした。
もちろんその言葉だけが人生の答えではない。それは考え方の一つでしかない。
しかし、この先の人生で何か失敗した時のためにこの言葉を胸にしまっておけば、きっと自分を支えてくれるだろうと思った。
エピローグ
溢れてくる涙を拭くため、エピローグは途中で何度か手を止めながら読んだ。
登場人物たちの人生に自分を重ねたり、これからの自分について考えたり、まさかこんなに色々なことを考えることになるとは思わずに手にした本であった。
自分の人生も、別な切り取り方をすればこんなふうに見えるのだろうか。
私のエスキースは何色なのだろう。
読み終わったら、じっくり表紙を見つめることになると思う。
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