【1000本ノック】「わかる」とはどういうことか【2冊目】

筑摩書房で「ちくま1000本ノック」企画として紹介された本を、
図書館にある本限定で読んでみる。

2冊目はこちら。

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山鳥重 「わかる」とはどういうことか ─認識の脳科学

新書なのですぐ読めるかなと思ったのだが、
内容が面白いのと、理解を深めたくてメモを取りながら読み進めたので、少し時間がかかった。
より深く「わかり」たかったのだ。

著者が脳科学者で医師、ということで、専門用語が散りばめられた学術書のようなものを想像していたのだが、真逆であった。
専門用語は極力排除して説明したい、と序章で書かれている通り、専門的なことや難しい表現は一切ない。
広く一般的な人々が「わかる」ということを理解できるように意識されて書かれたのだと思う。

わかる、とは何に繋がっているのか

「わかる」がどういうことなのか、考えたこともなかった。

納得する、腑に落ちる、という表現に言い換えることはできても、結局それがどういう脳の働きを経ているのか、思考を巡らせたことはなかった。
幾度となく「わかった」という感覚を感じてきたが、それはどういうことなのか。

「あ、わかった」と思ったときに感じるのは、快感だ。

そう、「わかる」とは感覚で、感情なのだ。

人間の3大欲求(食欲、睡眠欲、性欲)がそれぞれ満たされる時、脳は快感を覚える。
生物が子孫を繁栄させていくために、生きていく上で必要なことを遺伝子に書き込んで「快感だ」と思わせることで行動に移させていることは山ほどある。
人間が文明を持ち、地球上あらゆるところで繁栄しているのは、この遺伝子レベルでの快感、本能が求める快感があるからこそなのだろう。
「わかる」が快感に通じているのも、遺伝子レベルでの刷り込みが影響しているのだと思う。

知らないことを調べる、解き明かされていない科学の謎を実験をしながら解き明かしていく、行ったことのない土地を開拓しに冒険する。
全て、わからないことをわかろうとする、という行為だ。
ニュートンも、ダーウィンも、アインシュタインも、コロンブスも、みんな「わかる」ために様々な手を尽くした。
失敗や、本筋から派生した先で見つけた「わかる」もあっただろう。
それら全てが、次の「わからない」をとらえるきっかけであり、「わかる」に通ずる門なのだ。
そして何も、科学者や冒険家に限ったことではなく、私たちは日常生活の中で様々な「わかる」を経験し、「わからない」を解決しているのである。

「わかる」が脳でどういうプロセスを辿っているのかは、是非この本を読んで確かめていただきたい。


読了した時、私は禅のことを考えた。
瞑想とは、脳の扉を開き切っていくことなのではないか?

白隠禅師の言葉、「われ大悟すること数回、小悟することその数を知らず」。
この言葉がいつか、自分にも「わかる」日が来ることを願う。


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