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#65 ビールとサウナと初月給と

ビールとサウナと初月給と……変なタイトルですが、深い意味があります。ヨーロッパでのビールをめぐる文化、8月末に一週間滞在したフィンランド、ヘルシンキでのサウナ体験、そして先日ドイツでの初月給が振り込まれました。


みなさんお祝いありがとう

先日、1年9ヶ月ぶりにお給料をもらった時、うれしくてつぶやき投稿をしました。多くのスキをいただくと同時に、「今夜何食べよう?」と書いたので、「頑張ったのだから、奮発して美味しいものを食べて!」とのメールももらいました。

いいワインかウイスキーを買おうかな、いや、クラフトジンかな、とも考えたのですが、結局はいつも行くお手軽価格のアジアレストランに行きました。それ以外に特別に「自分へごほうび」をあげて、はしゃぐ気にならなかったのです。
 ダルムシュタットにも素敵なレストランはあるし、フランクフルトへ出れば、8年前に行ってもう一度行きたいと思っていた素敵な日本料理店「無垢」もある。でもなぜか、足が向かなかったのです。


ヨーロッパでのビールの飲み方

ヨーロッパでビールといえば、まず頭に浮かぶのはドイツ、チェコ、ベルギーで、それぞれの国のビールは微妙に異なります。少し北へ行ってデンマーク、フィンランドのビールもまた違います(日本のクラフトビールに近いものはドイツにはあまりなく、北欧には多くある)。飲み方は共通していて、日本とは異なるのです。

日本語で「ビールを飲む」時の音や様子をオノマトペで表してくださいと言ったら、どんな答えが返ってくるでしょうか?僕はやはり「グビグビ」「ゴクゴク」ではないかと思います。この夏に広瀬すずさんが登場したビールのCMをどうぞ。

「週末のごほうび」……僕もこうやってビールを飲みたいのですが、これをやるとヨーロッパでは少し浮いてしまいます。ヨーロッパでは普段はビールを「ちびちび飲む」のです。ドイツというと大きなジョッキで大量にビールを飲むイメージがあると思いますが、「グビグビを数回」ではなく「ちびちびを何度も」やるので量が増えるだけです。みなさんとても地味な飲み方をします。


ヘルシンキ Löyly での気づき

ヘルシンキ滞在中に、2016年にオープンした新しいサウナ施設、Löyly(ロウリュ)へ行きました。施設の紹介は下の公式ウェブサイトと note 記事にお願いするとして、ここでは僕が感じたことを。

ここでは、バーカウンターで買ったビールやワインを片手にサウナに入れます。日本だとお酒を飲んだ状態でサウナや温泉に入るのは危険という認識が一般的だと思いますが、ここでは飲みながらサウナを楽しんでいる人が結構いました。そして、飲みすぎる人はいません(ここから、少しずつ今日の本題に近づいていきます)。

サウナといえば水風呂ですが、ここ Löyly の水風呂はなんとバルト海!海に向かってはしごで降りていくようになっており、海を水風呂代わりにして冷水浴をします。よく見ると、

飛び込まないでください。浅いので危険です!

の張り紙が。なるほど、浅いのか。じゃあ日本のサウナの水風呂と同じように冷水浴できるな……と思ってハシゴを降りていきます。たしかに足がつく深さでした。少し沖の方でぷかぷかしている人もいるので、「遠浅の海なんだな〜」と思いながら行ってみます。すると、

背が立たない!(一歩進むと、急に深くなる)

だったのです。つまりみなさん、立ち泳ぎをしながら冷水浴をしているのです。湖ではないのでそこそこ波も来ます。僕も「わーい、バルト海で冷水浴だ!」とはしゃいで泳ぎ回り、またハシゴを登って上がったのですが、その直後に思ったのは、

日本で同じことをやったら、確実に死者が出る。

ということでした。サウナに入って飲酒して、監視員もいないところで、背のたたない海で泳いで冷水浴……日本ではこれは危な過ぎてできない、と思いました。同時に、フィンランドでなぜこんな危険なことが普通にできているのか、その秘密に気づいた瞬間でもありました。


ストレスがなければ、発散する必要もない

それはおそらく、日本人が思っているような「ストレス発散」の必要性が、フィンランドでは低いからだと思います。ストレスが大きくなればなるほど、それと釣り合うように何か大きな気晴らしをしてバランスを取ろうとします。
 僕も日本にいる時は、乾杯後の一口でジョッキの半分を飲んでしまうようなビールの飲み方をしていました。そうやってストレス発散しないとどうしようもなかったのです。

おそらく Löyly と同じ施設を日本で作ると、みんなストレスを溜め込んでやってくるので、たくさんお酒を飲んでサウナに入り(そして定期的に人が倒れ)、酔って海に飛び込み(そして定期的に人が溺れ)、死者続出であっという間に施設は閉鎖になることでしょう。これはもちろん日本人一人一人が悪いわけではなく、そういう行動を生んでしまう高ストレス社会が原因なのだと思います。

*     *     *

騒がなかった初月給

幸福度が高いとされるフィンランドやデンマークを訪ねて、派手に「ハッピー」と騒ぐ感じがなくて「?」となり、「どういうところが世界で一番幸せな国なの?」と感じる人が一定数いるようです。
 高ストレスの仕事や人間関係と、それとバランスをとるような大きな発散行動を特徴とする日本と違って、北欧を含むヨーロッパでは感情や行動の「振れ幅」が比較的小さいのだと思います。仕事や生活のストレスレベルが低く、したがってそれを発散させるような派手な発散行動もしない、というのがヨーロッパの一つの特徴だと気づきました。

ドイツに来て約2ヶ月、初めてもらったお給料はとてもとても嬉しかったですが、それで高級なレストランへ行ったり高いウイスキーを買って飲んだりという「補償行為」はもう必要なくなりました。
 普段からストレスが低い環境で自分のやりたいことをやらせてもらえているので、もらったお給料ではいつもより 1.50€(約240円)高い「アヒルの天ぷら」が乗ったカレーのようなものを食べました。それに好きな銘柄 Pfungstädter のビールを飲めばもう十分です。

トッピングの種類を表すドイツ語はどうにか読めるようになった

どちらを選ぶかは各人次第

大きなストレスに耐え、大きく発散する文化(日本やアメリカはこちらだと思います)と、ストレスが少なく、派手な発散もしない文化(欧州全域がこちらで、北欧ではさらにその傾向が強いと思います)、みなさんならどちらを選びますか?

今日もお読みくださって、ありがとうございました🇫🇮🇩🇪🇯🇵
(2023年10月3日:東西ドイツ統一記念日)

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