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03_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

03_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

↓ 前話はこちらから

「それはあんたが悪いやろ!」

ばあちゃんは怒鳴った。そして、そこいら中の空気を吸い込むと、大きく大きくため息をついた。

僕は木下が悪いと言いたかった。
でも、ばあちゃんをバカにされたとは言えなくて、ぐっと口を噤んだ。木下が僕に言ったことを一言一句伝えられたら、もしかしたらばあちゃんも僕だけが悪いんじゃないと思ってくれるかもしれない。でも、僕にはそれが出来なかった。だって

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02_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

02_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

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事件は、今日の学校で起きた。
場所は校庭だった。

二学期の最後の日。終業式。その日は天気が良いと言うことで、校長先生の気まぐれで校庭で全校集会が行われた。
青い空、白い雲、明日から冬休み。さらにはもうすぐクリスマス。

通知表のことを頭の片隅に置いておけば、最高の日になるはずだった。
けれど、そう上手くはいかなかった。

青い空、白い雲、明日から冬休み。
そして目の前には、目

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01_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

01_金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

↓ プロローグはこちら

「ユースケ! あんたまた、学校で喧嘩したとね!」

家の鍵を開けて玄関に入るなり、ばあちゃんの大声が僕の耳に飛び込んできた。うるせぇと心の中で悪態をついて、僕は玄関先で舌打ちをする。

声の方角からすると、ばあちゃんは多分、台所にいる。絶対に顔を合わせたくない。めんどくさい。このまま部屋に入れば、なんとか顔を合わせなくて済むはずだ。逃げ切れる。いや、逃げ切る。クソうるさい

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金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

金髪の魔女は、今日もビールを飲んでいる。

まさか、あんな不思議なことが僕の身に起きるなんて。

その時僕は、ばあちゃんは本当に魔女かもしれない、と思った。それはクリスマスイブのことだった。サンタクロースは信じていない。でも、ばあちゃんが魔女だという可能性は信じられる。そんなこと有り得るのだろうか。ないかもしれないけど、あるかもしれない。

🌊

僕のばあちゃんは、いつも自分のことを魔女だと言った。綺麗な金髪のショートカットをなびかせ、耳

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鬼退治師たち

鬼退治師たち

私が愛犬ポッキーの散歩をしていた時のことだ。

時刻は朝7:30。最近は文字の打ちすぎで首と肩が凝っているなぁと、腕をブンブン回し、首もゴキゴキ回しながら散歩をしていた。

朝も早よからポッキーは大量にうんちをしている。よきかなよきかな、と私はうんち袋にうんちを入れた。うんちがほんのり温かい。ポッキーの内臓がしっかりとあたたまっている証拠だと、私は一人満足げな表情を浮かべる。

場所は川沿い。

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雲を編む

雲を編む

近所に「わたあめ屋さん」ができた。
名前もそのまんまの「わたあめ屋さん」。

私は別にわたあめに興味はないから、行こうとも思わなかったけど、中学校の同級生のみんなは、最近そのわたあめ屋さんの話をよくしている。

「何色食べた?」
「ピンク色がやばかった」
「幸せに味があるとすれば、多分ほんのりオレンジ色だと思う」

なんて詩的なことを言い出す子まで出る始末。

「サナ、まだ行ってないの? まじで絶

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プレジャー・ランドへようこそ_最終話

プレジャー・ランドへようこそ_最終話

↓ 第3話

14

「だいじょ〜ぶですか〜? ここ結構、落下する人がいるんですよね〜」
ノキアは横に立った声の主の顔を確認する。ノキアは入り口の時にいたピエロの女の子だと気づく。

「大丈夫です」
ノキアはカートに乗ったままピエロの女の子の質問に答える。ピエロの女の子が笑いながら手を差し述べた。ノキアは差し出された手を取る。
「ありがとうございます」

ノキアがお礼を言うと、ピエロの女の子はニ

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プレジャー・ランドへようこそ_第3話

プレジャー・ランドへようこそ_第3話

↓ 第2話

10

11月12日(日)朝7時

「ノキア、体調はどうなの?」
朝食を食べているノキアに恵美が尋ねた。

「今日はだいぶいい」
ノキアはぶっきらぼうに答える。通常運転の反抗期バージョンだ。

昨日、プレジャー・ランドのお菓子をもらう時には、割といい感じの娘を演じることができたと思うが、そう長くは続かない。やっぱり母親を前にすると、ノキアはイライラしてしまう。ただ心配して声をかけて

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プレジャー・ランドへようこそ_第2話

プレジャー・ランドへようこそ_第2話

↓ 第1話



11月11日(土)12時。

気分が悪い。悪夢を見たせいだ。
ノキアはテーブルについて、大きくため息をついた。

今日もノキアは部活に行く気にはならず、朝食を食べた後、再びベッドに転がってうたた寝をしてしまっていた。朝食を食べながら見ていたローカル番組のプレジャー・ランド特集のせいだろうか。夢の中のノキアは、行ったこともないプレジャー・ランド内にいた。

薄暗い遊園地の中にピノ

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プレジャー・ランドへようこそ_第1話

プレジャー・ランドへようこそ_第1話



プロローグ



「うたた寝でも悪夢かよ」
ノキアは小さく独りごちて、舌打ちをした。

同じような家が建ち並ぶ住宅街の中に、山中ノキアの家はある。中学二年生のノキアは、生理痛を理由に部活をサボって早めに家に帰ってきていた。時刻は夕方の6時半。腹痛はすでに回復していたものの、なんのやる気も起きず、ノキアは制服の白いシャツとジャケットそしてスラックスを着たまま、ベットの上に横たわっていた。窓から

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あの子になりたい

あの子になりたい

親友だとは、思っている。

だってあの子には、私以外に仲のいい友達なんかいないから。少し浮いているあの子は、不器用なほどにまっすぐで、そして素直だ。最近読んだ本に書いてあった言葉を使うなら、多分、愚直ってやつ。

愚かだと、思う。

でも私は、あの子になりたい。
だって、あの子の中にはちゃんとあの子がいる。小学校の時からあの子のことを知ってるけど、ずっと変わらないあの子がいる。

普通はさ、そうは

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白雪美香は彼氏ができない!_最終話

白雪美香は彼氏ができない!_最終話

↓ 第3話

15 白雪美香は気にしない!

チョコは眉間に皺を寄せ、顎に手を当てる。
「でもなぁ。ないと思うけどな」
そう口に出した後、自分を納得させるようにチョコは二、三度頷いた。

「ないかな~?」
ユキミは訝しげに宙を見た。視線を移す途中で、部屋の壁に貼っておいた山崎賢人のポスターと目があった。大きく黒目がちな目が、こちらとジッと見る。やば。やっぱりかっこいいわ、山崎賢人。ユキミがぼんや

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白雪美香は彼氏ができない!_第3話

白雪美香は彼氏ができない!_第3話

↓ 第2話

8 青ひげペローは一目惚れする!

9 白雪美香はダイエットを決意する! 

「なんか悔しい!」
ユキミはチョコの部屋で、足をチヨコに押さえてもらいながら腹筋の真っ最中だ。分厚い脂肪の下に隠れ切った腹筋は、仕事をするそぶりを微塵も見せない。ユキミの腹筋は、ユキミの腹を持ち上げる気力なく脂肪の布団の下で眠りについている。冬眠中の腹筋を叩き起こそうとユキミはなんとか体を持ち上げようとする

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白雪美香は彼氏ができない!_第2話

白雪美香は彼氏ができない!_第2話

↓ 第1話

4 白雪美香はイケメンが好き!

チョコはカバンにしまっていたスマートフォンを取り出すと、こんがりと日に焼けた指先で画面をタップした。慣れた手つきで青ひげペローのページを開く。チョコはペローにどハマりしているのか、フォローまでしているらしい。

「めっちゃウケる」
チョコがニヤニヤして言った。

「マジでこんな人おったら嫌なんやけど。これで会おうと思う人とかおるんかな」
ユキミは苦虫

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