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NOVEL

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#私の作品紹介

左側に違和感を感じる、その理由。

左側に違和感を感じる、その理由。

「そういやさ、最近、この辺りギシギシするんやけど」
鉄平が左のこめかみのあたりを撫でた。

「ギシギシってどういうことなん?」
左側の席に座る太一が眉間に皺を寄せ、聞き返す。

「どういうこと、って言われても。ほんとおかしいっちゃん。なんかさ、寝てても起きてても、ちょっと首を捻ろうもんなら、ギシって音がすんの」
そう言いながら鉄平は首を右に倒す。

ギシっ!!

隣の席に座る太一にも、鉄平の左のこ

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コイン・チョコレート・トス/150.9グラム

コイン・チョコレート・トス/150.9グラム

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🪙 150.9グラム

すっかり眠りこけてしまった。

一昨日が眠れなかったせいかもしれない。
夢も見ず、畳と布団と同化して眠った。
多分、微動だにしてないんじゃないかと思う。
寝返りだって打っていなさそうな気がする。

泥のように眠った。

昨日は特に何もしなかったのに、なんだか疲れてしまっていた。

天井のシミの声が私の声だったなんて。

とんだ一人相撲

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コイン・チョコレート・トス/57.6グラム

コイン・チョコレート・トス/57.6グラム

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🪙 57.6グラム

カタンと音がした。

私はチラリと新聞受けの方を見た。
もうどうでもよかった。

誤配だろうが当日の新聞だろうが、もうどうでもいい。

ザアザアと雨の音。
ドアに刺さった新聞の隙間から、雨の匂いが部屋に流れてくる。
雨はびたびたと壁や窓にぶつかっては、落ちていく。

それより頭が割れるように痛い。

昨日は帰り道にコンビニでウイスキーを買った

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コイン・チョコレート・トス/4.0グラム

コイン・チョコレート・トス/4.0グラム

前話未読の方は、↓から読んでやってください

🪙 4.0グラム

アラームの音。
遠慮気味の。

壁の薄いアパートで隣の部屋に聞こえないように、こっそりとアラームは鳴る。

4:20

今日は、手に届く距離にスマートフォンを置いた。
私は、すっと手を伸ばし、アラームを止めた。

なんでこんなに早起きをする必要があるのか。
それはもちろん、誤配新聞を確認するという任務のためだ。

今朝早起きをする

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コイン・チョコレート・トス/4.5グラム

コイン・チョコレート・トス/4.5グラム

前話からどうぞ

🪙 4.5グラム

眩しい。

ペラペラのカーテンから日の光が漏れている。
もう朝?

アラームにも気づかないくらい眠りこけてたみたいだ。
ここ一週間以上、感情の起伏が激し過ぎた。
疲れてても仕方ない。

ずりずりと畳の上をほふく前進して、充電コードを挿したままのスマートフォンを手に取った。

9:32

こんなに朝寝坊したのはいつぶりだろう。
悟は休日でも早起きをする。
私も

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コイン・チョコレート・トス/3.75グラム

コイン・チョコレート・トス/3.75グラム

前話を読んでない方は、1.0グラムからどうぞ。

🪙 3.75グラム

カタンと音がした。
新聞受けに新聞が落ちる音。

ブロロロロと新聞配達のバイクのエンジン音が遠くなる。
たぶん、明け方の四時半。
まだ外は暗い。

今朝も毛布がずり落ちているが、今日はそこまで気にはならなかった。

昨日めかし込んで出かけた先で買った電気ファンヒーターのおかげだ。
コスパとしてはよくないが、当座を凌ぐのにはち

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コイン・チョコレート・トス/1.0グラム

コイン・チョコレート・トス/1.0グラム

まえがきからどうぞ。

宙を舞うコインチョコ。
y=-3x²の放物線。

白い天井の少し下を最高到達点とし、コインチョコは私の手に落ちてきた。
私はそれを両手で優しくキャッチする。
手乗りインコみたいにちょこんと左手の手のひらに乗るコインチョコ。

私が見えないように右手で隠してしまっているから、本当のところ、手乗りインコみたいに乗っているかどうかはわからないけれど。

私はそおっと、手の中を確認

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神様のくれた、画用紙。

神様のくれた、画用紙。

僕は白い場所にいる。
暖かいも寒いもない。あまりに体温と気温が一体となっていて、僕は自分の輪郭がわからない。
溶け込むように僕は白い場所に立っている。

立ちすくむ僕に、神様が近寄ってきた。
そして、一枚の画用紙をくれた。
ここに夢を描きなさい。そして、夢を描いたら、私に持ってきなさい、と。

白い場所の一角に、カラフルな画材。
心が躍る。この色とりどりの場所に名前があるとすれば、可能性。
そんな

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