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散人の作物

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2022年6月の記事一覧

上野駅公園口 感傷録

上野駅公園口 感傷録

根津神社の方から緩やかな傾斜を下ると平坦な街道に出る。両サイドには今はもう懐かしくなった個人経営の小さな店が尚も元気よく営業を続けていた。いつも。それはいつもそうである。その街道を歩む時、束の間ではあるものの忘れてしまった本来の街の姿。それを垣間見る。
さらに進んでいくと視界は急に開けてくる。一面の池。そしてその向こうに小高い丘。そう不忍池と上野の山である。いつも人々の楽しげな声が聞こえる。子供の

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映画館小景

映画館小景

映画は映画館に行け。と偉そうにこの記事を始めようかとも思ったが当方もそこに足を通う回数がめっきり減ってしまった。これは自戒の念を込めて書き置く記事としよう。

何故、人は映画館に行くのであろうか。それはいうまでもなく映画を観に行く為だ。然しそれだけの為に映画館という空間に赴くわけでは決してない。好みのアーティストのライブに足を運ぶのが単に音楽を聴く為だけならばレコードで聞けば良い。恋慕ある相手と付

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ベンチよりの景

ベンチよりの景

長い事、散歩している。そこに目的なんぞはありはしない。そもそも目的がないから"散歩"なのだ。行く当てを決める事なくある時は自然の中を、又ある時は摩天楼をゆく。感動する景色にであることもあるのだが往々にして得られるのは自分の現在地に対しての嫌悪である。なぜ、私は歩かなくてはいけないのか?であるとか、私一体どこに居てどこに向かっているのか?などである。人生の羅針盤をとうの昔に売り飛ばした私はそう思うこ

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