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おとこらむ oto-column

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「音楽と鳥しんぶん」に連載されていたレコード研究家の音楽的日常のコラムが、noteマガジンでも登場!家人の夢の中で「あなたはレコードのマハラジャよ!」と美輪明宏さんに称賛された夏…
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#蓄音機の日

ニコライ・オルロフ〜ロシアピアニズムの継承者

ニコライ・オルロフ〜ロシアピアニズムの継承者

帝政ロシアに生まれたニコライ・オルロフ(1882-1964)は、モスクワ音楽院でピアノをコンスタンチン・イグムノフに、作曲と対位法をセルゲイ・タネーエフに学んだ。ピアニストとしてデビューを果たした1912年には、作曲者自身の指揮でグラズーノフ「ピアノ協奏曲」の初演も務め成功を収めている。ロシアの同世代ピアニストであるネイガウス、ゴリデンヴェイゼル等は祖国に残りソビエト・ピアニストたちを育てたが、オ

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ショパンの孫弟子による伝説のノクターン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤⑤

ラウル・フォン・コチャルスキ(1885-1948, ポーランド )
ショパン「夜想曲第2番変ホ長調 作品9-2 (ヴァリアント付)」(1938年録音)

● ショパンの高弟カロル・ミクリにショパン伝統の継承者として育てられたサラブレットであるコチャルスキによる伝説的なSPレコード。聴き慣れないヴァリアント(装飾音)は、ミクリがショパン自身の演奏を聴い
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巷に雨の降る如く〜ドビュッシーのピアノ

巷に雨の降る如く〜ドビュッシーのピアノ

ビュッシーのショパン演奏を聴いたことのある者たちは、ハンマーを意識させない程のビロード・タッチと、溢れ出る泉のようなその響きを生涯忘れることが無かったという。それもそのはず、ドビュッシーはショパンの弟子であったフレーヴィル夫人にピアノを習っている。ドビュッシーの才能が、この夫人からショパン演奏の秘密を多く吸収していた事は容易に想像されるのである。
確かにドビュッシーのショパン演奏なんて想像しただけ

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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④ フランシス・プランテ

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤④

フランシス・プランテ (1839-1934, フランス)
ショパン「練習曲 ハ長調 Op.10-7」(1928録音)
https://youtu.be/UOVs526XWJw

●ショパン自身のピアノ演奏を聴いたことがあるとされる唯一のピアニストによるショパンのレコード。この最晩年の演奏は、スイスの自宅までコロムビアが機材を運び込んだ甲斐もあり、愛用
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③ モーリッツ・ローゼンタール

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤③
モーリッツ・ローゼンタール(Moritz Rosenthal, 1862-1946, ポーランド)

●ショパンの弟子であるカロル・ミクリと、フランツ・リスト本人に学んだポーランド出身でアメリカで活躍した伝説のヴィルトゥオーゾ。若い頃はその超絶技巧的な演奏が過ぎて、評論家から苦言を呈されるほどでしたが、成熟するにつれて詩情溢れるショパン弾きとして、パハ
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤② ピアニストとしてのセルゲイ・ラフマニノフ

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤②
セルゲイ・ラフマニノフ(Sergei Rachmaninoff, 1873-1943, ロシア)�
●現在、ラフマニノフは大作曲家として親しまれていますが、当時は超絶技巧のピアニストとして高い評価を得ていました。
当時のラフマニノフ作品は、スクリャービンやストラヴィンスキー、プロコフィエフなどの同時代作曲家たちに比べて、チャイコフスキーなど全世代に連な
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19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤① ウラディミール・ド・パハマン

19世紀生まれのピアニストによる歴史的名盤①
ウラディミール・ド・パハマン(Vladimir de Pachmann, 1848-1933, ロシア)
●ショパン存命中に生まれたピアニスト、ピアノの魔術師パハマンによるショパン「小犬のワルツ」の決定的名演奏です。
これのレコード、なんとパハマンによる前口上から始まります。
「最初は書いてある通りに、段々ゆっくりと弾いて、次はパガニーニのようなスタッ
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数多くの大ピアニストを輩出したレシェティツキ派を歴史的なレコードで辿る、音のドキュメンタリー・シリーズ

100年以上前に空気を振動させた音が、21世紀の空気をまた振動させ僕たちの耳に音楽を届けてくれる。レコードというのは非常に不思議なタイムカプセルです。クラシック(古典的)音楽という名称がつけられていますが、作曲された当時では最新の音楽だったわけで、現代とは全く別次元のライフスタイルの人たちによる芸術や娯楽だったのです。実際その当時の演奏家たちはどのように音楽を受け止めて、どのように表現をしたのか、

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新発掘SP音源フリードマンの「告別のワルツ」を世界初復刻

「レシェティツキの弟子たち 第3集」(1880〜1882年生まれのピアニスト)● アルトゥール・シャタック(1881-1951)
バッハ:シチリアーノ(プライヴェート・アセテート録音)

● リヒャルト・ブーリッヒ(1880-1952)w/ウェズリー・キューンル
バッハ:コントラプンクトゥス第6番〜フーガの技法より
(プライヴェートSP録音)

● ミヒャエル・フォン・ツァドラ(1882-1946

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ニコライ・オルロフ ショパン名演集

01. バラード 第1番 ト短調 作品23
02. バラード 第4番 へ短調 作品52
03. 夜想曲 第5番 嬰へ長調 作品15-2
04. 夜想曲 第8番 変ニ長調 作品27-2
05~08. ピアノソナタ 第3番 ロ短調 作品58(全曲)
09. 幻想曲 へ短調 作品49
TOTAL TIME : 69’ 41”

【CD解説】ロシアに生まれたニコライ・オルロフは、モスクワ音楽院でピアノをコ

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伝説的な仏女流ピアニストによるフランスピアノ秘曲集の愉しみ

フランス女流ヴィルトゥオーゾであるエンマ・ボワネが、1934年から1940年にかけてニューヨークで行った米ビクター、米シルマーへのSP録音によるフランス音楽名演集。
師匠であるイシドール・フィリップのピアノ作品である「鬼火」「夜想曲」や、名指揮者としても高名なガブリエル・ピエルネの「ワルツ形式の夜想曲」などの知られざる小品をはじめ、19世紀末の退廃的ムードが漂うピアノ名曲をお楽しみいただけます。

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黄昏時のヨハン・シュトラウス

黄昏時のヨハン・シュトラウス

西陽が翳りはじめた蝉時雨の中、闘病中だった父と二人でAMラジオを聴いていた。弱い電波を拾うため銀色のアンテナを目一杯に伸ばしたポータブルラジオから、不意にヨハン・シュトラウスのウィンナ・ワルツが流れてきた。滑舌の良いパーソナリティが「エーリッヒ・クライバー指揮によるオーケストラ版のSPレコードです」と告げた。

「優雅でとっても気持ちのいい音楽だねえ。」と父。
少しボリュームを上げながら「へえ、オ

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