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Poem|まぎれもなく
厚切りの光が差し込む部屋
はちみつ色にとろける
ひらいた小説の見返しは
ざらざらした手触りの紅掛空色
いまある体だけで過ごす
いまある体だけで生きる
なんて貧相で
なんて贅沢な、
みずみずしい時間。
生きるのは上手じゃない
けれど
ひらいた掌の上でぬくもっている、
これは
まぎれもなくいのち。
まぎれもなく/佐藤 咲生
詩「風にゆれる空色」
買ったばかりの新しい
空色のブラジャーを
だれの視線も気にかけず
風に干す
わたしが流されて
わたしに辿り着く
どうでもいいことに
心悩ませるしあわせが
ここにあってもいい
心も体も思っているよりは
ひとまわりほどちいさい
風にゆれる空色。
わたしがほどけてゆく。