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空想日記

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あなたの知る私ではない『誰か』から届くメッセージ。日記のようで、どうやら公開して欲しいみたいだったのでここで。ちっぽけな世界のちっぽけな私のここから、私の元に届く誰かからの日記。… もっと読む
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2021年4月の記事一覧

君の星、僕の星座3

君の星、僕の星座3

3.裏切り 

よだかと出会ってからのノスリの毎日は、本当に楽しいものでした。
一日中、くだらない話をしたり、飛び回って遊んだり、お互いの好物をプレゼントしあってみたり、ノスリにとって本当にかけがえのない時間でした。
ある日の事、いつものように食事を探しよだかの元へ帰る途中、ノスリは恐ろしい声を聞いてしまいました。

『よだかのやつ、一体何に時間をかけているんだ?
気に食わねえあのノスリを捕まえて

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君の星、僕の星座4

君の星、僕の星座4

4.闇に溶ける 

悲しみに暮れたノスリは、野原を飛び回りました。
野を擦るようにではなくなるべくなるべく、高く飛びました。
口を固く閉じ、涙がながれるまま、恐ろしさに震えるままもう飛べなくなるまで、その涙が枯れるまで、ノスリは飛ぶのをやめませんでした。

『おーい!おおーーい!』
       
中々帰ってこないノスリを不思議に思い、よだかが探しに来た時には、ノスリの身体はもう、ボロボロでした。

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君の星、僕の星座5

君の星、僕の星座5

5.ざわめきの予感 

ノスリは、星も見えない真っ暗な夜空のような場所で目を覚ましました。
ノスリには、よだかの姿を見つけることはできませんでした。

『怖くて、かなしくて、ぼくは随分とひどいことを彼に言ってしまった。謝りたいのに、どこにもいない。ぼくにはこの真っ暗闇の中、あなたを探す術もないんだ!』

真っ暗闇の、そのなかで、しくしく、しくしく、ちいさなちいさなすすり泣きが、そっと響くのでありま

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君の星、僕の星座6

君の星、僕の星座6

6.カシオペア座のふもとまで  

『うわああ!!!!!』

叫び声が聞こえてきたのは、ノスリが向かった方向からでした。

『ノスリ!』

よだかは慌ててノスリの元へ向かいました。
そこには、倒したはずのタカが怒り狂ったままその最期の気力で、ノスリに襲いかかろうとしているところでした。

『やめろおおっ!』

よだかは慌てて飛んでいき、ノスリを背中にタカの前に立ちはだかりました。
駆けつけたよだか

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三日月と星の花束

三日月と星の花束

インディゴナイトの海原に浮かぶ淡い三日月。
空気の澄んだ寒い時期にしか見れない景色。

淡い三日月は涙を流す。
寒空の下、ひとりきりで涙を零す。
淡い三日月の流し涙は、三日月の雫になって海へ落ちる。

インディゴの海に溶けた雫は、長い年月を掛け積み重なって、深い海の底で結晶となる。

結晶は星の花、キラキラ光って輝いて、ただ静かに長い時を咲いている。
遥か遠くの海の上、そのまたさらに上の上、一人き

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幽閉の姫

幽閉の姫

『エルダーの月光塔には、お姫さまが閉じ込められてる。』

お城の離宮にある緑に囲まれた白い塔。
どんより不気味な、小さな塔。

そこに、お姫さまが閉じ込められてる。そんな噂がながれだした。
お姫さまは亡くなった先帝の隠し子だとか、卑しい身分の生まれだから隠されているんだとか、人々は勝手気ままにうわさした。
閉じ込められたお姫さまが本当にいるかもわからないまま、ただ面白おかしくうわさした。

エルダ

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月と、桜吹雪と。

月と、桜吹雪と。

日々の記録をはじめてから、結構な時間が過ぎた。
取り留めのない日々だけれど、それでも愛おしくて大切な時間だということを気づかせてくれる。

はじめた頃は秋だったのに、今はもう冬も終わり春も半ばである。
最近はしばらく忙しない日々が続いて、家に篭っていることが多かったのだけれど、諸々ひと段落がつきそうだし、春の穏やかな日差しが心地よいうちに、花見なんかにも出かけたいと思っている。

ふと、故郷の桜を

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みる、みる、みる。

みる、みる、みる。

天気は快晴、予定は真っさら。
まごうことなき休日だ。
だけど、休日だけど、特別な充実した一日にすべきだろうけど、もーうだめだ。

定期的に、あるいはしょちゅう
だめになる。

やる気が出ない、立ち上がれない、がんばれない、たのしめない。
まあそんな感じだ。

そんな日は大抵何をしてもうまくいかない。
お気に入りのマグカップを割ったり、出かけた先で大切なものを忘れて戻ってこなかったり。
そんなような

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入道雲と紙飛行機

入道雲と紙飛行機

コツン。

プールの後の静まり返った教室で、後頭部に違和感を覚えた。
なんだと思って振り向いたが、一番後ろの席だから誰かが何かしてくるはずもない。
ふと、下をみると紙飛行機が落ちていた。

あたりを見渡しても、こちらにニヤついた顔を向けてる奴は1人もいない。
けれど先程のコツンの正体はこの紙飛行機だろう。
どこからか来た紙飛行機、拾って折り目を広げてみる。

中にはなにかが書いてあって、読んでみる

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はらぺこかいじゅう

はらぺこかいじゅう

はらぺこかいじゅうはいつもはらぺこ
おなかをすかせてごはんをさがす

大きな木になる真っ赤なくだもの
がぶりむしゃむしゃ、ぱくぱくごくん
まだたべたりない!おなかぺこぺこ!

川をおよぐちいさなこざかな
がぶりむしゃむしゃ、ぱくぱくごくん
まだたべたりない!おなかぺこぺこ!

はらぺこかいじゅう、たべるたべる
目についたものぜーんぶ、たべつくす。

うしさんぱくり!もぐもぐごくん!
おやさいぱくり

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泡と思い出

最終電車に揺られながら、今日のことを振り返る。
ぼんやりと、ただ流れてゆく景色に身を任せて、ガタン、ゴトンと進んでゆく。

朝が早かったから眠たいな、とか。
明日も朝から予定があるや、とか。
寝ぼけた頭でぼんやり、じっくり思い出す。

世界が溶けてなくなるような、実感の湧かないふわふわとした心地なのは、さっきのんだビールのせい。
苦くて、しゅわしゅわ、お腹にたまる。

好きでもないのに背伸びして飲

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寂寥に染まる。

寂寥に染まる。

夕暮れの帰り道。
踏切の音と肉屋のコロッケの香りがなんとも言えない懐かしさを思い起こさせる。
今晩はカレーなんだろうか、通り過ぎた家から香ばしい香りが漂ってくる。
公園の前にたむろする子供達の笑い声、人の波を塗って進むアシスト付き自転車のベルの音。
茜色に染まった景色は、悠久か刹那か。
きっとどちらも正解でどちらも当てはまる。

帰り道、帰るあてなんて本当はなくて、ただ目的もなく歩いている。
帰ろ

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死神

死神

「残念ながら、あなたは死にました。」
黒い服を着た男は、にこやかにそう言い放った。

死神と名乗る男が死神という肩書きの書かれた名刺を持って来て死亡宣告をして来た日から今日で一週間。
驚くほどに何もない日々を送っている。
いつもと同じ時間に起きて、バイトへ向かって、仕事をこなす。
死んだと言われてはいそうですか。なんてなる訳もなく、本当に死んだのなら何かしら日常が変わってもいいはずなのにそれもなく

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センチメンタルミッドナイト

センチメンタルミッドナイト

煙草は嫌い。だって君を思い出すから。
君が吸ってた煙草の銘柄、未だに忘れられないでいる。
副流煙ごと飲み込んで、キスした夜が甦る。

赤い口紅、白い煙、夜景に溶ける後ろ姿。
またね、なんて。笑って嘘を吐いてみる。

暗闇に染まるベランダ、君が忘れてった煙草を咥えて、見よう見まねで火をつけてみる。

思わず咳き込む、なんてことないセンチメンタルミッドナイト。