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寂寥に染まる。

夕暮れの帰り道。
踏切の音と肉屋のコロッケの香りがなんとも言えない懐かしさを思い起こさせる。
今晩はカレーなんだろうか、通り過ぎた家から香ばしい香りが漂ってくる。
公園の前にたむろする子供達の笑い声、人の波を塗って進むアシスト付き自転車のベルの音。
茜色に染まった景色は、悠久か刹那か。
きっとどちらも正解でどちらも当てはまる。

帰り道、帰るあてなんて本当はなくて、ただ目的もなく歩いている。
帰ろう、帰らなければ。それだけが頭の中を占領している。

誘惑の匂い、夕飯の匂い。急かす音、遮る音。懐かしい景色、知らない街。

今日はどんな1日だったのであろうか、明日はもっと良い日になろうか。
手をつなぐ影が長く伸びて、頭の上に落ちてきた。

帰ろう。行くあてはないけれど。
進もう、手の温もりはないけれど。

茜さす帰路、寂寥に染まる。

遠い記憶を思い起こして、幸せに浸りながら今日が終わった。

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