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三日月と星の花束

インディゴナイトの海原に浮かぶ淡い三日月。
空気の澄んだ寒い時期にしか見れない景色。

淡い三日月は涙を流す。
寒空の下、ひとりきりで涙を零す。
淡い三日月の流し涙は、三日月の雫になって海へ落ちる。

インディゴの海に溶けた雫は、長い年月を掛け積み重なって、深い海の底で結晶となる。

結晶は星の花、キラキラ光って輝いて、ただ静かに長い時を咲いている。
遥か遠くの海の上、そのまたさらに上の上、一人きりの三日月を思って咲き乱れる。

孤独から生まれた三日月の雫は、海の底で優しさの花に生まれ変わる。
妖精が星の花を摘んで花束を作る。いのちの花束、星の花束。
星の花は妖精にささやく。
どうか私を三日月の元へ、寂しがりやでひとりぼっちの三日月の元へ連れて行ってと。

妖精は、快諾して上へあがるが、気まぐれで忘れっぽい妖精たちは、いつも三日月にたどり着く前に花束を持っていたことすら忘れてしまう。

だから三日月はまだひとりぼっち。
寂しくてたまらなくて今日も涙の雫をこぼす。
こぼした涙は深い深い海の底で、ゆっくりゆっくり結晶となる。

いつか真面目な妖精が、インディゴナイトの海の上、ひとりで光る三日月に、優しい星の花束を、連れてってくれると信じてる。


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