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はらぺこかいじゅう

はらぺこかいじゅうはいつもはらぺこ
おなかをすかせてごはんをさがす

大きな木になる真っ赤なくだもの
がぶりむしゃむしゃ、ぱくぱくごくん
まだたべたりない!おなかぺこぺこ!

川をおよぐちいさなこざかな
がぶりむしゃむしゃ、ぱくぱくごくん
まだたべたりない!おなかぺこぺこ!

はらぺこかいじゅう、たべるたべる
目についたものぜーんぶ、たべつくす。

うしさんぱくり!もぐもぐごくん!
おやさいぱくり!もぐもぐごくん!
おさかなぱくり!もぐもぐごくん!

どれもこれもおいしいけれど、はらぺこかいじゅういつまでたべてもおなかぺこぺこ。

おなかがすくとイライラする。
はらぺこかいじゅう、たべれるものはたべつくして、たべれないものはこわしはじめた。
あばれて、さけんで、たべつくす。

どうぶつも、木も、みんなみんなにげだした。

とうとう、はらぺこかいじゅうのまわりにはなんにもなくなってしまった。
あるのは、たべれやしないすなの山。
こわせもしない、すなの山。

あばれたせいで、おなかぺこぺこ。
からだもへとへと。
なにかたべるものをさがしたくてもうごけない。
ぐうぐう、きゅうきゅう、おなかの虫がわめいているけど、とってもとってもはらぺこだけど、もうまぶただってあけるのがおっくうだ。

『まあ!』

したのほうから、ちいさな声がきこえた。
おっくうなまぶたをむりやりにこじあけてみると、そこにはひとりのおんなのこ。
いいにおいのするおんなのこが立ってこちらをみあげていた。

はらぺこかいじゅう、あんまりまりにもおなかぺこぺこ。おおきなくちをガバッとあけて、いいにおいのするおんなのこを、ばくんとひとくち。まるのみにしようとおもった。

『もしかしてあなた、おなかすいてるの?』

声がきこえて、いったんとまる。
するとおんなのこはにこにこえがおで、うしろにもっていたバスケットをさしだした。

『わたしのおべんとう、わけてあげるわ!』

おんなのこからしたいいにおいのしょうたいは、おんなのこがもっていたバスケットからするものだった。

さっそく、バスケットごとのみこもうとしたら、近づけたはなさきをぴしゃりとたたかれた。

『だめよ!バスケットはたべものじゃないもの!ちゃんとすわって、おいのりをしてからたべるのよ!』

おんなのこはひざにかかえたバスケットにてをくんでおいのりをする。
はらぺこかいじゅうもしかたないのでおんなのこのまねをする。

バスケットのふたをあけると、それはそれはおいしそうな、けれどもちいさいサンドイッチがふたつぽっち。
はらぺこかいじゅうはちょっとがっかりした。
こんなもの、すぐになくなっちゃうじゃないか。
ふたつまとめてくちにほおりこもうとてをだすと、またぴしゃりとそのてをたたかれた。

『どうしてそんなによくばりなのよ!これはわたしのおべんとうなのよ?』

おんなのこはおこっていう。
おいのりまでしたのに、おんなのこをたべないであげたのに、はらぺこかいじゅうははらがたちました。

『だから、はんぶんこ。いっしょにたべましょう?』

けれど、やさしいおんなのこのかわいいえがおで、おんなのこを食べてしまおうなんて気はおさめたのでした。

シンプルな、ハムのサンドイッチ。
どうってことないサンドイッチ。
ちょっとしかないサンドイッチ。

おんなのことふたりでたべたサンドイッチ。

それは

いままで食べたどんなサンドイッチよりも美味しいのでした。

そのサンドイッチはけしてたくさんあったわけではなかったのに、ふしぎとかいじゅうのおなかはみたされました。

あんなにおなかがすいてたまらなかったのに、いまではもうすっかりはらの虫もいきをひそめているのです。


はらぺこかいじゅうは、その日からあばれることをやめました。
てあたりしだいにあるものをたべつくすのもやめました。

かわりに、おんなのこといっしょに、おいしいおべんとうをおしゃべりしながらたべるようになったのでした。

はらぺこかいじゅうはきょうもはらぺこ。
おんなのこといっしょにたべてたのしいものを、さがしまわってはちょっとだけとってどこかへむかう。

はらぺこかいじゅう、もうおなかいっぱい!



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