君の星、僕の星座4
4.闇に溶ける
悲しみに暮れたノスリは、野原を飛び回りました。
野を擦るようにではなくなるべくなるべく、高く飛びました。
口を固く閉じ、涙がながれるまま、恐ろしさに震えるままもう飛べなくなるまで、その涙が枯れるまで、ノスリは飛ぶのをやめませんでした。
『おーい!おおーーい!』
中々帰ってこないノスリを不思議に思い、よだかが探しに来た時には、ノスリの身体はもう、ボロボロでした。
『おい、一体どうしたというんだ?誰がおまえをこんな目にあわせたのだ、ぼろぼろじゃないか!』
『あなただよ』
『え?』
『ぼく、聞いてしまったんだ。
あのぼくをつついてまわる嫌で恐ろしいタカの独り言を聞かなければよかったなんて、そう思う頃には遅すぎるほどに全部聞いてしまったんだ』
『一体全体何の話をしているんだ?わかりやすく教えてくれよ!』
『あなたのその言葉は、何よりもぼくにとってはひどいことだよ。言って仕舞いたい、言って仕舞えばいくらか楽になれるのに。でもね、何を聞いたか言って仕舞えばそれが現実のことになるように思えて仕方ないんだ。だから、言えないよ。何を聞いたかなんて、そんなひどいこと、どうか聞かないでおくれよ』
『わかった、聞かないさ。聞かないよ。けれどきっとおれがしたことの結果がお前に降りかかっているのだな。おれはおれの命の恩人が震え上がって泣きはらし、ぼろぼろになるようなことをしたのだな』
よだかはもう疲れ果ててちっとも動けなくなったノスリを抱えて飛び、安全なところにそっと寝かせました。そして、疲れ果てて眠り込んだノスリにそっとよだかは話しかけました。
『なあ、ノスリ。おまえはおれの名を美しいといったな。じつはおれは自分の名前がちっとも好きじゃなかったんだ。あの業突く張りの乱暴なタカは、おれをいつもバカにして笑ったさおまえといとこだなんて虫唾が走るとね。おれを半殺しにして、命が惜しけりゃ生贄を差し出せとも言った。おれも最初は他の誰かを犠牲にして、自分が助かりゃそれでいいと思ってた。
思ってたところにおまえが来た。
チャンスだと思った。
おまえを騙して、後ろからその喉笛を引き裂いてやろうと、そうしてあいつのところに持って行ってしまおうと。でもおまえは言ったんだ。あの時確かに言ったんだ。
おれの名前が美しいと。
ずっと、ずっと嫌いだったんだこの名前が。
それが、たった一言おまえの言葉で救われたんだ。その時からおれは、おまえのことをずっと、大切な恩人だと思っているよ。おまえに別れをいうのが義理だろうが、どうにもその時間を貰うことは許されていないらしい。
さよならノスリ、楽しい時間をありがとうな。』
それからよだかは、静かに夜の闇へと消えるように何処かへ行ってしまいました。
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