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藍に紛れる

泣きたかったの、涙を流したかったの。
そうすると、すっきりするの、知ってたから。
でも、泣けずにいたの。

あなたは知ってか知らずか、そんなものポンと飛び越えて予想もしない角度からやってくるんだね。
深層心理の片隅から、現世に派遣された宣教師のよう。

泣ける気がした、熱い涙がこみ上げて、目頭も胸も熱くなって。
でも、会いたかったから、やめた。あなたに会うまでは、とっておこうと。
まだ大丈夫。
そのくらいの余裕はかろうじて持ち合わせていたみたいで。

なけなしの気力を使い果たして、夜空を仰ぐ。
透明な藍の空気は、心地よく響いて。許してくれそうで、いつまでも見つめていたくて、風邪を引いてしまう。

許されないことをした覚えなんてないのだけれども、月がそう言うのならばしかたない。
甘んじて、この身を任せよう。

投げやりでも、諦めでも、聖書の1ページでもない、
紛れもなく、そこに流れる普遍的な藍色の時間に。



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