入道雲と紙飛行機
コツン。
プールの後の静まり返った教室で、後頭部に違和感を覚えた。
なんだと思って振り向いたが、一番後ろの席だから誰かが何かしてくるはずもない。
ふと、下をみると紙飛行機が落ちていた。
あたりを見渡しても、こちらにニヤついた顔を向けてる奴は1人もいない。
けれど先程のコツンの正体はこの紙飛行機だろう。
どこからか来た紙飛行機、拾って折り目を広げてみる。
中にはなにかが書いてあって、読んでみるとそれは誰かの日記だった。
それは、寝台特急で宇宙に行く話。
光るくじらを見た話。
毒の海を眺めた話。
どれも突飛だ、ばかばかしい。
だけど、本当に楽しさが伝わってくるようで、ちょっと悔しかった。
まだまだ暑い夏の午後。
プールで冷えた体が生ぬるい風と合わせて汗を引かせる。
気怠げな身体と重たい瞼が眠気を誘ってくるが、なんとなく起きている。
教室の窓から見える入道雲があんまりにも真っ白で、嘘みたいだ。
宇宙旅行にいけるのならば、自分は何処に行きたいだろうか。
知らぬ世界を夢見ながら、バラした紙飛行機を折り目に合わせてもう一度組み立てなおす。
黒板と先生が向き合っている隙をみて、紙飛行機を風に乗せる。
紙飛行機はぴゅうっと静かに舞い上がって、窓の外へと飛んでいってしまった。
入道雲の白に吸い込まれるように、紙飛行機の白が消えていった。
授業が終わるまであと30分。
この眠気に抗うのをやめてしまおうか。
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