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けもパンファイトクラブ

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #54』

物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #54』

ガシーーーーン!

目の前でぶつかり合ったデストロイヤーの歯の音が、まだ耳の中にこだましている。
あの鋭い歯とバカみたいに強靭な顎で噛まれたら、我輩なんてひとたまりも無いな・・・。
とにかく奴の動きを分析しなきゃ。
事前情報が全く無いから、闘いながら。

まず、噛みつきには要注意。
一方、手は短くて小さいから、ここは大した武器にはならないだろう。
それ以外でいくと・・・
と、思ったその時!
我輩の

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #53』

負けた仲間を食っちまっただと⁈
ハム星さんから衝撃の報告を受けた瞬間、

カーン!

ゴングが鳴った。
やるしかない!
吾輩はコーナーからスッと前へ一歩を踏み出す。
気合を入れてデストロイヤーをキッと睨む。
と、奴が何か手に持っている。
凶器⁈

レフェリーも気付いた。

「デストロイヤー!凶器はダメ、捨てて!」

ニチャリと笑うデストロイヤー。

「凶器じゃねえよ、ヤスリだ」
「ヤスリ?それも凶

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #52』

「両選手、中央へ」

レフェリーから声が掛かる。
デストロイヤーがゆっくりとガウンを脱いだ。
深く被っていたフードの中から現れたのは・・・デ、デカい!頭!
しかも、悪そうな顔してる。
街で会ったら絶対に目を逸らしちゃいそうな。

でも、今日の吾輩は違う。
ジッとデストロイヤーを見つめる。

ゆっくりと奴もリング中央へ。
一歩一歩近づいて来る度にリングが揺れる。
頭もデカイが体もデカいな。
レフェリ

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #51』

物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #51』

リングへ上る階段は、三段。
一段一段噛み締めながら上る吾輩。
この階段は天国に向かっているのか、それとも、地獄に向かっているのか・・・。
ん?天国だとしても死んじゃうじゃん!

ぶるるる、いかん!
悪いイメージは禁物だ。
やり直し!

「おい、ピケ、なんで降りて来たんだ?」

ハム星さんが訝しげな顔で吾輩に聞く。

「いや、あの別に」

説明するのもなんなので、適当に言葉を濁す吾輩。

さて、もう

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #50』

「いやー、すまんだに。勝手に体が動いちゃっただに」

満身創痍のペケ丸を背負ってリングを降りながら、グレートかもはしがペケ丸に謝る。

「ありがとな」

ペケ丸がボソリと呟く。
吾輩はグレートからペケ丸を引き受けようと歩み寄る。

「ペケ丸、タオル投げそうになって。ん、おい、ペケ丸!!」

ペケ丸の意識が無い!
ハム星さんが駆け寄ってペケ丸の顔を覗き込む。

「おい、ペケ、ペケ!救護班、早く!」

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #49』

胸から血を流してリングに倒れ込んだペケ丸。
その目には闘志の炎が燃えているが、体のダメージが酷すぎる・・・。

スーパーフライの嘴が刺さった傷だけではなく、激しい闘いによって以前襲撃された時に負った傷口も開いて来ている。
そのせいで流れ出た自らの血に手を滑らせた結果、頭上に掲げたスーパーフライの嘴が自分の胸に刺さる結果に・・・。

そんな立ち上がれないペケ丸を、残忍な眼差しで見下ろすスーパーフライ

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #48』

高速かつ執拗なスーパーフライの嘴突き攻撃を交わしながら、耐え忍び、ついに嘴を両手でガッシリとつかまえたペケ丸。
そこから、スーパーフライのボディに鋭くかつ重量級のトゥーキックを連打連打で見舞い、しまいには嘴を握ったままのスープレックスを連発!

受け身の取れない状態で、何度も何度も背中からマットに叩き付けられたスーパーフライは、もうヨロヨロだ!
さあ、いけ!ペケ丸!
一気にフィニッシュだ!

そう

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #47』

スーパーフライの渾身の嘴突き!
その嘴を両手でガシッとペケ丸は掴んだ。

うむぐぐぐっっ

スーパフライが何か声を発しようとしているが、何を言っているのかはさっぱり分からない。

「ペケ丸、この瞬間を待っていただに、きっと」

グレートかもはしが感心したような声を漏らす。

え?どういうこと?

「いくら俊敏な動きが出来るペケ丸でも、傷の癒えていないあの体では、空中まで含めて自由に動き回るスーパー

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #46』

物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #46』

コーナーに追い詰められたペケ丸。
スーパーフライが両手でロープを掴み、円筒を作るように翼でペケ丸を包み込む。

この光景、どこかで観た記憶があるんだけど・・・。
そうだ、吾輩のご主人であるしずか嬢の父、今は亡き和夫さんがしずか嬢に隠れて観ていた深夜のバラエティ番組でやっていた“生着替え“だ。
円筒の中でアイドルが水着に着替えるのだが、制限時間が来るとその円筒が下がってしまう。
時間が迫って来て、マ

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #45』

物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #45』

カーーーーーーン!

第4戦のゴングが鳴った。
コーナーから、ジリっとペケ丸が一歩前へ出る。
普段のペケ丸ならゴングと同時に攻撃を仕掛けて、相手が何かをする暇も無く秒殺というパターンだけど、今回はそうはいかないようだ。
腹に巻かれた包帯。
襲われた時に負った体のダメージが心配だ。

マスクドスーパーフライも一歩前へ出て来た。
両手、いや、両翼を前で合わせて、まるでマントをまとっているかのようだ。

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #44』

ギーッギー

リング上の照明のフレームが揺れて軋んだ音を立てている。
逆さにぶら下がったプテラノドンの赤い目が不気味に光る。
選手の存在を確認したリングアナがひとつ咳払いをしてマイクを握り直す。

「改めまして、選手の紹介を致します。赤コーナー、哺乳類代表・ブラックキャット、ペケまーーーるーーーーー!」

ペケ丸がガウンを脱ぐ。
その右肩には大きなギプス。
お腹も包帯でぐるぐる巻きになっている。

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #43』

グレートの勝利に盛り上がる吾輩たち哺乳類チーム。
2連勝に会場のボルテージも上がって来ている。

第4戦は、ペケ丸だ。

短い腕をお互いの肩と思われるあたりにまわして、盛り上がっているグレートとハム星さん。
その向こうにペケ丸がガウンのポケットに両手を入れて、ジッと目を瞑って立っている。
この戦い、哺乳類にとっても一大事だけど、ペケ丸にとっては更に大きな意味がある。
伝説のチャンピオン・パンダー杉

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #42』

アーツに頭を掴まれて無理やり立たされるグレート。
リング上のグレートの顔を見る。
その目の炎は消えていない。
逆にメラメラとしている。
だが、度重なるキック攻撃を受け、もうフラフラで立っているのもやっとという状態なのは誰の目にも明らかだ・・・。

そんなグレートに向かって、アーツはトドメの一撃を加えようとしている。ヤツの後ろ足、巨大なカギ爪が鈍く光る。
あれが刺さったら、本当にトドメだ。

吾輩の

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物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #41』

物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #41』

コーナーの金具に受け身も取れないまま思いっきりぶつけられたグレートの体が、ズルズルとリングにずり落ちる。

「おいおい、一発で倒れられたら面白くないだろ」

アーツはそう言うと、むんずとグレートの頭を掴んでリングの中央に引きずり出した。
そのままグイッと腕を上げてグレートを立たせる。

「早く立てよ。ん、立ってたのか。短足過ぎて立っているのがわからなかったぜ、ひひひ」

グレートの目に怒りの炎が!

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