物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #54』
ガシーーーーン!
目の前でぶつかり合ったデストロイヤーの歯の音が、まだ耳の中にこだましている。
あの鋭い歯とバカみたいに強靭な顎で噛まれたら、我輩なんてひとたまりも無いな・・・。
とにかく奴の動きを分析しなきゃ。
事前情報が全く無いから、闘いながら。
まず、噛みつきには要注意。
一方、手は短くて小さいから、ここは大した武器にはならないだろう。
それ以外でいくと・・・
と、思ったその時!
我輩の右側から何かが⁈
ドバチーーーン!グゥワッ!
しまった、デストロイヤーの尻尾だ!
我輩の体がロープまで吹っ飛ぶ!
勢いついた我輩の体を受け止め、ロープが大きくしなる。
そのしなりを受けて、我輩の体がまた勢いよく飛ばされる!
と、再び目の前に、迫り来るものが!!
ドグワッ!ドボッッ!
デストロイヤーの極太の尻尾が再び我輩の腹にめり込む。
さっきよりも更に勢いがついて我輩の体が空を飛ぶ!
ロープを越えて客席に!
危ないーみんなどいてーーーーー!
ガシャガシャドシャーン!!!!
パイプ椅子の上に激しく落下。
イタタタタタ。
猫は高いところから落ちてもくるりと受け身を取れるものだが、こんな不意打ちだと無理だ。
きゃーーーーーー!!
観客たちの叫び声が聞こえる。
デストロイヤーがリングを降りて、太い尻尾で椅子を蹴散らしながらこっちに向かって来ている。
逃げ惑う観客たちの頭上をパイプ椅子が飛んでいく。
マズイ!倒れている場合じゃないぞ!
まずは起き上がらなければ。
イタタタッ!
胸から脇に激痛が走る。
アバラ、やられているなこれ。
しかし、ここで倒れていたらやられるだけだ。
逃げていても仕方ない。
攻撃は最大の防御なり、と言うではないか。
しかし、どんな攻撃をしたらいい?
わからんが、考える前に動け!とも言うな。
我輩は起き上がると、デストロイヤーに向かって猛然とダッシュ!
とにかく、あの極太尻尾に注意だ!
右方向からザザザザッパーンと波のようにパイプ椅子が迫ってくる。
我輩はジャンプしてその波の上を渡る。
その先にはやはりデストロイヤーの極太尻尾!
が、見える!
その動き。
さっきは不意打ちを喰らったが、分かっていれば見切ることは出来る!
我輩は尻尾の上にチョンと足を乗せると再び空中へ!
そして、勢いよく尻尾を振り回して、後ろ向きになったデストロイヤーの頭上に飛び降りた。
一瞬、デストロイヤーの動きが止まった。
そこを逃さず、我輩は体を大きく反らせると、上からデストロイヤーの鼻先に思いっきり猫パンチ!
人間界ではへなちょこパンチの代名詞となっているらしい“猫パンチ“だが、けもパンファイターの猫パンチは一味違うんだぜ!
グッゴウォーーーー!
デストロイヤーが叫びながら大きく頭を振る。
おっと!
振り落とされる前に我輩は飛び降りる。
痛い鼻を押さえたくても、その短い手では押さえられまい。
さて、次はどんな攻撃を・・・?
思い浮かばんが、我輩はリングに向かってダッシュした!
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