物語のタネ その七『けもパンファイトクラブ #50』

吾輩は猫である。
名前は、もうある。
ピケ丸、である。
動物達の格闘技リーグ“けもパンファイトクラブ“ファイター
vs
恐竜たちの亡霊“ゴーストザウルス“。
地球生存権をかけた“哺乳類vs恐竜“の5vs5のサバイバルマッチ。
第1戦はゴーストザウルス側に、第2戦はけもパンファイター側に。
第3戦は、カモノハシのグレートかもはしがユタラプトルのジャッキー・アーツに勝利!
これで哺乳類チームの2勝1敗に。
第4戦、ペケ丸はプテラノドンのマスクドスーパーフライに反則負け・・・

あらすじ

「いやー、すまんだに。勝手に体が動いちゃっただに」

満身創痍のペケ丸を背負ってリングを降りながら、グレートかもはしがペケ丸に謝る。

「ありがとな」

ペケ丸がボソリと呟く。
吾輩はグレートからペケ丸を引き受けようと歩み寄る。

「ペケ丸、タオル投げそうになって。ん、おい、ペケ丸!!」

ペケ丸の意識が無い!
ハム星さんが駆け寄ってペケ丸の顔を覗き込む。

「おい、ペケ、ペケ!救護班、早く!」

担架を持った救護班が駆けつける。
ぐったりとしたペケ丸を担架に乗せる。
一刻も早く病院に!
その時、意識が無かったペケ丸が、突如吾輩の手首を掴んだ。

「ちょっと待って!」

吾輩は救護班に向かって叫ぶ。

「ペケ丸!気付いたのか!ペケ丸」

担架の上のペケ丸は荒い息の中、何かを言おうとしている。

「ペケ丸、どうした?なんだ?」

吾輩は顔をペケ丸の口元にぐっと近づける。

「・・・か、・・・か・・・」
「ん、か?か、がどうした?」

ペケ丸の口元に耳を寄せる。

「・・・か、勝たなかったら・・・こ、殺すぞ」

そう言うとペケ丸はまた意識を失った。

「まずい、早く運べ!」

救護班が叫ぶ。
慌ただしくペケ丸を運んで会場を出ていく救護班。
その後ろ姿を見つめる、吾輩、グレート、ハム星さん。

「ペケ丸、なんて言ってただに?」
「勝たなかったら、殺すって」
「あいつらしいな」

ハム星さんがフッと鼻で笑いながら言う。

「ですね」

吾輩もなぜか笑みが。
何なんだろう、この感覚。
体の中にマグマのようなものが湧いて来るようだ。
闘志?
いや、ただそれだけじゃない・・・。

「けもパンファイトクラブ」新人王トーナメント決勝戦。
ペケ丸と対戦したあの試合の前も闘志はメラメラと燃えていた。
でも、それとも違う何かがある。

仲間

今の吾輩には仲間がいる。
ウルフ、ドリル、グレート、そしてペケ丸。
ライバルだった奴らが集まってチームを組んで、この闘いを通して仲間になった。
今の吾輩は、そんな彼らの思いを背負っている。
すごいプレッシャーだ。
でも、すごいパワーだ。
彼らとの絆がとめどなくエネルギーとなって湧いて来る。

そして、吾輩のご主人、しずか嬢。
少ないお小遣いの中から買ってくれた「KISSキティ」のタオル。
勝利の汗をこのタオルで拭えるように、吾輩、頑張りますよ。

吾輩の視線はリングに、そしてその耳に会場の興奮が再び入って来た。

「哺乳類vsゴーストザウルスー!ファイナルバトルを開始します!!」

リングアナウンサーの叫び声が響く。
それに応えるように会場中の熱気が一段と高まる。

「じゃあ、行ってきます」
「おう、しっかりな」

ハム星さんが吾輩の背中にそっと手を当てる。

「頼んだぞ」
「はい」

吾輩はリングに登る階段に足をかけた。



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