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詩集C(30代以降の作品群)

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社会派ミステリー小説、PHASEシリーズの著者 悠冴紀が、30代から現在にかけて書いた最新の詩作品を、このマガジン内で無料公開していきます。 なお、作品の下に、一見解説文のよ…
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2019年9月の記事一覧

詩『天狼~ハティ』

詩『天狼~ハティ』

作:悠冴紀

ユグドラシルの根に湧くミーミルの泉に
ゆらりと蒼白い月明かりが浮かぶ

君は私の月だった
君の言葉と視線は
私を映し出す水鏡

誰もに見放され厭われていた私とは違い
君は輝かしい前途を期待された才ある者

何故こんな私が残り
君のような人が去らねばならなかったのか……

かつて私は
君を目指して走っていた
君の背中だけを一心に見つめ
君の賞賛を何よりもの励みとし
いつまでも追いかけて

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詩 『真 実』

詩 『真 実』

作:悠冴紀

真実とは
ただそこにあるもの
誰も守りはしないし
誰の味方もしない

そう
先人たちの言葉通り
真実とは残酷なもの

だが知りたくなかったとは思わない
それらは明日の礎になる
いつでも私に知恵をくれた

人間の判断を狂わせるのは
期待通りの優しい嘘

想定外の残酷な真実は
人を突き放しつつも 成長させる

向き合えない者はデタラメに堕ち
いつの日か
手にした全てがニセモノだと知るだろ

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詩『時計を止めて……』

詩『時計を止めて……』

作:悠冴紀

音もなく降りしきる霧雨に 大気が霞み
近くにあるものさえ 遠く感じる
世界があなたを 失ったからだろうか

あなたを想う人の数だけ
止まってしまった時計がある

あなたが旅立ったあとも
時間は無慈悲に流れ続け
何事もなかったかのように
多くの人々を押し流していく

けれど あなたを愛した人たちは
彼等の中の時間を止める
あなたをこれからも想い続けるため
その余韻を少しでも長く続かせる

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