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介護の学び#13【食は人を魅了する】

介護業界での20年近くの経験をもとに、学んだことについて投稿していきたいと思います。

今回のテーマは【食は人を魅了する】です。

食事は人間の楽しみであり、一瞬で人を笑顔に変えることのできる魔法のような力を持っています。

食事が人生の楽しみであるという人は多いのではないでしょうか。

食事は命を維持するための燃料として摂るんだよ…
栄養バランスが整っていて充分な量が食べられればそれでいい

というような思いを持っているという方は恐らくいないのではないでしょうか(もしおられたとしても、ごく少数ではないかと思います…)

大半の方にとって、食事は人生の楽しみの一つですよね。

介護の仕事をしていても人にとって食事は人生の大事な楽しみであるということを改めて感じることがあります。

例えば…

介護サービスの中の大半の事業所で、季節や年間行事に合わせて普段とは異なる料理を準備しています。

栄養士の方や調理担当の方々が様々な面で工夫を凝らし、大変な業務をこなしながら準備してくださるのですが、その時の利用者様の喜んでいる顔、思い出に浸りながら他の方と談笑しながら食べている光景は本当に素晴らしいものです。

いつもは不安が強くて落ち着かれない方が食事の時には不安がなくなったかのように穏やかに食べられたり、いつもは無口の方が「懐かしい…おいしいわ」と言って隣の食事席の方に声を掛けられたり…

認知症があってほとんど自ら話をされなかった方が、昔自分が好きだった料理が目の前に出てきて、思い出をぽつりぽつりと話されながら食べられたということもありました。

また、いつもは全く食事に興味を示さない方が、好物であった食べ物をご家族が持参された時には笑顔で食べられる、なんてこともありました。

人にとって食事とはなにか…

改めてになりますが、人にとっての食事とはどんなものなのかをご存じでしょうか。

厚生労働省のHP、健康日本21(栄養・食生活 )には、以下のような文章が掲載されています。

1.はじめに
栄養・食生活は、生命を維持し、子どもたちが健やかに成長し、また人々が健康で幸福な生活を送るために欠くことのできない営みである。

身体的な健康という点からは、栄養状態を適正に保つために必要な栄養素等を摂取することが求められ、その一方で食生活は社会的、文化的な営みであり、人々の生活の質(QOL)との関わりも深い。

引用 厚生労働省HP:健康日本21(栄養・食生活 )


・生命維持
・健やかな成長
・健康と幸福
・社会的、文化的営み
・生活の質向上

食事は人が生きるうえで欠かすことのできないものだということが書かれています。

”食物に対する愛より誠実な愛はない”

ジョージ・バーナード・ショー

このように、様々な面から見て食事は私たちの人生に大きな影響を与えるものなんです。

介護現場で学んだ【食は人を魅了する】


介護の仕事をはじめて、改めて「食べるって人にとってどんなことなんだろう」と考えた時がありました。

施設で長期の生活をする利用者様との出来事です。

その方は認知症の診断を受けており、体調は悪くないのですが自分自身で積極的に活動する意欲が低下している方でした。

歩くことは可能なのですが、職員が声を掛けたときに応じられる程度で自発的に動かれることはほとんどなく、表情の変化もあまりない方です。

言葉に関しても、全く話が出来ないということではないのですが、稀に一言お話しされる程度でほとんど自発的に話されることはありません。

こちらが提案させていただいたことに対して「はい」とゆっくりと答えてはいただけるのですが、会話は続かず静かに動かれるといった具合です。

担当していた職員はその利用者様の笑顔をなんとか引き出せないかと考えており、他の職員たちと相談したりなどケアの内容を検討していました。

関係性の近い家族様は既に他界されており、施設を利用される前の情報等を引き出すことが出来ない状態であったため、その方の笑顔を引き出すために職員たちは試行錯誤を繰り返すしかありませんでした。

音楽、運動、散歩、他者との交流、絵、写真、映画…多くのことを試みましたが、ほとんど興味がなかったようで、退屈な時やもう取り組みたくない時には「疲れた…」とうつむかれていました。

ある日外に散歩に出かけた時のことです。

外の散歩は道が整備されていない場所もあるため、車椅子を使用していました。

いつものように散歩をしていると赤い花を見つけました。

利用者様は急に眼を大きくして「かわいいね」と少し笑いながら、車椅子から前のめりになって花を摘もうとされました。

急に動作されたことにも驚きましたが、利用者様が自発的に笑顔で話をしてくださったことも嬉しく、身体を支えながらそのまま花を摘んでいただきました。

やっぱり外の空気に触れたり、自然に触れるといいんだなと思いながら「きれいですね」と声を掛け、利用者様を見ていると…

花を眺められるのかと思いきや、その花を食べようと口を大きく開けて口に運びこもうとされたのです。

「○○さん、これは可愛い花だから食べるより眺める方が良いかもしれません。お腹がすきましたか?」と尋ねると「これはイチゴでしょ?」

散歩から帰り、売店でイチゴを購入しその利用者様にお渡ししました。

今度は邪魔されることなく、笑顔でイチゴを食べながら話してくださいました。

お話し自体は様々な言葉が並んで繰り返されたりなどであったため、言葉を汲み取ることはできませんでしたが、その方の笑顔といつもはあまり動かれない方が夢中になってイチゴを食べるその姿を見て、思いはしっかりと感じ取れました。

……

私はその時、食事はただのエネルギー補給や生命維持活動ではなく、一瞬で人を笑顔にしたり心や身体を動かす原動力にもなる魔法のようなものだということを学びました。

【食は人を魅了する】そのことを考えて食事の支援をしている介護職はどの程度いるのか…人の大切な喜びの一つに食事があります。

最後までご覧いただきありがとうございました。

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